フレイルとBMIにU字型の関係――亀岡スタディ

 フレイルの有症率はBMIが低くても高くても上昇することが、日本人対象の研究から明らかになった。国立健康・栄養研究所身体活動研究部の渡邉大輝氏らが「Journal of Clinical Medicine」5月6日オンライン版に報告した。

 フレイルとは、さまざまなストレスへの耐性が低下した「要介護予備群」の状態で、死亡リスクの上昇とも関連する。フレイルの有症率は加齢に伴い上昇するが、BMIとはU字型の関係があるとのデータが海外から報告されている。ただしBMIの分布は人種や民族によって異なり、日本人でもそのような関係があるかどうかは明らかでなかった。

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 渡邉氏らの研究は、京都府亀岡市で2011年から継続中の高齢者を対象とした外傷予防と介護予防を推進・検証するための前向きコホート「亀岡スタディ」のデータを横断的に解析したもの。ベースライン調査の回答者から要支援・要介護認定者などを除いた1万1,985人のうち、調査票の回答を元にフレイル判定が可能で、BMIが14未満または40以上の人を除いた7,191人を対象とした。平均年齢は73.4±6.2歳で、女性が52.7%を占めた。

 BMIは以下の六つのカテゴリーに分類した。18.5未満(7.8%)、18.5~19.9(10.9%)、20.0~22.4(30.5%)、22.5~24.9(30.8%)、25.0~27.4(14.0%)、27.5以上(5.9%)。平均BMIは22.7±3.5だった。

 フレイルは、Friedらの表現型モデル(FPモデル)では5点中3点以上、厚生労働省の基本チェックリストでは25点中7点以上とそれぞれ定義した。その結果、フレイル有症率は、FPモデルでは15.2%、基本チェックリストでは36.6%だった。

 BMIカテゴリーごとのフレイル有症率を見ると、FPモデルでは、前記のカテゴリー順に、25.3%、19.6%、14.3%、12.4%、12.6%、19.4%であり、BMI22.5~24.9の群を底値として、U字型の関係が認められた。基本チェックリストで判定した有症率は、同順に55.5%、37.7%、34.2%、32.6%、34.3%、49.2%であり、やはりBMI22.5~24.9の群を底値とするU字型の関係が見られた。

 続いて、ロジスティック回帰分析により、フレイルの有症率に影響を及ぼす可能性のある因子(年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、身体活動量、学歴、服用している薬剤の数、高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・心臓病の既往、家族構成、経済状態、義歯の使用など)で調整後のオッズ比を、BMI22.5~24.9の群を基準として比較した。

 FPモデルのフレイル判定による結果は、BMI18.5未満でオッズ比(OR)2.04(95%信頼区間1.58~2.63)、同18.5~19.9でOR1.69(1.33~2.14)、同20.0~22.4でOR1.16(0.96~1.41)、同25.0~27.4でOR1.00(0.78~1.27)、同27.5以上でOR1.54(1.15~2.07)と、低体重者と肥満者の双方で有意なリスク増大が認められた。基本チェックリストの判定に基づいた検討結果も、ほぼ同様のU字型関係が認められた。

 フレイル有症率のオッズ比が最も低いBMIは、FPモデルの場合24.7〜25.7、基本チェックリストでは21.4〜22.8だった。

 今回の研究では、基本チェックリストのチェック項目に含まれている手段的日常生活動作(食事や排泄などの基本的日常生活動作よりも高次に当たる、家事や買い物などの生活機能)や抑うつ症状とBMIの関連についても検討を加えた。その結果、フレイルの有症率と同様にBMIが低くても高くても手段的日常生活動作が低下し、うつ症状のスコアは上昇するというU字型関係が認められた。また、BMIが低いことは口腔フレイル、社会的フレイルの有症率の高さと関連し、一方、BMIが高いことは身体的フレイルの有症率の高さと関連していた。

 これらの結果から著者らは、「日本人高齢者におけるフレイル有症率とBMIのU字型の関係が明らかになった」と結論づけるとともに、「日本を含め、低体重と肥満という栄養障害の二重負荷が進行している国では、フレイルの増加を防ぐためにもその対策を推進すべきと考えられる」と述べている。また、国立健康・栄養研究所では現在、大阪府と連携し「働く世代からのフレイル予防」の実現を目指した取り組みを進めているが、「本研究成果はその取り組みを推進するための貴重なエビデンスとなる」としている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2020年6月29日
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