睡眠障害は慢性腎臓病進行のリスク因子か 睡眠の質と睡眠時間がCKD進行と関連

日本人の慢性腎臓病(CKD)患者では、睡眠の質が悪く、睡眠時間が適切でないとCKDが進行し、透析導入に至るリスクが高い可能性があることが、大阪大学キャンパスライフ健康支援センター講師の山本陵平氏らの研究で明らかになった。日本では透析患者は増加の一途をたどり、医療費増大の一因になっている。同氏らは「CKD進行のリスク因子として睡眠障害の可能性にも注目すべきだ。睡眠障害を含む生活習慣の是正により、透析導入に至るCKD患者の抑制につながる可能性がある」と述べている。詳細は「Clinical Journal of American Society of Nephrology」12月号に掲載された。

山本氏らは、2011年には同大学の職員約6,800人の健診データを用いた分析で、5時間以下の短時間睡眠が蛋白尿のリスク因子であることを報告している。その後、国内外の研究で、短時間睡眠などの睡眠障害はCKDのリスク因子であることが示されたが、保存期CKDの患者ではこれらの関連は明らかになっていなかった。そこで、山本氏らは、腎機能が低下しているCKD患者を対象に睡眠に関するアンケートを実施し、CKD進行と睡眠障害との関連を検討した。

対象は、国内多施設の外来CKD患者約3,000人を追跡しているCKD-JAC(Chronic Kidney Disease Japan Cohort)研究に参加し、研究開始時にピッツバーグ睡眠質問票に回答し、睡眠の質と睡眠時間を評価し得た患者1,601人。約4年間の追跡期間中の透析導入リスクを評価した。

その結果、睡眠の質が正常な患者に比べて、質が低い患者は透析を導入するリスクが約1.3倍であることが分かった。また、睡眠時間が約7時間の患者と比べて、5時間以下の短時間睡眠の患者と、8時間を超える長時間睡眠の患者はそれぞれ、透析導入となるリスクが約2.1倍および約1.5倍であることも明らかになった。

これらの結果を踏まえ、山本氏らは「睡眠の質が低いCKD患者と睡眠時間が適切でないCKD患者は、透析に至るリスクが高いことが明らかになった。睡眠障害の原因を特定し、適切な治療を行うことがCKD進行の抑制につながると期待できる」と結論づけている。また、諸外国と比較して日本人の睡眠時間は短いとされていることから、同氏らは「日本人の健康を増進し、医療費を削減するには、日常生活で十分な睡眠時間を確保することが重要だ」と述べている。

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HealthDay News 2019年1月7日
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