体重減少が脳卒中のリスクと関連、女性では体重増加もリスク――JPHC研究

 日本人男性では体重減少と脳卒中発症リスクの上昇に、有意な関連があるというデータが報告された。一方、女性では体重減少と体重増加の双方でリスクが上昇する、U字型の関連があるという。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「Atherosclerosis」4月1日号に掲載された。

 ある一時点のBMIと脳卒中や虚血性心疾患の関連については、数多くの研究結果が報告されている。しかし、研究対象者を一定期間追跡して、その間の体重の変化がリスクとどのように関連するかを調べた研究は少ない。こうした中、JPHC研究からは、過去5年間で体重が10%以上増加した女性は脳卒中の発症リスクが有意に高くなるというデータが既に報告されている。今回の研究ではさらに、脳卒中の病型別により詳しく分析し、かつ虚血性心疾患についての解析も行った。

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 研究の対象は、1990年と1993年に岩手県二戸、長野県佐久、沖縄県中部などの9保健所管内に居住していた一般住民のうち、がんや循環器疾患でなかった40~69歳の男女7万4,928人。この対象者を2012年まで追跡し、調査開始時から5年間の体重変化(5kg以上減少、3~4kg減少、±2kg以内の変化、3~4kg増加、5kg以上増加の5群に分類)と、脳卒中および虚血性心疾患の発症との関連を調べた。解析に際しては、地域、喫煙・飲酒・身体活動習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症の既往などを調整し、それらの要因による影響をできるだけ取り除いた。

 99万7,406人年の追跡で、3,975件の脳卒中と914件の虚血性心疾患が発症した。脳卒中全体で見ると、男性では体重変化が±2kg以内の群に比較し、5kg以上減少した群で有意なリスク上昇が認められた〔ハザード比(HR)1.17(95%信頼区間1.01~1.37)〕。女性では、体重が5kg以上減少した群と3~4kg減少した群に加えて、5kg以上増加した群においても有意なリスク上昇が認められ、U字型の関連が示された〔5kg以上増加した群のHR1.61(同1.36~1.92)〕。

 脳卒中の病型別に見ると、男性では虚血性脳卒中(血栓性、塞栓性)、出血性脳卒中(脳実質内出血、くも膜下出血)のいずれの病型も、体重変化と発症リスクとの間に有意な関連はみつからなかった。

 一方、女性では5kg以上体重が増加した群で、血栓性脳卒中の有意なリスク上昇が認められた(HR1.86)。塞栓性脳卒中については、体重の減少と増加の双方で統計学的に有意なリスク上昇が示され、U字型の関連が見られた(5kg以上減少した群HR2.49、3~4kg減少した群HR2.00、3~4kg増加した群HR1.66、5kg以上増加した群HR1.72)。脳実質内出血は3~4kg減少した群でのみ有意なリスク上昇が見られ(HR1.40)、くも膜下出血については体重変化との間に有意な関連はなかった。

 虚血性心疾患については、男性では5kg以上体重が増加した群で、統計学的に有意ではないもののリスク上昇が見られた〔HR1.22(同0.95~1.58)〕。追跡開始から5年以内の発症を除いて解析すると、より強い関連が見られた〔HR1.34(同1.00~1.82)〕。女性では、体重変化と虚血性心疾患の発症リスクとの間に関連が見られなかった。

 この結果から著者らは、「中年期の体重変化は、循環器疾患のリスクとして留意する必要があると考えられる」と結論付けている。なお、体重減少が脳卒中のリスク上昇との関連を示した理由については、「明らかではないが、併存疾患やサルコペニアなど、健康上好ましくない状態によって体重が減少していた人が含まれていた影響が考えられる」と考察。「今後はダイエットなどの意図的な減量と、そうでない体重減少を区別した研究が必要」と述べている。

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HealthDay News 2021年5月10日
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