ワクチン否定派はツイッターに集まる

「小児用ワクチンを接種すると自閉症リスクが高まる」との考えから自分の子どもに予防接種を受けさせない「ワクチン否定派」の親たちの多くが、気持ちを吐き出したり他者と共有したりする場としてソーシャルメディアのツイッターを利用していることが、米アラバマ大学心理学のTheodore Tomeny氏らによる研究で明らかになった。

「自閉症」と「ワクチン」の2つのワードが含まれた投稿(ツイート)約55万件を調べたところ、その半数が小児用ワクチンに否定的な内容であることが分かったという。詳細は「Social Science and Medicine」10月号に掲載された。

小児用ワクチンが自閉症に関連するのではないかという懸念が広がるきっかけとなったのは、1998年に「Lancet」に発表された小児12人を対象とした英国の小規模研究の結果だった。
しかし、この研究はデータに不備があったとして2010年に掲載論文が撤回されている。
また、米疾病対策センター(CDC)や米国小児科学会(AAP)、米国公衆衛生局(PHS)、医学研究所(IOM)などの各団体は、このような関連はないとの見解を示している。
しかし、依然としてこの関連性をめぐる議論が収束する兆しはみえていない。

Tomeny氏らは今回、2009~2015年にツイッターに投稿されたツイートのうち、「自閉症」と「ワクチン」のキーワードを両方とも含んだ54万9,972件を分析した。
その結果、50%が予防接種に否定的な内容だった。
また、ワクチンに否定的なツイートの多さには地域差がみられ、特にカリフォルニア州、コネティカット州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州では否定的なツイート数が全国平均を上回っていた。

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また、ワクチンに否定的なツイートの数は、ワクチンに関連したニュース報道の後に増加することも分かった。
さらに比較的裕福な家庭が多い地域や都市部、乳児を持つ母親が多い地域でワクチンに否定的なツイートが多く、40~44歳の男性による否定的なツイートも多いことが分かった。

Tomeny氏は、ツイッターのようにユーザーの投稿する情報で成り立つサイトは、検閲がなく監視もほとんどされていないため、この種の議論を広める手段となりやすいと指摘。
その上で、「ツイッターでのワクチン否定派の主張を知ることで、ワクチンに関する懸念や誤解を解く手がかりを得ることができる。
また、小児科医もワクチン否定派の主張を把握しておけば、議論になったときに反論しやすくなる」と話している。

米フィラデルフィア小児病院ワクチン教育センターのPaul Offit氏は、誤った情報によって深刻な影響がもたらされると指摘する一方で、「目に見えない病気から身を守るために26回ものワクチン接種が必要であることを考えると、接種すべきか否かの判断は難しく、多くの親にとってSNSが気持ちのはけ口となるのは理解できる」とワクチン否定派に共感を示している。

その上で、同氏は数年前にカリフォルニア州での麻疹の流行後に予防接種への意識が高まったことを振り返り、「残念ながら疾患の流行が起こって初めてワクチンの重要性が理解されるのが現状。
悲しいことに私のような専門家よりもウイルスそのものの方が予防接種の必要性について教える教師としては優れているようだ」と話している。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年10月9日
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