労災認定された自殺者の過半数が精神障害発症30日以内の既遂

 労災認定された自殺者の生前の就労状況を詳細に検討した研究結果が報告された。業務に伴う精神障害を発症後30日以内に既遂に至った人が過半数を占めることや、時間外労働時間の変化は4つのクラスターに分類され、職位・職種や業種によってその傾向が異なることなどが明らかになった。労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の西村悠貴氏らの研究によるもので、「International Archives of Occupational and Environmental Health」に9月25日、論文が掲載された。

 この研究は、同研究所の過労死等防止調査研究センターが管理している、労災認定された自殺者の全国規模のデータベースを用いて行われた。なお、精神障害が労災認定されるのは、発症前6カ月間に業務上の深刻なイベント(生死にかかわるような極めて強いストレスの生じる事象、または極端な長時間労働)があった場合であり、そのほかに、事故や災害の経験、業務上の失敗や過剰な責任の発生、仕事の量や質・職位の変化、対人関係、セクハラ・パワハラなどが影響している場合に認定されることがある。

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 2015年4月~2017年3月の2年間に、労災認定された精神障害は970件あり、このうち自殺既遂は167件で、その97.0%(162人)は男性だった。精神障害の大半(156人、93.4%)は、「気分(感情)障害」が占めていた。そのほかには、「神経症、ストレス関連、身体表現性障害」が8人(4.8%)、「統合失調症型障害及び妄想性障害」が3人(1.8%)だった。

 業種別に見ると、自殺者数が最も多いのは製造業で34人、2位は建設業の29人。自殺者数が多く、かつ発生率も高い業種としては、科学/技術関連サービス業(17人、100万人当たり4.83人)が挙げられる。職位・職種別に見ると、自殺者数では専門職・エンジニアの67人が最も多く(発生率は100万人当たり2.89人)、次いで管理職の25人であり、後者は発生率が最も高かった(同8.22人)。

 精神障害の発症時の平均年齢は40.1歳±10.2歳、自殺時の年齢は40.4±10.2歳だった。過半数の51.5%(86人)は、精神障害の発症から自殺までの日数が30日未満であり、30~89日が21.0%(35人)で、合計すると発症から89日以内に72.5%(121人)が既遂に至っていた。

 精神障害を発症する前の時間外労働時間をクラスタリング手法によって分類したところ、以下の4つのクラスターに大別できた。(1)慢性的に長時間の時間外労働が続き発症に至った群(30人)、(2)時間外労働時間が漸増し発症に至った群(43人)、(3)時間外労働時間が短期間に急増し発症に至った群(40人)、(4)時間外労働時間はそれほど多くなかった群(45人)。自殺前6カ月間の平均時間外労働時間は、同順に132.0±18.7時間/月、87.7±11.6時間/月、53.3±13.3時間/月、36.1±19.8時間/月だった。

 この4パターンの分布を業種や職位・職種で比較すると、管理職者はクラスター(1)や(2)に該当し、極端な長時間の時間外労働が記録されていたケースが多かった。一方、専門職・エンジニアはクラスター(2)に該当するケースが多かった。また、対人関係によって精神障害が発症し労災認定されていた場合は、クラスター(4)に該当するケースが多かった。

 著者らは本研究を、「自殺の背後にある就労状況をクラスタリング手法により客観的に検討した初の研究」と位置付け、「精神障害が発症する前の時間外労働パターンは、症例ごとに大きく異なっていた。時間外労働時間の“多さ(量)”だけでなく、時間外労働時間の推移や“その発生要因”を考慮することで、長時間労働とメンタルヘルスとの関連について、より深い洞察が可能となる」と述べている。その上で、「労働者の自殺予防のために、慢性的な長時間労働や時間外労働時間の漸増・急増、および対人関係への対策の必要性が明らかになった」と総括している。

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HealthDay News 2021年10月25日
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