肩こりと腰痛が両方ある人はQOLがより低下している――弘前大

 肩こりや腰痛に悩まされている人は少なくない。いずれも生活の質(QOL)を低下させるが、両者が併存している人のQOLは、より大きく低下していることをデータとして明らかにした研究結果が報告された。弘前大学大学院医学研究科整形外科の熊谷玄太郎氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Musculoskeletal Disorders」に1月5日掲載された。

 厚生労働省の「国民生活基礎調査」から、日本人の有訴者率(自覚症状を訴える人の割合)の高い症状の上位2位は、肩こりと腰痛の二つであることが分かっている。これらそれぞれの症状とQOLの低下との関連については既に報告されているものの、両者が併存する頻度や、併存した場合にQOLにどのような影響が現れるかは調査されていない。

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 熊谷氏らが行った研究の対象者は、同大学と弘前市などで行っている地域住民対象コホート研究「岩木健康増進プロジェクト」の参加者のうち、関節リウマチや脊椎疾患などのある人を除いた1,122人(平均年齢54.2±15.4歳、男性38.0%、BMI22.7±3.4 kg/m2)。

 過去3カ月間の肩こりや腰痛の症状の有無を質問したところ、両者いずれもない人が31.8%、肩こりのみが22.5%、腰痛のみが16.2%であり、両者が併存している人が29.4%と約3割を占めていた。また、VASスケール(痛みなしが0、想像できる最大の痛みが100)で評価した痛みの強さは、肩こりは男性36.2±23.0、女性37.4±22.0、腰痛は同順に31.0±21.1、31.6±19.8だった。

 本研究では痛みに影響を及ぼす因子の検討、および、痛みの程度とQOLを前記4群で比較検討した。QOLの評価には、身体的側面と精神的側面の双方をスコア化する「SF-36」という指標を用いた。

 まず、身体的な痛みのスコア(VASスケール)と関連する背景因子を検討すると、高血圧である場合や、降圧薬・鎮痛薬・睡眠薬を服用している場合に、肩こりや腰痛の症状が弱い(VASの値が小さい)という有意な関連が認められた。重回帰分析により、これらの因子と年齢、性別、BMIなどで調整後、肩こり(β=-0.073)と腰痛(β=0.143)はそれぞれが独立して痛みの強さと相関し、両者が併存する場合(β=0.243)は、それぞれ単独で存在する場合よりも相関が強いことが分かった。

 SF-36の評価との関連については、男性で肩こりと腰痛が併存している群では、精神的QOL(MCSスコア)が他の全ての群(肩こりのみの群、腰痛のみの群、症状のない群)よりも有意に低いことが明らかになった。また、女性では、身体的QOL(FCSスコア)は腰痛のみの群が最低だったが、併存群は2番目に低い値で、肩こりのみの群や症状のない群よりも有意に低値だった。さらに女性のMCSスコアは、併存群が最も低く、腰痛のみの群や症状のない群との間に有意差が存在した。

 まとめると、肩こりと腰痛の併存は、男性と女性双方のメンタルヘルス状態の悪化と関連しており、女性では身体的QOLが低いこととも関連していた。この結果について著者らは、「肩こりと腰痛が併存する場合、身体的・精神的QOLへの影響がより大きいと考えられる」とした上で、「この知見は、非特異的な肩こり・腰痛の予防や、QOL低下を来す疾患の鑑別に援用できるのではないか」と述べている。

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HealthDay News 2021年2月15日
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