「喫煙、糖尿病、骨粗鬆症」で歯の喪失リスク増 教育歴や職歴なども関連、富山大

日本人の高齢者では、喫煙習慣と糖尿病、骨粗鬆症が歯を喪失するリスク因子である可能性があると、敦賀市立看護大学(福井県)の中堀伸枝氏と富山大学教授の関根道和氏らの研究グループが「BMC Public Health」6月4日オンライン版に発表した。富山県の高齢者を対象に実施した症例対照研究では、歯の喪失には、短い教育歴と肉体労働の職歴といった社会経済的因子が関連することも示されたという。
歯周病などの口腔衛生と食生活や喫煙などの生活習慣は、高齢者が歯を喪失するリスクを高めることが報告されている。しかし、日本人の高齢者を対象に、社会経済的因子と残存歯の関連を調べた研究は限られていた。そこで、関根氏らは今回、2014年に実施された「富山県認知症高齢者実態調査」のデータを用い、残存歯の有無と教育歴や生活習慣病などとの関連を調べた。

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同調査は、同県在住の65歳以上の高齢者1,537人を無作為に抽出し、同意が得られた1,303人(回答率84.8%)を対象としたもの。今回の研究では、歯を完全に喪失した275人と残存歯がある898人(対照群)の計1,173人を対象に分析した。
年齢や性などで調整して解析した結果、喫煙習慣がある人や糖尿病、骨粗鬆症がある人では歯の喪失リスクが高いことが分かった(調整オッズ比はそれぞれ4.05、1.72、1.88)。関根氏らによれば、喫煙習慣や糖尿病があると口腔内の免疫力が低下し、歯周病などの原因になることや、骨粗鬆症になると骨の強度が低下して歯の喪失につながりやすいといった理由が考えられるという。
また、高齢者の歯の喪失には、社会経済的因子も重要であることが明らかになった。教育歴が「10年以上」と長い人と比べて、「6年以下」と短い人では歯の喪失リスクが高かったほか、非肉体労働に就いていた人に比べて、肉体労働の職歴がある人ではそのリスクが高かった(調整オッズ比はそれぞれ3.07、1.93)。
高齢者の歯の喪失と社会経済的因子との関連について、関根氏らは「教育歴は歯磨きの回数や虫歯の本数に影響するとの報告があり、口腔衛生習慣の差が影響した可能性がある。また、肉体労働の職歴があると歯の喪失リスクが高まる背景には、交代勤務などの不規則な生活習慣の関与が考えられる」と説明。その上で、「歯の喪失は栄養不良の原因となり、高齢者のフレイル(虚弱)やQOL(生活の質)の低下につながりやすい。そのため、健康に老いるためには、小児期から高齢期にかけて生涯にわたる総合的な対策が重要になる」と述べている。
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