心理的フレイルの頻度は3.5%で要介護のリスク因子

国内の地域在住高齢者における心理的フレイルの頻度は3.5%であり、身体的フレイル以上に要介護状態になるリスクが高いことがわかった。国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センターの島田裕之氏らの研究によるもので、「Journal of Clinical Medicine」に9月27日オンライン掲載された。
フレイルは、加齢に伴いストレス耐性が低下した状態をさし、身体的フレイルと心理的フレイルに大別される。身体的フレイルは要介護状態の予備群であるとするエビデンスが豊富だが、心理的フレイルの予後についてはこれまで詳しくわかっていなかった。島田氏らは、国立長寿医療研究センターの大規模コホート研究(NCGG-SGS)の登録者を対象として、心理的フレイルの影響を検討した。

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愛知県大府市の65歳以上の住民から5,104人を募集し、脳卒中や認知症、うつ病などの既往がある人を除外して、平均49.2±9.4カ月追跡した。データの欠落があった人を除いて最終的に4,126人(平均年齢71.7±5.3歳、男性49.2%)を解析対象とした。歩行速度や握力・身体活動の低下、体重減少、疲労感によって身体的フレイルを判定すると、全体の6.9%が該当した。また、抑うつを評価する質問票によるテストの結果、全体の20.3%に気分の落ち込みが見られた。
身体的フレイルに該当し、かつ気分の落ち込みが認められた人を心理的フレイルと定義すると、3.5%が該当した。これを性別に見ると、身体的フレイルは男性より女性で多いのに対し(P<0.05)、気分の落ち込みや心理的フレイルについては性差がなかった。また年齢層別に見ると、身体的フレイル、気分の落ち込み、心理的フレイルのいずれも、加齢とともに頻度が増えることがわかった。
追跡期間中に全体の385人(9.3%)が要介護認定を受けていた。年齢や性別、喫煙習慣、独居、転倒歴、糖尿病、高血圧など、要介護のリスク因子で調整した後、フレイルでなく気分の落ち込みもない人を基準として、要介護認定を受けるリスクを比較すると、気分の落ち込みを伴わない身体的フレイルはハザード比1.69(P=0.006)、フレイルでなく気分の落ち込みのある人は1.05(P=0.734)、心理的フレイルでは2.24(P<0.001)となった。これにより、身体的フレイルと心理的フレイルはともに要介護の有意なリスク因子であることが示された。一方、気分の落ち込みだけの場合は要介護の有意なリスクでなかった。
このほか、対象者に生活習慣や社会・生産活動への参加状況をアンケートで調査し、心理的フレイルとの関連を検討した結果、カルチャーレッスンを受講していないこと、野外作業やガーデニングをしていないことが、心理的フレイルのリスクと有意に関連することがわかった。この検討は断面調査であるため因果関係の証明にはならないが、心理的フレイルの予防法を検討する際に有用な情報となり得る。
以上一連の結果から島田氏らは、「心理的フレイルは要介護状態の発生と関連する。従って、高齢者の障害を予防するための施策推進に際して、心理的フレイルを医学的な指標として使用可能であることが実証された」とまとめている。

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