日本食1皿の塩分量はどのくらい?――献立単位で減塩を達成するヒント

 穀物を主食として数品のおかずで構成されている日本の家庭料理は、栄養バランスを取りやすい。この優れた特徴を生かしながら塩分摂取量を減らすためのヒントとなる研究結果が、「Journal of Nutritional Science」に12月15日掲載された。ノートルダム清心女子大学人間生活学部食品栄養学科の今本美幸氏らによる研究で、著者らは「従来の介入法とは異なる、新たな減塩指導法として応用できるのではないか」と述べている。

 減塩指導や疾患啓発などによって、日本人の塩分摂取量は漸減してきたが、近年は10g/日前後で下げ止まりしている。これまでの減塩指導は主として、食材選択や味付け、調理方法のテクニックの指導であり、何をどの程度食べれば良いのかが分かりにくい傾向があった。これに対して今回の研究では、一般的な家庭料理の1皿に含まれる塩分量を明らかにし、どのような料理の組み合わせであれば塩分過多になりにくいのかを示すことを試みた。

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 今本氏らは以前、地域住民を対象とする研究で、尿中塩分排泄量を自己測定することによって塩分摂取量が減ることを報告している。今回の研究は、その時の調査データを二次的に解析したもの。79人の一般成人が1カ月間にわたり日々の食事内容を記録するという研究に参加。そのうち尿中塩分排泄量を15日以上測定していた60人を本研究の解析対象とした。対象者の主な特徴は、平均年齢62歳(四分位範囲50~74)、女性75%、BMI24.0であり、高血圧患者が52%、慢性腎臓病患者が6%含まれており、研究開始時点の尿中塩分排泄量は9.2g/日(同7.1~11.4)だった。

 食事記録を基に、主食である穀物は白飯、カレーや丼などのご飯もの、パン、ラーメン、その他に分類、副食は肉/魚料理などの主菜、野菜料理などの副菜、その他の料理は乳製品、果物、みそ汁、みそ汁以外の汁物、漬物、菓子類に分類した。通常、パンとみそ汁を組み合わせて食べることがないように、主食の穀物の種類によってその他の料理のカテゴリーがほぼ決まることから、4種類の穀物がそれぞれ主食であるときの一食の塩分摂取量を、尿中塩分排泄量から推算。また、上記の料理カテゴリーごとの塩分摂取量も推算した。

 解析の結果、1回の食事での塩分摂取量は、主食にどの穀物を選択した場合でも、または穀物を含まない献立でも、3g前後であることが分かった(主食が白飯の場合2.9g、カレーや丼などのご飯ものでは2.8g、パンでは2.6g、ラーメンでは2.9g、うどんやそば等の麺類では2.8g、主食なしでは3.1g)。一方、料理カテゴリー別に1皿(1杯)の塩分摂取量を比較すると、主食のうちラーメンは3.2g、うどんやそば等の麺類は2.2g、パンは1.9gであり、主菜は1.5g、副菜は0.9gであった。また、みそ汁は1.4g、みそ汁以外の汁物は1.5g、漬物は0.7gだった。

 調査期間全体の塩分摂取量のうち、35%は主菜(魚/肉料理)で占められており、19%は副菜(野菜料理)が占めていた。なお、主食の穀物からの塩分摂取量は30%を占め、その内訳はパンが10%、カレーや丼などのご飯もの9%、ラーメン3%、うどんやそば等の麺類6%などだった。その他は、みそ汁が11%、みそ汁以外の汁物が2%、漬物が3%。

 4種類の穀物の摂取頻度を説明変数、主菜・副菜の摂取量を目的変数とする回帰分析の結果、栄養バランスにとって重要な主菜は、白飯を主食として選んだ時に0.31皿分増えることが分かった。また、主菜と同様に栄養バランスに大切な副菜は、主食が白飯の時に0.43皿分増加していた。一方、主食としてラーメンを選択した時は、主菜が0.48皿分減り、副菜は0.22皿分減ることが分かった。このほか、パンを選んだ時に乳製品の摂取が増えること、穀物の摂取と果物の摂取は関連がないことなども示された。

 著者らは、「本研究は日本の家庭の食事における1皿ごとの塩分量を明らかにした初の試み」と位置付け、「他の集団で検証を重ねた上で、日本食の栄養バランスと減塩を両立させるための包括的な食事ガイドを確立できるのではないか」と期待を述べている。

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HealthDay News 2022年3月7日
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