高齢者の慢性疾患併存は年間介護給付費の増大と関連 筑波大ほか

日本人の後期高齢者は慢性疾患の併存度合いが高いほど、年間医療費だけでなく介護給付費も増大することが、筑波大学ヘルスサービス開発研究センター准教授の森隆浩氏らの検討で明らかになった。こうした高齢者では医療費と介護給付費の合計も高額になるという。研究の詳細は「BMC Geriatrics」3月7日オンライン版に掲載された。
2016年度の年間の国民医療費は42.1兆円を超え、年間の介護給付金は10兆円近くにも上り、今後ますます増大すると予想されている。高齢者は複数の慢性疾患を抱えやすいが、これまで高齢者の多疾患併存と介護給付費、あるいは医療費および介護給付費の合計との関連を調べた研究はほとんどなかった。そこで、森氏らは今回、東京大学、東京都健康長寿医療センターと共同で、千葉県柏市の後期高齢者の医療レセプトと介護レセプトのデータを用いて、高齢者における多疾患併存と年間医療費および介護給付費の関連について調べた。

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この研究は、千葉県柏市における後期高齢者の医療レセプトおよび介護レセプトから2012年4月~2013年9月のデータを用いたもの。両者のデータを匿名化した上で突き合わせ、介護レセプトに含まれていない疾患情報を把握し、分析を行った。対象は、医療保険サービスを1回以上使用し、かつ12カ月以上の追跡ができた75歳以上の高齢者3万42人であった。
多疾患併存の指標には、2011年に改訂されたCharlson Comorbidity Index(CCI)値を用いて評価し、参加者をCCI値(0、1、2、3、4、5以上)で分類した。なお、改訂版のCCIには、慢性合併症を伴う糖尿病、心不全、腎疾患、肝疾患、慢性肺疾患、リウマチ疾患、認知症、片麻痺または対麻痺、悪性腫瘍、AIDS/HIVが含まれていた。
その結果、12カ月間の医療費および介護給付費の合計は、平均で108.6万円であった。分析の結果、CCI値が1高いごとに平均年間医療費は15.7万円、平均年間介護給付費は12万円、両者の合計は27.1万円と有意に高く(いずれもP<0.001)、多疾患併存の度合いが高いほど医療費だけでなく介護給付費も高額であることが分かった。一方、要介護度が同じ範囲内であれば、CCI値と介護給付費の関連は認められなかった。
これらの結果について、森氏らは「複数の慢性疾患を抱える高齢者は、もともと介護の必要性が高い傾向にある。今回の結果でもCCI値が高いほど要支援・要介護状態となる割合も高いという結果が得られており、要介護度が上昇するに伴い利用限度額も増えるため、結果として介護給付費が増えたのではないか」と考察している。その上で、同氏らは「高齢者の多疾患併存による経済的影響を評価するには、医療費とともに介護給付費も考慮する必要がある」と付け加えている。
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