かゆいだけで終わりじゃない! 蚊に刺され後に待っている怖い再興感染症

再興感染症について

この時期、寒い日本を飛び出して暖かい場所への旅行を考えている人も多いのでは? そんなとき、注意したいのが「蚊」です。蚊によって運ばれる4種類の感染症とその症状、予防法などをお伝えします。
  1. 1.はじめに
  2. 2.ヒトと蚊の共生
  3. 3.日本脳炎
  4. 4.マラリア
  5. 5.デング熱
  6. 6.ジカウイルス感染症
  7. 7.おわりに

はじめに

再興感染症とは、一時発生が減っていたにもかかわらず、再び流行してきた感染症のことです。
その原因は、地球温暖化により感染症を運ぶ蚊の生息域が北に移動していることです。
他にも多剤耐性菌や強毒株の出現、交通手段の発達による移動の手軽さがあげられます。

今後さらに、国際交流が盛んになり感染のチャンスが増えるかもしれませんので、再興感染症の正しい知識を身につけておきましょう。

※多剤耐性菌とは
変異によりさまざまな抗生剤が効かなくなった細菌のこと。

※強毒株とは
人に感染すると高い確率で死に至る細菌やウイルスのこと。

ヒトと蚊の共生

蚊は衛生害虫です。衛生害虫とは人や家畜に悪影響を与える昆虫やダニ類のことです。蚊が病原体(ウイルスや原虫)を運び、家畜や人の血を吸うことが、再興感染症の流行に大きく影響します。

通常は花の蜜を吸っていますが、産卵期に入ると栄養をとるために血を吸います。この際に体内に唾液が注入され、蚊の口や唾液に含まれる病原体が入り込みます。また、ヒトが雌の蚊に刺されるとかゆくなるのは、唾液に対するアレルギー反応です。

では、蚊から感染する4種類の感染症について説明します。

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日本脳炎

日本脳炎ウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスです。西ナイルウイルス、セントウイルス脳炎ウイルス、マレーシア渓谷脳炎ウイルスは、日本脳炎ウイルスと同じ抗原をもつ日本脳炎血清型群として知られています。

※抗原とは
体内への異物の侵入を防ぐ抗体のもとになるもの。

※血清型とは
血液型のように、ウイルスなどの細胞の表面にある抗原によって分類される型のこと。

これらのウイルスを運ぶのはコガタアカイエカ(日本では水田で発生する)で、ブタの体内で増えたウイルスをヒトへと移します。
日本脳炎ウイルスは1935年に、感染したヒトの脳からこと取り出され、増やすのに成功しました。

日本脳炎の発症頻度は0.1~1%で、ヒトからヒトへの感染はありませんが、ワクチンによる予防が必要な感染症です。

日本脳炎ウイルスの潜伏期間は6~16日間で、脳や脊髄を保護している髄膜の炎症や38℃以上の発熱が主な症状です。小児では下痢に続いて、物事が正しく理解できない、刺激ににぶくなるなどの意識障害や、しびれや筋力低下を伴う神経障害が現れます。

死亡率は20~40%で、生存者の45~70%に麻痺(まひ)や痙攣(けいれん)などの精神神経学的後遺症が残ります。
後遺症が残るのは、発症の時点ですでにウイルスが脳細胞を破壊しているためです。
脳細胞についた傷を治す有効な治療法は今のところなく、高熱と痙攣(けいれん)などの症状を軽くする治療を行います。

また、日本脳炎発症者の大半が予防接種を受けていないことも分かっています。日本脳炎には、活性化しない(感染しても発症しない)ウイルスで作られた不活化ワクチンが用いられます。
3歳時に3回接種のプランを開始して、9~12歳の期間に1回の追加接種を行います。

その他の予防として、蚊に刺されない工夫が必要です。肌の露出を制限し、流行地への渡航を極力控えるようにしましょう。

マラリア

マラリアの主な病原体には、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、サルマラリア原虫があげられます。これらの原虫をハマダラカが運び、ヒトへ感染させます。

