COVID-19によるストレスは学歴で異なる――日本人従業員での検討

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによるメンタルヘルスへの影響は、学歴によって異なる可能性が報告された。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野の佐々木那津氏、川上憲人氏らがオンライン調査により明らかにしたもので、研究の詳細は「Journal of Epidemiology」に11月7日掲載された。

 2020年2~4月に発生した国内でのCOVID-19パンデミック第1波の際に、所得の低い人たちで心理的ストレスがより増大したことが別の研究で報告されている。また、自殺者数の推移を見ると、2~6月は前年比で平均10%以上少なかったが、8月に急増した。佐々木氏らはこの変化を、パンデミック第2波(6~8月)によって、地域社会におけるメンタルヘルスの悪化が蓄積した表れではないかと推測。この仮説を確かめるために、国内企業の正規雇用社員を対象に行った縦断的調査の結果を解析し、パンデミック第1波から第2波までの人々の心理的ストレスを評価、学歴との関連を検討した。

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 解析の基礎データとした調査は、オンラインによりこれまで3回行われている。初回は3月19~22日に実施され、1,448人が回答。失業者を除外し、5月22~26日に2回目、8月7~12日に3回目の調査が行われた。3回の調査の全てに回答した正規雇用社員は1,275人だった。

 心理的ストレスは、各調査を行った時点から過去30日間の状態を、18項目からなる質問(Brief Job Stress Questionnaire;BJSQ)に回答してもらい評価した。なお、BJSQスコアの合計は18~72点の間で、点数が高いほどストレスが強いことを意味する。

 全対象者を学歴により、16年以上の群(668人)と未満の群(607人)とに二分した。学歴の長い群は短い群に比べて、男性が多く(60.0対40.4%)、年齢が若く(40.0±10.2対43.2±10.6歳)、既婚者が多く(54.5対47.0%)、大企業での就業者が多い(勤務先が従業員数1,000人以上の企業の割合が41.1対24.5%)などの点で、群間に有意差が見られた。

 年齢階級、性別、婚姻状況で調整後のBJSQスコアは、学歴が長い群の初回調査は41.3±0.4、2回目の調査は40.9±0.5、3回目は41.5±0.5だった。一方、学歴の短い群では同順に、41.2±0.5、41.7±0.5、42.6±0.5だった。統計解析の結果、学歴が短いことは、初回調査から3回目の調査までの間のBJSQスコアの増加と有意に関連していることが明らかになった〔固定効果1.26(95%信頼区間0.28~2.24)、P=0.012〕。

 この結果を著者らは、「COVID-19パンデミック第2波の収束までの間に、学歴の短い会社員の心理的ストレスが悪化したことを示唆するもの」と述べている。またその理由を以下のように考察している。まず、学歴が短い人はテレワークに変えられない職業に就いていたり、予防に関する信頼できる情報へのアクセスの機会が限られていたりする可能性が高い。また、感染防御策が不十分なことの多い中小企業に勤務している割合が高く、社会経済の悪化による負荷を被りやすいと考えられる。これらの要因によって、ストレスが増大しやすいことが想定されるという。

 一方、本研究の限界点として、世帯収入や自宅の所有権(持ち家か賃貸か)を調査しておらず、さらに調査対象が正規雇用社員のみであることを挙げ、「この結果を一般化できるとは限らない」としている。その上で、日本では低学歴が自殺リスク因子の一つであるとされていることから、「学歴の短い人のCOVID-19による精神的ストレスの軽減のため、信頼でき理解しやすい感染予防情報や、財政的支援を得るための情報などを提供していく必要がある」とまとめている。

 なお、1人の著者は、情報処理関連企業などとの利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年1月4日
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