「砂糖に心疾患やがんのリスク」業界団体がデータ隠蔽か


内部文書の分析に基づきこの論文を執筆した米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のStanton Glantz氏らは「喫煙の害を示す研究結果を大手たばこ企業がもみ消した事例と共通した問題だ」としている。
Glantz氏らは今回、1967~1971年に砂糖研究財団(Sugar Research Foundation ; SRF、現・砂糖協会)による資金提供を受け英バーミンガム大学の研究者らが実施した「プロジェクト259」と呼ばれる研究に関する内部文書を分析した結果を発表した。
この研究では、ラットにショ糖とでんぷんのいずれかが多く含まれた餌を与えたところ、ショ糖を与えたラットではでんぷんを与えたラットと比べ、心疾患リスクと強く関連するトリグリセライド値(中性脂肪)が上昇し、当時から膀胱がんとの関連が指摘されていたβ-グルクロニダーゼと呼ばれる酵素の値も上昇する可能性が示唆された。
しかし、研究者らがこれらの予備データをSRFに提示したところ、研究を続けるための資金提供が打ち切られてしまったという。
また、この予備データはその後公表されることはなかった。

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「研究者たちは砂糖の有害性を示唆するデータを彼ら(SRFの関係者)に示し、『研究を終わらせるにはあと数週間必要だ』と説明した。
ところが彼らはデータを見て『その必要はない』と回答し、全てをなかったことにした」とGlantz氏は話す。同氏は「この研究データは砂糖の取り過ぎと心血管リスクとの関連について解明を進める一助となったはずだが、業界団体はそれを求めていなかった」との見方を示している。
なお、プロジェクト259が実施された当時、米食品医薬品局(FDA)は砂糖の含有量が多い食品に対して規制を強化するかどうかを検討中であった。
論文の筆頭著者であるUCSF のCristin Kearns氏は「この結果が公になっていれば、砂糖はもっと厳しく監視されていた可能性がある」としている。
一方、今回Glantz氏らがまとめた論文について、砂糖協会は「プロジェクト259は進捗が大幅に遅れ、予算も超過していた」と説明。
「砂糖協会は設立当初から一貫して科学研究と技術革新を尊重してきた。現在も消費者の食習慣における砂糖の役割について理解を深めるための研究支援に尽力している」としている。
米レノックス・ヒル病院で減量プログラムを実施しているSharon Zarabi氏は、Glantz氏らの報告を受け「われわれが何を食べるべきかを示す政府のガイドラインが、食品業界のロビイストによって左右されている実態が明らかになった」とコメント。
特定の食品の摂取を支持する研究の多くが業界の資金援助によるものであることを指摘している。

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