人工庭園のリラクゼーション効果も自然環境と同等――山口大

 人工的に作られた庭の中を歩くことでも、自然を生かした公園を訪れた時と同程度のリラクゼーション効果を得られることを示すデータが報告された。山口大学大学院医学系研究科保健学専攻病態検査学講座の末永弘美氏らが、健康な若年成人を対象に行った研究の結果であり、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に12月17日掲載された。

 公園などの自然を生かした緑地の訪問にストレス軽減作用があることは、多くのエビデンスで支持されている。近年ではこれを医療に援用し、病院の屋上などに人工庭園を設けて、入院患者が散策できるようにしているケースも増えている。しかし、人工的に作られた庭園にも自然環境と同じ効果があるのかは十分検証されていない。末永氏らは、人工庭園を含む異なる四つの環境で、歩行中の心拍変動を計測して相違の有無を検討した。

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 調査が行われたのは、2018年に開催されたイベント「山口ゆめ花博」の会場。会場内にある、花のエリア、海辺のエリア、森林エリア、および健康増進のための人工庭園という四つのエリアが用いられた。研究参加者は大学生38人(平均年齢21.7±1.1歳、女性25人)。適格条件は、非喫煙者、高血圧・うつ病・不安神経症などの治療薬および睡眠薬を服用していないこと、不整脈の既往がないこと、妊娠していないこと、休憩なしで30分間歩けることなど。

 主要評価項目は、心拍数変動の低周波成分(LF)と高周波成分(HF)の比で表す「LF/HF比」。安静時LF/HF比が0.8未満の場合、リラックスしている時に多い副交感神経が優位な状態と判定され、2.0を上回る場合、緊張している時に多い交感神経が優位な状態と判定される。このLF/HF比の他に、心電図R-R間隔の変動係数(CVRR)も参照値として評価した。

 イベント会場での調査に先立つ1週間前に、ベースライン評価のため心電図検査が行われた。その結果、睡眠障害のある人(5人)はLF/HF比が有意に高く、アレルギー性鼻炎のある人(15人)や運動習慣のある人(10人)はLF/HF比が低い傾向が見られた。

 イベント会場での調査に際しては、開始12時間前以降は飲酒を禁止し、1時間前以降は食事とカフェインの摂取を禁止した。参加者は、イベント会場内の4つのエリアを自由に歩行した。各エリアの滞在時間は2~60分の間に分布していた。

 各エリアでの歩行後のLF/HF比は歩行前より有意に低下し、副交感神経優位になるという変化が認められた。またCVRRは、全てのエリアで歩行後に低下する傾向が認められた。エリアごとの歩行後のLF/HF比に、有意差は認められなかった。

 人工庭園の滞在時間10分未満/以上で比較すると、10分未満だった人(20人)のLF/HF比は4.1±4.0であったのに対し、10分以上滞在した人(16人)のLF/HF比は1.7±1.9であり、有意な群間差が存在した(P=0.04)。これにより、人工庭園での滞在時間が長いことが、より高いリラクゼーション効果の発現に寄与した可能性が考えられた。この他、ベースラインのLF/HF比が低い人は歩行後にLF/HF比が高くなり、反対にベースラインのLF/HF比が高い人は歩行後にLF/HF比が低くなる傾向が見られた。

 著者らは本研究の限界点として、参加者が健康な若年者に限られており、高齢者の多い医療現場で同様の結果が得られるとは限らないこと、調査は夏季に実施され、他の季節では検討されていないことなどを挙げている。その上で、「人工的に作られた庭園であっても自然環境と同等に、自律神経にプラスのリラクゼーション効果をもたらすことが示唆された」と結論付けている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年1月25日
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