歯の本数が高齢者の睡眠時間と関連か 本数が少ないほど短時間や長時間睡眠になりやすい?

現在の歯の本数が少ない高齢者は、歯の本数が多い人に比べて短時間睡眠や長時間睡眠になるリスクが高い可能性があることが、東北大学大学院国際歯科保健学分野の小山史穂子氏(現・大阪国際がんセンターがん対策センター)の検討で分かった。詳細は「Sleep Medicine」12月号オンライン版に掲載される。
適切な睡眠時間を保つことは健康維持に重要であるが、これまでの研究で睡眠時間は長すぎても短すぎても死亡率の上昇など健康問題につながることが示されている。一方、歯の本数が少ない人は噛み合わせが不安定になり、下の顎(あご)が上方に回転して気道を狭め、睡眠時の呼吸を妨げる可能性があることが指摘されている。そこで、小山氏らは今回、日本人の高齢者を対象に、歯の本数と睡眠時間の長さの関連を調べる横断研究を実施した。

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この研究は、65歳以上を対象に実施した日本老年学的評価研究(JAGESプロジェクト)の2010年度調査データを用いたもの。睡眠時間に関する質問については、ランダムに抽出した2万3,444人のうち2万548人(平均年齢73.7歳)から回答が得られた。解析では、7時間の睡眠時間を基準として現在の歯の本数と短時間睡眠(4時間以下)あるいは長時間睡眠(10時間以上)との関連を調べた。
その結果、歯が20本以上の高齢者では、短時間睡眠の割合は2.3%(160人)、長時間睡眠の割合は2.8%(195人)だったのに対し、歯が少ない高齢者ではそれぞれ3.3%(100人)、9.0%(272人)といずれも割合が高いことが分かった。また、性や年齢などの関連因子で調整して統計解析したところ、歯の本数と睡眠時間はU字型の関連を示し、歯が20本以上の高齢者に比べて歯が少ない人では短時間睡眠であるリスクは1.4倍、長時間睡眠であるリスクは1.8倍であることが明らかになった。さらに、歯の本数が1~9本の人でも短時間睡眠のリスクは1.3倍、長時間睡眠のリスクは1.5倍であった。
以上の結果を踏まえ、小山氏らは「歯が20本以上ある高齢者に比べて、10本未満と少ない高齢者では短時間睡眠や長時間睡眠になりやすい可能性がある。高齢になっても歯の健康を保ち、数多くの歯を保持することが適切な睡眠時間を取り続けることにつながると考えられる」と結論づけている。
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