10分未満の中高強度身体活動の蓄積でも要介護リスクが低下

 運動を含む身体活動にはさまざまな疾患の予防・改善効果があり、実際に公的機関の健康政策や多くの疾患治療ガイドラインで運動療法が推奨されている。それらの推奨では、1回の身体活動の継続時間を重要視していることが多い。例えば2019年にWHOが策定した認知症予防ガイドラインには、「少なくとも10分以上の長さで有酸素運動を行う」と述べられている。しかし、日常生活の中で運動のために10分以上の連続した時間を確保するのが難しいことも少なくない。

 ところが今回、日常の身体活動と要介護リスクとの関係を調査した研究から、10分に満たない中高強度の身体活動でもその合計時間が確保されていれば、要介護状態になるリスクを抑えられることがわかった。福岡工業大学社会環境学部の楢崎兼司氏らの研究グループが、「The Journals of Gerontology. Series A, Biological Sciences and Medical Sciences」3月5日オンライン版に発表した。

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 この研究は、福岡県糟屋郡篠栗町、福岡工業大学、および九州大学が共同で行っている地域前向きコホート調査「篠栗元気もん調査」のデータを解析したもの。要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者1,687人(平均年齢73.3±6.0歳、男性37.8%)を5.8年(中央値)追跡。新たに要介護認定を受けるリスクを身体活動別に調べた。

 身体活動は3軸加速度計により測定し、中高強度(3 METs以上)および低強度(1.6~2.9METs)の身体活動に分け、また、それぞれ1回あたりの継続時間が10分未満の活動と10分以上の活動に分けて評価した。ベースライン時における1日あたりの平均時間は、中高強度身体活動が38.1分、低強度身体活動が332.0分だった。

 追跡期間中に274人が要介護認定を受けた。中高強度身体活動の時間で四分位に分け、年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、教育歴、認知機能などの因子で調整の上、要介護リスクを比較検討したところ、以下の結果が得られた。

 中高強度身体活動時間が最も少ない第1四分位群を基準とすると、第2四分位群の相対的な要介護リスク(ハザード比)は0.70、第3四分位群では同0.44、第4四分位群では同0.39となり、中高強度身体活動時間が多いほど要介護リスクが低下する有意な関係が認められた(傾向性P<0.001)。また中高強度身体活動時間が10分長くなるごとに、ハザード比0.86ずつ低下することも分かった。

 続いて1回あたりの継続時間が10分以上の中高強度身体活動と10分未満の中高強度身体活動のそれぞれで、1日あたりの時間と要介護リスクとの関係を解析したところ、いずれも全数解析と同様の有意な関係が認められた(第1四分位群に対する第4四分位群のハザード比は、継続時間10分以上と10分未満の両方で0.45)。これは、一定強度以上の身体活動であれば10分以上継続せずに、より短時間の活動の積み重ねでも、要介護リスクの低下につながることを示唆している。

 楢崎氏らは「日常生活における中高強度身体活動の蓄積は1回あたりの継続時間に関わらず要介護リスクの低下と関連している可能性がある」と結論を述べ、「日常生活における短い“スキマ時間”を活用して、合計の活動時間を増やすことで要介護化を抑止できるかもしれない。このエビデンスを今後の地域における介護予防事業に反映させていきたい」とまとめている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2020年4月27日
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