ビタミン摂取量が多い女性は身体的QOLが高い――志賀町研究

 ビタミンの摂取量と女性の生活の質(QOL)に有意な関連があることが、日本人対象の研究から明らかになった。全種類のビタミン摂取量が、身体的側面のQOLを表すスコアと正相関し、かつ、一部のビタミンの摂取量は精神的なQOLのスコアとも正相関するという。ただし男性では、ビタミン摂取量とQOLの間に有意な関連は見られないとのことだ。

 この研究は、石川県志賀町で行われている生活習慣病に関する住民対象研究「志賀町研究」のデータを用いて、金沢大学医薬保健研究域医学系環境生態医学・公衆衛生学の成川暢彦氏らが行った横断研究。結果の詳細は、「Nutrients」に3月22日掲載された。

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 研究の対象は、志賀町研究参加者のうち、「SF-36」というQOL評価のためのアンケートに回答した40~99歳の3,202人(平均年齢は男性63.3歳、女性64.5歳)。食事アンケートに基づいて、14種類のビタミン摂取量を推計した(レチノールは活性当量も評価)。なお、サプリメントからの栄養素摂取は評価しなかった。また、摂取エネルギー量が600kcal/日未満または4,000kcal/日以上の人は、解析対象から除外した。

 QOL評価に用いたSF-36は、過去4週間の8つの健康指標(身体機能、体の痛み、活力、社会的機能など)をアンケートの回答を基に判定するもので、国際的に頻用されており、疾患の有無にかかわらず評価可能であることが検証されている。本研究では、それら8つの指標を「身体的スコア」、「精神的スコア」、「役割/社会的スコア」という3つの要約スコアに統合。男性、女性ごとに各スコアの高値群と低値群に二分し、ビタミン摂取量との関連を検討した。

 年齢やBMI、喫煙・飲酒・身体活動習慣、糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療などで調整後、男性では、精神的スコア高値群のビタミンB2摂取量が、スコア低値群より有意に多かった。しかし、身体的スコアや役割/社会的スコアに関しては、高値群と低値群とで摂取量に有意差のあるビタミンはなく、精神的スコアについてもビタミンB2以外の13種類は有意差がなかった。

 一方、女性では、身体的スコア高値群は、ビタミンB2、B6、B12、ナイアシン、葉酸、ビタミンC、ビタミンKなど10種類のビタミン摂取量が、スコア低値群より有意に多かった。また、精神的スコア高値群は低値群より、ビタミンB6とナイアシンの摂取量が有意に多かった。役割/社会的スコアの高低では、ビタミン摂取量に有意差はなかった。

 女性の身体的スコアおよび精神的スコアを目的変数、ビタミン摂取量を説明変数とする重回帰分析の結果、身体的スコアに関しては全てのビタミン摂取量と有意な正の相関が認められ、精神的スコアに関してはビタミンB6、葉酸、ビタミンCの摂取量と有意な正の相関が認められた。

 著者らは本研究を、「大規模データに基づきビタミン摂取量とQOLの関連を性別に検討した初の研究」としている。一方、ビタミン摂取量の評価が自記式食事記録に基づく推計値のため精度が高くないことを、研究の限界点として挙げている。その上で、「横断研究であるため因果関係は不明だが、ビタミン不足は女性のQOLを低下させる可能性がある」と結論付けている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年5月10日
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