睡眠の質が便秘の症状を左右する?――国内Web調査からの推察

 便秘の症状に睡眠の質が影響している可能性を示す研究結果が報告された。愛知医科大学消化管内科の春日井邦夫氏、同総合診療科の山本さゆり氏らが行ったWeb調査の解析結果であり、「Journal of Neurogastroenterology and Motility」に10月15日、論文が掲載された。

 便秘の一部には重大な器質性の疾患が隠れていることもあるが、大半は機能性の便秘であり症状のコントロールが治療目的となる。そのような機能性便秘は、食事や運動、睡眠などの生活習慣により症状が変化しやすい。これらの因子はいずれも概日リズム(1日24時間周期の生理活動)を変動させて、排便の回数や便の性状などに影響を及ぼす。ただし、食事や運動と便秘の関連を個々に検討した研究は少なくないが、睡眠と便秘、および生活習慣全般との関連を検討した研究は多くない。山本氏らは、これらの因子は互いに関連があるとの仮定のもと、以下の検討を行った。

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 Web調査サイトを用い1万人に「自分は便秘だと思うか」という質問をして、「はい」と回答した20~69歳の成人4,908人から、器質性便秘や二次性便秘の患者を除外。その上で、性別、年齢、居住地域を全国調査のデータにマッチさせた3,000人を抽出し解析対象とした。このうち、「よく眠れているか」との質問に1,269人(42.3%)が「はい」と回答し、1,731人(57.7%)は「いいえ」と回答した。後者の睡眠不良群は前者の睡眠良好群に比べて男性の割合が多く(52.5対46.9%、P=0.003)、若年(45.2±12.8対47.4±14.0歳、P<0.001)だった。BMIは有意差がなかった。

 主要評価項目であるブリストル便形状スケール(BSFS)は、睡眠良好群と不良群との間に有意な差が認められた。具体的には、BSFSのタイプ4(滑らかで柔らかい標準的な便)の割合は睡眠良好群の方が有意に高く(P=0.001)、BSFSタイプ1(コロコロした固い便)やタイプ2(ゴツゴツした固い便)の割合は睡眠不良群の方が多かった(P値は同順に0.016、0.002)。また、ピッツバーグ睡眠質問票による睡眠の質や時間、日中の機能障害などの評価は、交絡因子を調整後も睡眠不良群の方が有意に低かった(入眠潜時と睡眠効率の群間差は非有意)。

 二次評価項目として設定されていた、過敏性腸症候群(IBS)の重症度(IBS-SI-J)、IBS関連QOL尺度(IBS-QOL-J)、うつレベル(HADS)なども全て、睡眠不良群の方が状態の悪化を示しており、有意差が認められた。また、排便回数、腹痛、残便感などの排便に関連する症状の多くが睡眠不良群で有意に多く見られた。喫煙や運動不足、朝食欠食、間食、就寝前の摂食、体重増加など、非健康的な生活習慣についても、睡眠不良群の方が有意に多く認められた。

 睡眠良好群に該当することを目的変数とする多変量解析の結果、高齢〔1歳ごとにオッズ比(OR)1.012(95%信頼区間1.006~1.071)〕、BSFSタイプが3~5(ほぼ標準的な便)であること〔OR1.217(同1.044~1.419)〕の2項目が正の関連因子として抽出された。反対に負の関連因子として、男性〔女性に対してOR0.783(0.675~0.907)〕、排便回数の変化〔OR0.832(0.714~0.968)〕、残便感の頻度が25%以上〔OR0.627(0.533~0.737)〕、用手的排便の頻度が25%以上〔OR0.696(0.491~0.988)〕が抽出された。

 これらの結果を基に著者らは、「便秘と睡眠障害、生活習慣とが相互に関連しているという仮説を支持する結果が得られた。便秘や睡眠の問題を抱えている人のQOL向上には、全般的な生活習慣も含めた多因子への介入が必要と考えられる」と結論付けている。また、BSFSタイプが3~5であることが良好な睡眠に独立して関連していたことから、「便秘患者の便の性状を正常に近づける治療により、睡眠の質が向上する可能性があるのではないか」との考察を加えている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年11月15日
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