病気による長期休業者の復職と退職の実態は?――J-ECOHスタディ

 国内の大手企業に勤める従業員が病気によって長期休業した後の復職率が明らかになった。国立国際医療研究センターが国内十数社の企業と共同で行っている「職域多施設研究(J-ECOHスタディ)」のデータを解析した結果であり、東京ガス(株)安全健康・福利室の産業医、西浦千尋氏らによる論文が、「Journal of Epidemiology」に3月13日掲載された。

 病気治療のために長期間休業した従業員は、最終的に復職、退職、死亡のいずれかに至るが、その割合や復職・退職までの期間は病気により異なる可能性がある。しかし、国内企業従業員の長期休業者の実態は、これまで詳しく分かっていなかった。西浦氏らは、J-ECOHスタディのデータを用いてこの点を検討した。

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 J-ECOHスタディにはさまざまな業種の大手企業12社が参加し、ヘルスケア関連データが登録されている。今回の検討はこのうち11社に勤務する55歳以下の約8万人の従業員のうち、2012年4月~2014年3月に病気のため連続30日以上休業した1,209人を解析対象とした。なお、妊娠関連疾患の休業者は解析に含まれていない。また休業中に定年に達する可能性がある人を除くため、年齢の上限を55歳とした。調査対象企業群の制度上の上限休業期間は2.5~3.9年(中央値3年)と長期であり、発生した休業を転帰確定まで追跡した。

 調査対象となった長期休業者の平均年齢は40.5歳で、男性が多い企業群で調査したことを反映して男性が82.6%を占めていた。疾患の内訳は、精神疾患が最多で57.5%(うつ病34.6%、適応障害8.9%など)、がん9.3%、外傷8.5%、筋骨格系疾患6.9%、循環器疾患5.3%などだった。

 長期休業者のうち、83.9%は復職し、13.8%は退職、2.2%が死亡していた(追跡打ち切りは1名のみ)。

 全休業者の休業期間の中央値は98日だった。全休業者の74.9%は1年以内に復職しており(復職までの中央値90日)、最終的に復職した人に対する1年以内の復職者の割合はほぼ9割(89.3%)だった。一方、全休業者の8.7%は1年以内に退職しており(退職までの中央値249日)、最終的に退職した人に対する1年以内の退職者の割合は62.9%だった。

 疾患別に転帰を比較すると、復職率は循環器疾患(95.3%)や外傷(92.2%)で相対的に高く、精神疾患(82.1%)やがん(80.5%)では相対的に低かった。休業者のうち、精神疾患では17.4%、筋骨格疾患では13.3%、外傷では7.8%の人が最終的に退職していた。

 最多の休業理由であった精神疾患についてより詳細に分析すると、統合失調症では復職率が相対的に低かった(66.7%)。また退職率は、統合失調症、適応障害、不安障害で20%を超えていた。なお、長期休業者の死亡は、その原因の大半をがんが占めていた。

 以上より著者らは、「病気により長期休業となった場合、復職の時期は休業から1年以内が多いことから、少なくとも1年間の給与を補償する疾病休業制度があると、大半の長期休業者の復職をサポートできると言えるのではないか」とまとめている。また、長期休業中の死亡の大半はがんによるもので、がんによる長期休業者では死亡しなければ大半が復職していたことから、「がんの早期発見による死亡率低下は、がんによる長期休業者の就業継続性の向上に役立つだろう」と付け加えている。

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HealthDay News 2021年4月26日
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