脳卒中や心臓発作と網膜静脈閉塞症との有意な関連が明らかに

網膜の静脈の流れが滞り、視野の異常などが生じる「網膜静脈閉塞症」の患者は、心臓や脳の血管が詰まったり心不全になるリスクが有意に高いことが、日本人を対象とする研究から明らかになった。順天堂東京江東高齢者医療センター眼科の小野浩一氏らの研究によるもので、詳細は「Medicine」に12月30日掲載された。
網膜静脈閉塞症(RVO)は、眼底の網膜にある静脈が閉塞して血流が遮られ、網膜に出血や浮腫が起きる病気。視野が欠けたり、しばらくたってから出現する新生血管の影響で網膜剥離や血管新生緑内障などが引き起こされ、より深刻な視覚障害を招くことがある。RVOが起きる原因の多くは、静脈と隣接している動脈に生じる動脈硬化にある。そのためRVOの患者は、動脈硬化によって生じる心筋梗塞や脳卒中などにもなりやすいと考えられる。しかし、その関係を実際に証明した日本人対象の研究データはこれまでなかった。小野氏らは、この点を検証するために以下の検討を行った。

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この研究は、単一施設の後ろ向きコホート研究として実施された。順天堂東京江東高齢者医療センター眼科で2012~2019年にRVOと診断され、解析に必要なデータに欠落のない患者57人を「RVO群」(76.8±9.4歳、男性40.4%)とし、2012年1~4月に同院で白内障手術を受けた125人を「非RVO群」(75.6±8.6歳、男性34.4%)とした。
両群の特徴を比較すると、RVO群は血圧が高く有意な群間差があった(収縮期/拡張期血圧ともにP<0.001)。ただし、年齢や男女比、BMI、血清脂質、腎機能(eGFR)、糖尿病患者の割合、飲酒・喫煙習慣、抗凝固薬・抗血小板薬の処方状況の群間差は非有意だった。なお、新生血管の活動を抑えるために用いる、血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑制する抗VEGF薬の眼球内投与の回数は、RVO群の方が多かった(P<0.001)。
虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心不全入院、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、心血管死で構成される複合エンドポイントを評価項目として、カルテの記録を解析。RVO群はRVOの診断から追跡を開始、非RVO群は白内障手術施行日から追跡を開始して、複合エンドポイントのイベント発生まで、イベント非発生の場合は最終診察日まで追跡した。
RVO群は2.68±2.04年の追跡で7件(脳卒中5件、心不全入院とTIAが各1件)、非RVO群は2.81±2.70年の追跡で2件(心筋梗塞と心不全入院が各1件)のイベントが記録されていた。罹患率比は8.07(95%信頼区間1.54~79.6)、相対リスクは7.68(同1.65~35.8)と計算され、RVO群の方が有意にハイリスクだった。
多変量解析の結果、イベント発生に独立して関連する因子として、RVOの既往〔ハザード比(HR)16.1(同2.29~113.74)〕、および、年齢〔1歳ごとにHR1.26(同1.06~1.49)〕の2項目が抽出された。
以上から、RVO患者は脳心血管イベントや心不全リスクが高いことが明らかになった。著者らは、「眼底の評価は、特に高齢者の脳心血管イベントを予測する上で意義のあるツールと言える。眼底検査の結果は眼科医だけでなく内科医にも共有されるべきだ」と述べている。

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