‘うま味’の味覚感度が低いと太りやすい――日本人対象の縦断研究

食べ物の‘うま味’を感じとる味覚感度と、肥満や摂取エネルギー量との関係が報告された。うま味に対する感度が低い人には肥満者が多く、かつ、将来的に摂取エネルギー量が増加する人の割合が高いという。山陰労災病院循環器科の水田栄之助氏らの研究によるもので、詳細は「Hypertension Research」に12月7日掲載された。
この研究の対象は日本人成人47人(男性14人、女性33人。平均年齢は37.4歳)。下記の味覚検査や体重計測、血液検査などを実施し、その9~12カ月後にも体重計測や血液検査を行い、初回の味覚検査の結果との関連を検討した。なお、糖尿病患者、および、味覚に影響を与えるとの報告のある薬剤が処方されている患者は、対象に含まれていない。

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味覚感度の検査方法は、甘味と塩味については専用の試薬を用いて判定した。うま味に関しては、グルタミン酸ナトリウム(味の素)を0.03%に希釈した液体1mLを口に含んでもらい、味を感じとれるか否かで判定した。その他、「甘いもの/塩辛いものは好きか?」との質問に、「嫌い」「好きでない」「どちらとも言えない」「好き」「大好き」の五択で回答してもらい、味の好みを評価した。また、24時間思い出し法にて、ふだんの食事内容を把握した。
初回の検査結果を基に、うま味を感知できなかった「低感度群」(22人)と感知できた「対照群」(25人)の2群に分類。年齢と性別で調整した上で、両群を比較した。
すると、肥満者の割合(36.4対8.0%、P=0.011)、高尿酸血症の割合(13.6対0.0%、P=0.028)、甘いものが好きな人の割合(71.4対33.3%、P=0.033)は、いずれも低感度群で高いという群間の有意差が認められた。なお、甘味や塩味への感度が低下している人の割合や、塩味が好きな人の割合は、群間に有意差がなかった。また喫煙・飲酒習慣に関しても群間差がなかった。
2回の食事調査を基に摂取エネルギー量の変化を比較検討すると、低感度群では初回に比べて2回目の摂取エネルギー量が増えていた人が、68.2%を占めていた。一方、対照群で摂取エネルギー量が増えていたのは36.0%であり、有意差が存在した(P=0.032)。BMIや腹囲長が増加した人の割合、尿酸値、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、中性脂肪値が上昇した人の割合などには有意差がなかった。
まとめると、ベースライン時にうま味に対する感度が低いことは肥満や甘味の好みと有意に関連するとともに、前向きの追跡から判明した摂取エネルギー量の増大と有意に関連していた。
これら一連の結果をもとに、著者らは以下の考察を加えている。まず、うま味に対する感度が低い人は、うま味よりも甘味を生かした食品で食の満足感を得ており、ショ糖(砂糖)を多く含む高カロリーの食品や菓子をたくさん摂取することで肥満になるのではないか、としている。その背景として、うま味成分であるグルタミン酸ナトリウムは舌甘味受容体の細胞外ドメインに結合し、甘味応答を調整していることが動物実験で明らかになっている、と述べている。
著者らは本論文を、「検討対象者数が十分とは言えないものの、うま味の感度が低いことが肥満の新たな予測因子である可能性を、日本人対象の研究で示した初の報告」と位置付けている。また、「うま味を生かした食品から食事の満足を得られるような習慣が、肥満やメタボリックシンドロームの抑制につながるのではないか」とも語っている。

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