睡眠呼吸障害が血糖変動に及ぼす影響は? 糖尿病と心不全の有無で検討、札幌医大


この研究では、持続的気道陽圧法(CPAP)は睡眠呼吸障害の治療として有効だが、CPAP療法による血糖変動幅の改善効果は糖尿病や心不全により減弱することも分かった。
糖尿病や心不全の患者では睡眠呼吸障害の合併が高い頻度でみられ、こうした症例では心血管転帰が不良となることが知られている。
また、血糖変動幅の増大は、平均血糖値とは独立して心血管イベントのリスク因子となるが、睡眠呼吸障害が血糖変動に及ぼす影響は明らかにされていない。
中田氏らは今回、糖尿病と心不全を単独または併存した患者を対象に、睡眠呼吸障害と血糖変動との関係を調べる前向き研究を行った。
対象は、2013年7月~2016年10月に同大学病院に糖尿病および/または心不全の検査や治療目的で入院し、連続グルコース・モニタリング(CGM)と睡眠ポリグラフ検査を行った患者203人。

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平均年齢は67.5±14.1歳、男性65.0%であった。対象患者を糖尿病の有無で2群に分けてCGMデータから求めた血糖変動係数(平均血糖変動幅;MAGE)と睡眠1時間当たりの無呼吸や低呼吸の回数を表す無呼吸低呼吸指数(AHI)との関係を調べた。
その結果、HbA1c値およびMAGEはいずれも非糖尿病患者群(103人)と比べて糖尿病患者群(100人)で有意に高かった(平均HbA1c値:8.0±2.0対5.7±0.4%、MAGE中央値:95.5mg/dL対63.5mg/dL)。
一方で、糖尿病の有無でAHIには差はみられなかった(29.0±22.7対29.3±21.5)。また、非糖尿病患者群ではAHIはlogMAGEと正の相関を示したが、糖尿病患者群ではこうした関連はみられなかった。
多変量回帰分析の結果、非糖尿病患者群ではAHIはlogMAGEの独立した変数であることが分かった。
睡眠呼吸障害と血糖変動の関係に対する心不全の影響を調べるため、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)100pg/mLをカットオフ値として対象患者を糖尿病+BNP高値または低値、非糖尿病+BNP高値または低値の4群に分けて解析したところ、非糖尿病患者において、BNP低値群ではAHIはlogMAGEと強い相関性を示したが、BNP高値群ではこうした相関性は認められなかった。
さらに、非糖尿病患者群ではCPAP療法後にMAGEが低下したが、糖尿病患者ではCPAP療法後のMAGEの値に変化はみられなかった。
これらの結果から、中田氏らは「睡眠呼吸障害は血糖変動幅を増大させるが、糖尿病や心不全があるとこうした影響は減弱する可能性がある」と結論づけている。
また、睡眠呼吸障害と血糖変動との関係が糖尿病患者などで減弱する理由については、「糖尿病患者では血糖コントロールが不良であることやインスリンなどの糖尿病治療薬の使用による影響力が、睡眠呼吸障害の血糖変動への影響を上回るためではないか」と考察している。

糖尿病とは?血糖値や症状に関する基本情報。体内のインスリン作用が不十分であり、それが起因となり血糖値が高い状態が続いていきます。症状など分類別に解説しています。