ナトリウム/カリウム比が脂質・糖代謝にも関連――国民健康・栄養調査の解析

 食事中のナトリウムとカリウム摂取量の比が、血圧ばかりでなく糖代謝や脂質代謝の指標とも関連することが報告された。医薬基盤・健康・栄養研究所の岡田恵美子氏、瀧本秀美氏らが国民健康・栄養調査のデータを解析した結果で、詳細は「British Journal of Nutrition」7月17日オンライン版に掲載された。

 ナトリウム(Na)は血圧を上昇させ、カリウム(K)は血圧を低下させるように作用するため、Na/K比は高血圧のリスクと相関することが知られている。ただし日本人での報告は少なく、また、高血圧以外の心血管疾患リスク因子(糖代謝や脂質代謝の指標)への影響は明らかになっていない。岡田氏らの研究はこの点を詳細に検討したもの。

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 2003~2017年の国民健康・栄養調査の20歳以上の参加者のうち、栄養摂取状況調査票の回答がない人や、血圧を下げる薬、コレステロールを下げる薬、インスリン注射または血糖を下げる薬を使用している人などを除外した4万8,800人(男性1万9,386人、女性2万9,414人)を解析対象とした。

 食事中のNa/K比の中央値は、男性1.85、女性1.70だった。2003~2017年にかけて、Na/K比は、男性で年率0.51%、女性は0.73%の有意な減少が観察された。

 対象者をNa/K比で五分位に分け、年齢や生活習慣などとの関連を検討すると、Na/K比が高い人は年齢が若く、喫煙・飲酒習慣がある人の割合が高かった。またNa/K比が高い人は、穀類、アルコール飲料、調味料などの摂取量が多く、豆類、野菜、果物、きのこ類、牛乳・乳製品などの摂取量が少ない傾向が認められた。

 続いて、年齢、BMI、喫煙習慣、飲酒量、身体活動量(歩数)、職業、タンパク質・飽和脂肪酸摂取量、調査年による影響を調整後、Na/K比と各検査値の結果との関連を検討。すると、Na/K比が高い人は、収縮期血圧や拡張期血圧が高いばかりでなく、糖代謝の指標であるHbA1cも高いという有意な関連が認められた。また、女性ではNa/K比が高いほどHDL-コレステロールが有意に低かった。

 次に、ロジスティック回帰分析により、Na/K比の第1五分位群(Na/K比が最も低い群)を基準に第5五分位群(Na/K比が最も高い群)の疾患との関連を検討すると、高血圧(140/90mmHg以上)のオッズ比が男性1.27、女性1.12、HbA1c高値(6.5%以上)のオッズ比が男性1.56、低HDL-コレステロール血症(40mg/dL未満)のオッズ比が男性1.17、女性1.50であり、それぞれ有意な有病率の上昇が認められた。なお、高non-HDL-コレステロール血症(170mg/dL以上)については男性、女性ともに、Na/K比との有意な関連が認められなかった。

 著者らは、本研究が横断研究であるため因果関係には言及できないと述べた上で、「食事中のNa/K比は、男性と女性の双方で高血圧、低HDL-コレステロール血症、および男性のHbA1c高値と関連していた。この結果は、カリウムを多く含む野菜や果物を意識して取るなどして、カリウム摂取量が少なくナトリウム摂取量が多い食生活を是正することが、日本人の心血管疾患リスク因子の予防に役立つ可能性があることを示唆している」とまとめている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2020年8月11日
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