マラリア原虫は蚊の体中で、ヒトに感染するためにスポロゾイト(胞子)に形を変えます。
その後、蚊の唾液からヒトの血中へ移行し、肝細胞に感染して増殖します。増え続けた原虫は肝細胞を壊し、さらに赤血球へ感染して破壊します。
その後は、また新たな赤血球に再感染し、破壊を繰り返します。

病原体の潜伏期間は熱帯熱マラリアで12日間、四日熱マラリアで30日間、三日熱マラリアと卵形マラリアで14日間前後です。
症状は熱による顔の赤み、嘔吐(おうと)、頭痛などの熱発作と、咳、痰(たん)、胸痛、呼吸困難などの呼吸器症状や貧血です。
また、体温は40℃以上にもなります。

通常、マラリアの治療には、予防にも使われるクロロキンなどを用います。初期治療の場合は、プリマキンという治療薬を利用し、肝細胞に感染したマラリア原虫を攻撃します。

個人でできる予防として、蚊に刺されないよう肌の露出を控えた服を身に着けることが大切です。
また、渡航予定先の感染症情報をよく調べておきましょう。

デング熱

デングウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスで、4種の血清型が知られています。
これらのウイルスを運ぶのは、ネッタイシマカやヒトスジシマカです。
2014年に日本で流行し、全世界では年間1億人がデング熱を、25万人がデング熱が進行したデング出血熱を発症しています。

潜伏期間は3~7日間です。
デング熱にかかると、発熱に加えて発疹、関節痛、筋肉痛、目の充血、目の奥の痛みが現れます。
これらの症状は1週間ほどで良くなりますが、一部はデング出血熱に進行します。

デング出血熱の症状は、デング熱が良くなって平熱に戻ったときに突然現れます。
急に出血したり、いったん出血すると止まりにくくなったりします。
この出血は血液中の血しょうと呼ばれる成分が流れ出すことが原因で、循環する血液が不足すると、ショック症状を引き起こします。

デング出血熱の重症度は4段階に分類され、重症度の高いGrade 3、4はデングショック症候群と呼ばれます。
Grade 3では心拍数が上がる、脈拍が弱くなる、脈圧が20mmHg以下に下がるなどの循環障害がみられます。
Grade 4は脈圧の測定ができないほど重症で、出血や臓器障害を伴います。

発熱と痛みに対する治療には、解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)を利用します。
デング出血熱にかかった場合は輸液が必要となります。

予防には蚊に刺されない工夫が必要です。肌を覆う厚手の服を着用しましょう。一緒に渡航する渡航者や接触する場所についてもよく調べておきましょう。

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ジカウイルス感染症

ジカウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスです。
ヒトへ感染する血清型は1つで、1947年にウガンダのジカ森林のアカゲザルから取り出されました。
媒介するのはネッタイシマカ、ヒトスジシマカのようなヤブカ属で、1968年にナイジェリアでヒトから取り出されて存在が確認されています。

近年では2007年にミクロネシア連邦のヤップ島、2013年にフランス領ポリネシア、2014年にチリのイースター島でも発見されています。
2013年から再び流行しており、2015年に南アメリカ大陸、特にブラジルとコロンビアで流行したことは記憶に新しいことと思います。

潜伏期間は3~12日間で、主症状は38.5℃以下の発熱、発疹、関節痛、筋肉痛、目の充血、目の奥の痛みです。
また、胎児に感染すると小頭症という、脳の発達が遅れて頭が異様に小さくなる病気になることが分かっています。
これらの症状は発症地によって異なります。
症状は4~7日間継続し、発熱と痛みに対しては解熱鎮痛剤で治療します。

予防には蚊に刺されない工夫が必要です。肌の露出を制限し、厚手の服を着ましょう。
また、渡航前には感染症情報をチェックしておきましょう。

おわりに

蚊によって広がる4種類の再興感染症についてご説明しました。
国や地域によって流行している感染症が異なるので、渡航前に情報を得てしっかり準備し、渡航先で健康に過ごしていただければと思います。

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