気が付かないと大変なことに! お子さんをRSウイルスから守りましょう

RSウイルスについて

はじめに
RSウイルス感染症をご存知ですか? 冬季はインフルエンザと並んで教育機関での流行が心配される感染症の一つで、小児科定点把握疾患に含まれるほどの重要な疾患です。感染力が強く、集団感染を招くこともあります。咳やくしゃみなどの飛沫や接触によって感染するため、適切な予防が必要です。

※小児科定点把握疾患とは
感染症法により、保菌者がいた場合に保健所への届け出が義務づけられている5種の疾患のこと。
※乳児突然死症候群とは
何の予兆もないままに、主に1歳未満の健康にみえた乳児に、突然死をもたらす疾患のこと。

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RSウイルスとは
RSとはRespiratory Syncytialの略で、Respiratoryは呼吸の、Syncytialは合胞性のあるという意味です。つまり、ウイルスが鼻、のど、気管、肺などの呼吸器に感染し、細胞を融合させてたくさんの核をもった細胞を作るという意味です。
RSウイルスはパラミクソウイルス科ニューモウイルス属のRNAウイルスです。ヒト、チンパンジー、ウシ、ヒツジに感染しますが、55℃以上の熱、石けんや消毒薬などで感染性を失わせます。
RSウイルスにはA型とB型があり、遺伝学的に区別されています。RSウイルスの表面の層にはGタンパク質とFタンパク質があり、Gタンパク質の構造の違いによってA型とB型を区別しています。
Gタンパク質の役割は、標的とする細胞にくっついてウイルスに感染させることです。Fタンパク質は、その感染した細胞同士を合わせて1つの塊にします。このように合わさった細胞を合胞体といいます。
抗RSウイルス薬であるパリビスマブは、Fタンパク質とくっついて細胞同士が合わさるのを邪魔し、感染を防ぎます。
感染経路と感染率
感染経路は咳やくしゃみなどの飛沫または接触によるもので、4~6日間潜伏します。
小児の場合、症状がなくなってから3週間後でもまだ感染力があるため、治ったと安心した矢先に集団感染となることもあります。また、飛沫がついた手指やおもちゃ、本なども感染源となります。
乳児の69%が生後1年以内にRSウイルスに感染し、そのうち23%が呼吸器系の炎症を起こすまでに重症化します。生後2~4年では感染児の20%が重症化し、その後、重症化する割合は年齢とともに減少します。
生後1ヵ月未満の感染はあまりみられませんが、感染した場合は咳や痰(たん)、呼吸困難などの呼吸器症状がないために気づかない場合があります。このことが乳児突然死症候群の原因となり得るため、鼻水や体温を注意して観察することが必要です。

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症状
軽症の場合は感冒様症状(発熱、鼻づまり、咳など、いわゆるかぜのような症状)が出て、重症化すると、気管支炎や肺炎になることもあります。初期症状は鼻水で、発熱へと続きます。
主な症状は咳です。咳が続くような場合は、その音を注意して聞いてみましょう。音の違いによってウイルスの感染箇所や活動箇所がわかったり、さらに今後、気管支炎や肺炎へ進行するかどうかを予測したりできます。
犬が吠えるような咳である犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)が出るときは、症状は軽度で、のどの炎症が主です。しかし、乾いた咳(乾性咳嗽(かんせいがいそう))から痰(たん)を含んだ湿った咳(湿性咳嗽(しっせいがいそう))へと変化するときは、気管支まで炎症が進んでいるので、早期の診断が必要です。
また、咳の続く期間も、症状を区別する目安となります。3週間未満で落ち着く咳を急性、3~8週間続く咳を遷延性、8週間以上続く咳を慢性と区別することができます。

病気にかかっている期間は7~12日間で、2週間もあれば回復します。
しかし、小児の再感染率は高く、また、小児から成人にも感染します。成人が直接感染した場合は感冒様症状で済みますが、小児からの感染や免疫低下時の感染、さらに高齢者の感染においては、気管支炎を伴って重症化します。
免疫と予防法
成人の場合はウイルスが体内に入ると、RSウイルス抗体が働いてウイルスを体から追い出し、感染を防ぐことができます。
しかし、初めて感染する乳児は、お腹の中で母親からもらった抗体しかもっておらず、それだけでは感染を防げません。特に、生後半年以下の赤ちゃんでは、自力でRSウイルスを追い出すことができずに重症化するケースがあります。そのため、RSウイルス感染者からは隔離する必要があります。また、1回の感染で免疫をつくることはできず、繰り返し感染して生後3年以内に抗体が出来上がると考えられています。

予防には、手指についたRSウイルスを落とすことが効果的です。口に手を入れたり、咳を覆ったり、鼻をかんだりした後はハンドソープやシートを使い、特によく手を洗いましょう。また、たばこの煙からRSウイルスに感染することもあるので、室内の空気清浄や子どもの受動喫煙を防止するエチケットが必要です。
RSウイルス感染症にかかってしまい、咳が長く続くときは、少量の水をこまめに飲みましょう。就寝時に激しい咳が出るときは、気管や肺を圧迫しないように上半身を起こすと楽になります。
また、咳が止まらず呼吸が苦しそうな場合や、呼吸が止まりそうな場合には直ぐにかかりつけの医師か救急病院へ行きましょう。炎症により喉が腫れてしまうことにより、気道をふさぐ可能性があります。
おわりに
冬の感染症といえばインフルエンザというイメージですが、RSウイルスの怖さ、身近さも感じていただけたでしょうか。
知らない間に感染してしまい、クラス中で大流行とならないように、日ごろから注意してお子さんを見守りましょう。

治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。
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