流行は冬だけじゃない!溶連菌(ようれんきん)感染症とは?

溶連菌について

溶連菌感染症の患者数が増加してます。そもそも溶連菌とは何なのか?そして、どのように予防し向き合っていくべきなのかをお伝えできればと思います。
  1. 1. はじめに
  2. 2. 溶連菌(ようれんきん)とは
  3. 3. 溶連菌感染症の感染経路と病原因子
  4. 4. 溶連菌感染症の症状
  5. 5. 紫斑の出現から消失まで
  6. 6. 溶連菌感染症の予防と治療法
  7. 7. まとめ

はじめに

溶連菌は小さな子供が感染しやすいことから、子供の健康管理をきっかけに知ることが多いようです。
子供を持つ家庭において一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
この菌、実は大人にも感染することがあるのです。
しかも、放っておくと良くならないことがあります。

そんな、溶連菌の実態については分からないことも多いはずです。
この記事ではそんな溶連菌について説明していきます。

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溶連菌(ようれんきん)とは

溶連菌と呼ばれるものは略称で、正式には溶血性連鎖球菌といいます。 
通常、化膿レンサ球菌という細菌を指していることが多いです。

この菌は毒素を産生して、血液中の赤血球の壁を溶かすように壊す、という特徴があります。
また顕微鏡で観察した時に、球形の菌が連鎖上につらなって見えます。
このことから『溶血性』の『連鎖』している『球形』の菌、ということで溶血性連鎖球菌という名前がついています。

溶連菌は、2015年に溶連菌感染症の患者数は過去10年間で最高数に達したとされています。
溶連菌のうちA群β溶血性連鎖球菌と言われる菌は、人に対する病原性細菌であると古くから認識されています。以前は、感染時の発熱が軽度であることが多かったことから、抗生物質での管理も必要ないとされていました。
しかし、1980年代から敗血性ショック症状など非常に重い症状も欧米で報告され始めます。

溶連菌は菌体そのものの感染も問題ですが、菌体を認識している免疫反応の異常や、産生する毒素も病原因子となります。つまり、菌の感染だけでなく産生される毒素も問題となることが多いのです。

実は種類も多岐にわたっているのがこの溶連菌です。
分類方法としては、タンパク質の種類によって区別されています。
現在ではランスフィールド抗原分類法と呼ばれる方法を用いて、タンパク質の構造(菌体表層分子のMタンパク質)で分類しており、100種類以上のMタンパク質が確認されています。

また、初期症状は呼吸器症状と発熱です。
連菌感染症は学校保健安全法に定められる感染症です。
適切な治療が開始されてから24時間以内は登校することができません。
溶連菌感染症のピークは冬だけではありません。
感染のピークは初夏と冬の一年に2回です。

特に冬はインフルエンザや感染性腸炎の流行時期でもあります。
冬期の発症にはこれらのウイルスと混合感染を起こすこともあります。
溶連菌に対するワクチンは存在しないため、手洗いやうがいとマスクの着用で感染拡大を防ぎましょう。

家庭では溶連菌で汚染された食品や水も感染源となるので注意が必要です。
食器の殺菌やタオル、浴槽の共有を控えることが必要です。

溶連菌感染症の感染経路と病原因子

溶連菌は、ヒトのくしゃみや咳などによって飛び散るしぶきによって鼻や喉の粘膜に感染します。

これは飛沫感染と呼ばれており、主に上気道に感染します。

また、手指などを介して感染する接触感染が主な感染経路です。

溶連菌が悪さをする病原因子には2種類あります。
それが、菌体表層分子と酵素です。

表層分子と言われるMタンパク質が人の角質細胞に接着されることで悪さをします。
またMタンパク質の構造の違いによって、溶連菌の血清型を決めています。

酵素には、ストレプトリジンというのがあります。
このストレプトリジンが赤血球の細胞膜を破壊する毒素でもあります。
これが悪さをしています。

ストレプトリジンにも種類が2つあります。
ストレプトリジンOとストレプトリジンSです。

このストレプトリジンが多いことで症状が悪化するので、抗ストレプトリジン抗体価(ASLO)と言う値の上昇が溶連菌感染症の回復の指標となっています。
これはストレプトリジンが体の中で抑えられてきたこと意味します。

こんなことから手洗いうがいが大切なのです。
またくしゃみや咳も感染することがあるので、エチケットを心がけましょう。

溶連菌感染症の症状

溶連菌の症状と言っても様々な反応があります。
ポイントは2つです。

溶連菌(化膿レンサ球菌)の悪さをする物質(病原因子)が病原性を発揮する直接作用。
溶連菌に対する免疫反応。

以上の2つの点により症状が決まってきます。

化膿レンサ球菌の病原因子は上記に記載しましたが、中でも重症化が危惧されるのは毒素です。

毒素性ショック症候群(TSS)は化膿レンサ球菌の毒素に対するアレルギー反応です。

アレルギー反応として有名なのが猩紅熱(scarlet fever)です。
皮疹を併発し、紫斑が出現する場合もあります。

重症例ではショック状態に陥り、多臓器不全を起こします。

ポイントは、悪さをする毒素を取り除くことにあります。
溶連菌自体を抑制しても治療効果はなく、ガンマグロブリンや透析によって血液から毒素を浄化します。

また、急性扁桃炎は扁桃腺に感染した化膿レンサ球菌によって、発熱や咽頭痛を生じるものです。

発熱や喉の痛みも辛いですが、アレルギー反応が一番怖いので注意が必要です。

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紫斑の出現から消失まで

斑は皮膚疾患などで見られる皮疹の1つで、紅斑、白斑、色素斑そして紫斑という種類があります。

紫斑は出血傾向があります。
血管から漏れ出た赤血球が、皮膚や粘膜の下に出現し溶血して紫色に見えています。

紫斑が出現するのは感染症による血管炎や血管の脆弱性、閉塞などが原因で赤血球が皮内に漏出し、溶血した状態を示しています。

紫斑は次第に褐色がかった黄色になり、通常は2,3週間で消失します。

紫斑は体の出血傾向を示すサインでもあります。
皮膚での紫斑は内臓での出血傾向の可能性も示唆されるので注意が必要です。

溶連菌感染症の予防と治療法

溶連菌は常在菌であるために、完全な感染対策はどうしても困難です。

ポイントは感染部位である咽頭や扁桃で菌を増殖させないことです。

そのためには手洗いとうがいなどの基本的な対策が重要です。
家族やクラスメイトに感染の疑いがある人がいるときは特に気をつけましょう。
また、飛沫感染であることからマスクの着用も効果的です。

飛沫や手指で汚染された食品も感染源となります。
食器やタオルから感染が起こることも多いので、工夫が必要です。
場合によっては入浴で感染することもあります。

治療はペニシリン系の抗生物質を投与するのが一般的です。
服用後は解熱に続いて痛みの緩和が現れます。

普通の風邪とは異なり、放っておいても良くならないので早めに病院を受診しましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか?

流行しやすい季節もあることから早めの対策を立てましょう。
常在菌として常にある溶連菌ですが、手洗いうがいをこまめに行い予防していくのが基本です。
咳やくしゃみなどをするときはなるべく人に離れてする、そして必ず口や鼻を塞ぐ。
こんなこともみんなでエチケットを守ることにより予防の一歩に繋がります。

流行る季節には特に対策をしっかりと実行しましょう。

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