マイカー通勤をやめると体重増加が止まる

食事や運動に気を付けていないと、年齢を重ねるごとに体重が増えていきがちなもの。しかし、通勤手段を変えるだけでも体重増加を抑制できることが、約3万人の日本人を5年間追跡した国立国際医療研究センターの研究結果から明らかになった。通勤手段の違いによるBMIへの影響力は、余暇や仕事中の身体活動の多寡にかかわらず認められたという。帝京大学大学院公衆衛生学研究科の桑原恵介氏らによる論文が、「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」オンライン版に11月6日掲載された。
国立国際医療研究センターでは、企業十数社の従業員約10万人を対象とした職域多施設研究「J-ECOHスタディ」を行っている。今回の研究はJ-ECOHスタディのサブコホートとして実施された。調査対象は、2006~2010年度にかけて定期健康診断を受診しており、通勤手段の情報が得られた30~64歳の2万9,758人(43.2±8.2歳、男性86.7%)。

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全体を通勤手段で以下の4グループに分け、BMIの変化を5年間追跡した。1.ベースライン時点と5年後の両時点ともにマイカー(自動車やバイク)通勤の群(1万4,704人)、2.公共交通機関または徒歩・自転車からマイカー通勤に替わった群(2,485人)、3.マイカー通勤から公共交通機関または徒歩・自転車に替わった群(2,359人)、4.両時点とも公共交通機関または徒歩・自転車の群(1万210人)。
5年間で対象者のBMIは平均0.12増加していた。各グループのBMIの変化を、喫煙・飲酒・運動習慣、睡眠時間、勤務中の身体活動、交代勤務や残業状況、職位の変化など、BMIへの影響が考えられる因子で調整した上で比較すると、次のような関係が見いだされた。
5年間のBMI変化が最も少なかったのは、4の公共交通機関または徒歩・自転車による通勤を維持した群で、BMIは0.01の増加にとどまっていた。2番目に変化が少なかったのは、3のマイカー通勤から公共交通機関または徒歩・自転車に替わった群で、BMIは0.10増加していた。3番目は1のマイカー通勤を維持した群、最も大きく変化していたのは2の公共交通機関または徒歩・自転車からマイカー通勤に替わった群で、BMIはそれぞれ0.19、0.24増加していた。
続いて、余暇において運動を、継続して行っている/いない、5年の間に行うようになった/行わなくなった、という条件を追加して分析。すると、運動を継続していたり新たに始めた人たちはBMIの増加が抑制される傾向が見られたが、こうした運動習慣の違いにかかわらず公共交通機関または徒歩・自転車を使って通勤している人の方がBMIの上昇が少なかった。
同様に、勤務内容を座業か否かで分け、それが維持された場合と変化した場合を加味した分析においても、座業から新たに勤務時に体を動かすようになった人たちはBMIの増加が抑制される傾向が見られたが、やはりいずれの勤務内容でも通勤手段の違いによる影響が認められた。
研究グループでは、「マイカー通勤を徒歩や自転車といったアクティブな手段または公共交通機関に切り替えることで体重の増加が抑えられることが示された。日常的に体をあまり動かさない人はもちろんだが、体をよく動かす人でもアクティブな通勤手段によって体重増加が抑制される」とし、「労働者の健康増進や疾病予防のため、社員のこのような取り組みを後押しする役割が企業に期待される」と述べている。
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