微量蛋白尿はがん死のリスク因子の可能性――特定健診データの解析

 尿の中にわずかな蛋白質が現れている状態が、がん死のリスクと関連のあることが分かった。奈良県立医科大学腎臓内科の松井勝氏らが、特定健診のデータを解析して明らかにしたもので、詳細は「Scientific Reports」に8月19日掲載された。

 蛋白尿は、心疾患のリスクと互いに相関することが知られており、心疾患進行予防のために蛋白尿を早期発見することの重要性が広く認識されている。それに対して、がんとの関連で蛋白尿の影響を検討した研究は少なく、これまでのところ蛋白尿はがんリスク因子として見なされていない。両者の関連性を示唆する研究も報告されているが、一貫した結論は得られていない。

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 松井氏らは、特定健診の大規模データを縦断的に解析し、蛋白尿とがん死リスクの関連を検討した。がん死については死亡診断書のデータベースから把握した。

 解析対象は、2008~2011年の7都道府県の特定健診受診者のうち、データ欠落のない37万7,202人。年齢は中央値64歳(四分位範囲58~69)、男性が44%。ベースライン時の尿蛋白レベルは、陰性が85.5%を占め、微量蛋白尿(±)が8.5%、軽度蛋白尿(1+)4.1%、中等度~重度蛋白尿(2+以上)2.0%だった。

 中央値3.7年の追跡期間中に5,979人が死亡し、このうち3,056人ががん死であり、がんによる死亡率は10万人年当たり21.7だった。がんによる死亡者の割合をベースライン時の尿蛋白レベル別に見ると、陰性では0.8%で10万人年当たりの死亡率は20.0であり、微量蛋白尿では同順に0.9%、26.8、軽度蛋白尿では1.3%、40.5、中等度~重度の蛋白尿では1.5%、48.7となった。

 解析結果に影響を及ぼす可能性のある因子(年齢、性別、BMI、現在の喫煙、飲酒量、収縮期血圧、eGFR、HbA1c、LDL-コレステロール、AST)を調整後、ベースライン時点で蛋白尿陰性であった群を基準に、他の尿蛋白カテゴリーのがん死リスクを比較すると、微量蛋白尿であっても有意にがん死リスクが高いことが明らかになった。

 具体的なハザード比(HR)は以下の通り。微量蛋白尿HR1.16(95%信頼区間1.03~1.31)、軽度蛋白尿HR1.47(同1.27~1.70)、中等度~重度蛋白尿HR1.61(同1.33~1.96)。この関係は、年齢、性別、BMI、喫煙、飲酒、高血圧、糖尿病、脂質異常症、eGFRによって層別化したサブグループ解析でも同様に認められ、それぞれの群間の交互作用は有意でなかった。

 がんの種別に見ると、尿蛋白レベルが軽度以上の場合、血液がん、泌尿器がん、消化器がんのリスク上昇と関連が見られた。微量蛋白尿では、血液がんのみHR1.59(同1.09~2.31)と、有意なリスク上昇が認められた。

 この結果から著者らは、「一般集団において、蛋白尿はそのレベルが微量であってもがん死リスクの上昇と有意に関連している。微量蛋白尿が認められた場合、心疾患のみでなくがんのスクリーニングも必要である可能性が示唆される」とまとめている。

 なお、微量蛋白尿とがん死リスクの関連のメカニズムとして著者らは、微量蛋白尿は全身の炎症状態や血管内皮機能が低下した状態を表しており、それらに関連のある血管新生因子などのサイトカインががん細胞の浸潤やがん転移を容易にする可能性を挙げている。

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HealthDay News 2021年10月4日
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