大豆食品で膵臓がんのリスクが上昇か――JPHC研究

 大豆食品は、心血管疾患や一部のがんのリスクを下げることが報告されているが、膵臓がんに関しては別かもしれない。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究から、大豆食品の中でも非発酵性の食品は、膵臓がんのリスクを高める可能性のあることが報告された。詳細は「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」6月号に掲載された。

 がんの治療が進歩し、早期診断と早期治療により根治に至ることが増えている。しかし、膵臓がんは早期診断が難しく、診断後の予後はいまだに不良。そのため、発症予防につながる研究の必要性が高い。これまでの研究で、大豆食品が、乳がんなど一部のがんの発症リスクの低下と関連する可能性が報告されている。しかし、大豆食品と膵臓がんとの関連については報告が少なく、よく分かっていない。

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 今回の研究は、1995年と1998年に全国10カ所の保健所管轄区域に住んでいて、がんに罹患しておらず、食事アンケート調査に回答した45~74歳の9万185人を対象に行われた。これらの人たちを2013年まで追跡し、大豆食品の摂取量と膵臓がん罹患の関連を調査した。

 食事アンケート調査の結果を基に、総大豆食品、発酵性大豆食品、非発酵性大豆食品、個々の大豆食品(納豆、みそ、豆腐類)の摂取量を計算し、それぞれを四分位で4群に分類。がんの罹患に関連する可能性のある因子(年齢、性別、地域、肥満度、喫煙・飲酒・身体活動習慣、糖尿病の有無、膵臓がんの家族歴、コーヒー・魚類・肉類・果物類・野菜類の摂取習慣、総エネルギー摂取量)を統計学的に調整した上で、第1四分位群(摂取量が最も少ない群)を基準に、追跡期間(中央値16.9年)中における、その他の群での膵臓がん罹患リスクを比較した。

 まず、総大豆食品摂取量との関連を見ると、第4四分位群(摂取量が最も多い群)は膵臓がんの罹患リスクが有意に高く(ハザード比1.48、95%信頼区間1.15~1.92)、総大豆食品摂取量が多いほど膵臓がんのリスクが高いという有意な関連が認められた(傾向性P=0.007)。また、非発酵性大豆食品(豆腐類、高野豆腐、油揚げ、豆乳)の摂取量との関連も有意で(傾向性P=0.008)、第3四分位群と第4四分位群で有意なリスク増大が認められた。その一方で、発酵性大豆食品(納豆、みそ)の摂取量と膵臓がんリスクの間には、有意な関連が見られなかった(傾向性P=0.982)。

 次に、個々の大豆食品の摂取量との関連を見ると、豆腐類はその摂取量が多いほど膵臓がんリスクが高いという有意な関連が認められたが(傾向性P=0.007)、納豆(傾向性P=0.715)やみそ(傾向性P=0.667)の摂取量との関連は見られなかった。

 総大豆食品摂取量が多いと膵臓がん罹患リスクが高くなる理由について、研究グループは「よく分かっていないが、動物実験からは非加熱大豆飼料を与えられた動物で下痢や膵臓の腫れが見られたと報告されており、また大豆に含まれるトリプシンインヒビターなどの消化酵素阻害成分による消化酵素や消化管ホルモンへの影響などが考えられる」という。

 一方、欧米の疫学研究では今回の研究結果と相違し、インゲン豆、レンズ豆、エンドウ豆、大豆などを含むマメ科植物の摂取が、膵臓がんのリスク低下と関連することが示唆されている。この点については、「豆類の種類による含有栄養成分の違い(インゲン豆、レンズ豆、エンドウ豆は大豆に比べ炭水化物が多く脂質が少ないのに対して、大豆はタンパク質や脂質が多い)や、観察期間が欧米の研究(6~8.3年)より長いことなどにより、異なる結果になったと考えられる」としている。

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HealthDay News 2020年7月6日
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