ラジオ体操で筋肉量が維持される――糖尿病患者で実証

 高強度の筋力トレーニングではなく、ラジオ体操でも糖尿病患者の筋肉量維持に有効とする報告が「BMJ Open Diabetes Research & Care」2月24日オンライン版に掲載された。2週間の入院中にラジオ体操をしなかった人は除脂肪体重(筋肉や骨の量を表す指標)が低下したのに対し、1日2回ラジオ体操をした人は除脂肪体重が減らず、上肢や体幹の筋肉量の増加傾向も認められたという。

 京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学の岡村拓郎氏、橋本善隆氏らの研究グループは、同大学附属病院の糖尿病教育入院患者42人のうち15人に対し、朝食前と夕食後の1日2回、ベッドサイドでのラジオ体操を指示。入院中(14日間)の体重と体組成の変化を後ろ向きに検討した。

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 ラジオ体操をした群(15人)としなかった群(27人)で、入院時点の年齢(62.9±14.5対65.8±12.6歳)やBMI(26.4±7.9対24.6±4.8 kg/m2)、除脂肪体重(25.2±6.8対23.3±5.3kg)に有意差はなく、その他、男女比やHbA1c、eGFR、糖尿病罹病期間、骨格筋量指数(SMI)、飲酒・喫煙・運動習慣、インスリン治療患者の割合なども含め主な患者背景に差はなかった。

 ラジオ体操には第1と第2があるが、本検討では筋力強化に向いている第2を用いた。ラジオ体操の所要時間は1回3分で、それ以外に入院患者全員に1日60分の有酸素運動(主に速歩)を指導した。食事に関しては、病院から提供する食事のみとし、間食やサプリメントの摂取を禁止した。

 結果について、まず入院中の体重の変化を見ると、ラジオ体操をした群としなかった群の両群とも、有意に減少していた。しかし除脂肪体重とSMIは、ラジオ体操をした群では有意な変化がなかったのに対し、ラジオ体操をしなかった群では有意に減少し、SMIに関してはその変化量に群間の有意差が認められた(-0.01±0.09対-0.27±0.06 kg/m2、P=0.016)。またラジオ体操をした群でSMIが低下したのは46.7%だったが、ラジオ体操をしなかった群では85.2%に上った。

 さらに上肢や体幹の筋肉量はラジオ体操をしなかった群では有意に減少したのに対し、ラジオ体操をした群では有意でないながら増加傾向が見られ、入院前後の変化量で比較すると有意な群間差が認められた。下肢の筋肉量は、ラジオ体操をしなかった群では有意に減少し、ラジオ体操をした群でも減少傾向が見られたが変化量は有意でなかった。

 ラジオ体操に起因する低血糖、転倒、筋肉痛などの有害事象は見られなかった。早朝空腹時血糖値の改善幅は37.0±69.6対31.3±52.2mg/dLで、有意差がなかった(P=0.784)。血糖改善効果に差が生じなかった理由について著者らは、教育入院中の血糖値は薬物介入に大きく左右されること、およびラジオ体操第2は主としてレジスタンス運動であることによる可能性を考察している。

 これらの結果を踏まえ研究グループの木村智紀氏、福井道明氏らは「2週間の教育入院中に糖尿病患者の筋肉量が減少することが改めて示された。これに対し、年齢に関係なく容易に行える運動介入が必要であり、ラジオ体操がその有効な手段となり得る」と述べた上で、「因果関係解明のためランダム化比較試験など、より客観性の高い研究が必要」とまとめている。

 なお、数名の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2020年3月23日
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