脳卒中後の抗血小板薬による出血リスクを予測する10の因子

脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)の患者に再発予防のために投与される抗血小板薬には出血リスクがある。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのNina Hilkens氏らは、過去に発表された6件の臨床試験のデータに基づき脳梗塞やTIA患者の出血リスクを予測する10の因子を特定し、抗血小板薬による出血リスクを評価するモデルを開発した。
脳梗塞やTIAを経験した患者の多くは、再発予防のために血栓ができにくくする抗血小板薬などの抗血栓薬を使用する。しかし、抗血栓薬には出血リスクがあり、出血が起こると障害や死亡に至る可能性もある。

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そこでHilkens氏らは今回、再発予防のために抗血小板療法を受けている脳梗塞やTIAを経験した患者の出血リスクを予測するモデルを開発するため、抗血小板薬の臨床試験6件に参加した計4万3,112人のデータを統合して解析した。このうち1,530人で大出血イベント(頭蓋内出血または出血による死亡、入院、障害)が発生し、大出血リスクは最初の1年間で1.9%、3年間では4.6%であることが分かった。
大出血リスクの予測因子は(1)男性、(2)喫煙、(3)抗血小板薬の種類(ジピリダモールとの併用の有無を問わないアスピリンの使用、あるいはアスピリン+クロピドグレルの使用)、(4) 中等度以上の障害(modified Rankin Scale3以上)、(5)脳卒中の既往、(6)高血圧、(7)低BMI、(8)高齢、(9)アジア系人種、(10)糖尿病―の10因子で、最も強いリスク予測因子は年齢であることが分かった。
大出血リスクはリスク因子がない45~55歳の患者では2%だったが、複数のリスク因子がある75~85歳では10%超と、年齢によって大きな開きがあった。解析対象の4万3,112人の大出血リスクを今回開発されたモデルにより評価した結果、2万3,678人が「低リスク」に、1万6,621人が「中等度リスク」に、2,813人が「高リスク」に分類された。
今回、加齢に伴い出血リスクが上昇することが分かったが、この結果についてHilkens氏は「脳梗塞やTIAの高齢患者が増えていることを踏まえると注目すべきもの。脳卒中の約30%は80歳以上の患者で発症している」と説明している。また、「このモデルは大出血リスクが高い患者を特定するには有用だが、抗血小板薬の選択における指針とすることは想定していない」と強調。「抗血小板療法では、常に出血リスクと脳卒中再発リスクとのバランスを考慮する必要がある」としている。
この研究結果は「Neurology」8月2日オンライン版に掲載された。

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