糖尿病診療の質を評価、網膜症と腎症の検査実施に課題 大規模レセプトデータを分析

大規模レセプトデータの分析から、近年、定期的に医療機関を受診している糖尿病患者において、HbA1c検査や血中脂質検査を年1回以上受け、併存する高血圧や脂質異常症の治療を受けている患者の割合は高いことが、国立国際医療研究センター研究所糖尿病情報センター室長の杉山雄大氏と東京大学大学院公衆衛生学の田中宏和氏らの共同研究で明らかになった。一方、糖尿病網膜症検査(眼底検査)や尿アルブミン検査の実施率は依然として低く、課題があることも浮き彫りになった。詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」3月号に掲載された。

 糖尿病の合併症を予防するには、早期発見、早期治療が肝要となる。そのためには、「行うべき治療や検査を実施する」診療のプロセスを改善することが必要となる。杉山氏らは今回、大規模なレセプト(診療報酬請求明細書)データベースを用いて、こうしたプロセスを評価した糖尿病診療の質の推移を分析した。

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 研究では、複数の健康保険組合から成るレセプトデータベースを用いて、2006年4月~2016年3月の加入者約370万人のうち、2006、2008、2010、2012、2014年度に、医療機関を3カ月に1回以上受診し、かつ糖尿病治療薬を処方されていた約4万6,000人のデータを抽出。それぞれ翌年度に、日本糖尿病学会が発行する「糖尿病治療ガイド」などで推奨されている検査や処方薬を受けている患者の割合を算出し、2007年度から2015年度にかけて推移を調べた。なお、入院した患者や定期的に受診しなかった患者は解析から除外した。

 その結果、3カ月に1回以上受診し、糖尿病治療薬の処方を受けていた患者では、翌年度に約95%がHbA1c検査を、約85%は血中脂質検査を1回以上受けていたことが分かった。また、高血圧、脂質異常症を併存した患者がそれぞれ「ACE阻害薬あるいはARBの処方」、「スタチンの処方」を受けている割合には上昇傾向が見られた。

 一方で、眼底検査を年1回以上受けている患者の割合は全体で40%程度にとどまり、実施率には上昇は見られなかった(2007年度42.0%、2011年度38.5%、2015年度38.7%)。また、尿中アルブミン検査の実施率(200床未満の施設に限る)は2007年度の14.0%から2011年度には21.5%と上昇傾向が見られたものの、2015年度でも24.2%にとどまっていた。

 さらに、年齢や性など関連する要因を統計学的に調整した分析の結果、インスリンを処方されている患者は、経口血糖降下薬だけを処方されている患者に比べて、適切な検査や薬剤を処方される割合が高かった。また、200床以上の中規模以上の病院や小規模病院で糖尿病治療薬の処方を受けている患者では、診療所の患者よりもこの割合が高いことも分かった。

 これらの結果を踏まえ、杉山氏らは「糖尿病診療の質を向上させるため、関連学会が推奨する適切な検査や薬剤処方をさらに普及させることが望まれる。今後は、地域や医療施設の特性による糖尿病診療の質の差などを分析しながら、診療の実態を把握し、質の向上を目指した研究を進めていきたい」と述べている。

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糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2019年4月1日
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