
慢性便秘の基本情報(患者会・参考サイト・治験情報)
皆さんは「慢性便秘」という病名を聞いたことがあるでしょうか。その病名からすると、大腸に関係する病気であることは推測できますが、慢性便秘についての詳しい内容までは知らない人が多いです。
しかし、自身で病気の原因や症状を知っておくことで、病気を早期に発見できる可能性が高まります。


慢性便秘とはどのような病気か?
慢性便秘とは
慢性便秘とは、腸全体の運動量が低下して起こる「弛緩性便秘」、便が直腸に下りても大脳に排便のサインが届かない「直腸性便秘」、腸が過敏になり起こる「痙攣性便秘」、病気が要因となり起こる「症候性便秘」に分けられます。
慢性的な便秘とは、普段の生活とは違った環境で過ごす場合など、生活環境が変化することによって便秘になることではないものを指しています。
便秘とは
便秘とは、糞便が長期間腸管にとどまることで水分が少なく硬くなることで排便にとても困難することになります。通常、便の回数が減る、硬い便、排便困難感、残便感がある場合を「便秘」と呼んでいます。
これにより、毎日便通がなくひどい便秘で悩んでいる方は全体の5%にあたり、年齢を重ねると増える傾向にあります。
弛緩性便秘
便秘になる方の中で最も多いのが弛緩性便秘です。これは、結腸の緊張が緩み、腸のぜん動運動が鈍くなることにより、排便させる力が弱まり、腸内に便が溜まった状態になります。
「おなかが張った感じがしているのに出ない」という状態になるのが特徴です。
便も硬くなる傾向にあります。これの原因は加齢に関わっており、内臓が下に垂れ、腸も緩むことが挙げられます。
蠕動運動が活発に行われないことで便をスムーズに送り出せずに腸に便が溜まってしまうのです。
そして、腹筋などの筋力の低下により、排便の際に腹圧をかけることができないことも弛緩性便秘の原因となっています。このようなことから、できるだけ運動不足とならないよう、日頃から適度に身体を動かすことが重要です。
直腸性便秘
直腸性便秘は、別名「習慣性便秘」とも呼ばれており、直腸まで便が下りてきていても、便意を感じないのが直腸性便秘の特徴です、これは、日頃から便意を感じても我慢したり、浣腸を繰り返し行うことにより、腸に便が溜まった状態を脳が感知することができず、便意が起こりにくくなってしまうのです。
そして、腸に残る便は、どんどん硬くなり、さらに出にくくなる悪循環が繰り返されてしまうのです。
痙攣性便秘
日常生活の中でストレスを感じると自律神経が乱れます。腸の動きは自律神経がコントロールしていることから、これが乱れることで腸のぜん動運動が強くなり、腸が痙攣した状態になってしまいます。
その結果、便を上手く送りだせず、腸内に便が停滞してしまい、便秘が引き起こされてしまいます。痙攣性便秘は、食後に下腹部痛が起こることが特徴です。
長期間腸内に便が溜まっていることから、便が出てもうさぎの糞のようにコロコロになって排便され、全くスッキリ感がない状態に感じる方が多いです。
症候性便秘
症候性便秘は、腸の外に腫瘍ができ、その腫瘍が腸を圧迫することにより、排便が妨げられてしまうことで起こります。病気が原因の場合は、慢性便秘が起こる可能性が高くなると言えます。症候性便秘の方は、原因となる病気を完治させることでしか治療方法がありません。
一過性単純性便秘
一過性単純性便秘は、生活環境が変わったり、排便環境が変わることによって身体が一時的にストレスを感じた場合に起こります。
それらの原因が取り除かれて、通常の生活に戻れば排便環境も元に戻ると言われています。
慢性便秘の原因は
慢性便秘の原因は、機能性便秘(弛緩性便秘とけいれん性便秘)と器質的障害によって起こる便秘に分けられています。弛緩性便秘は、腸管の緊張の他、運動が低下することで大腸において通過時間が伸びることで起こると言われています。
けいれん性便秘は、大腸の緊張が強いことで大腸の通過時間が延びることで起こります。
その他にも、薬剤性の便秘や代謝・内分泌性の便秘、神経筋原性の便秘もあります。
慢性便秘の症状チェック
慢性便秘で特に多く見られる症状は「排便回数の減少」と「お腹の張り」です。慢性便秘は、頭痛や胃痛、胃もたれなどが生じるという特徴もあります。
慢性便秘かも!? 症状をチェックしよう
以下の症状に思い当たる項目が多い場合、慢性便秘である可能性が考えられます。
早めにお近くの病院の胃腸科や消化器内科、便秘外来を受診してください。
- 排便回数の減少
- 排便時の不快感
- 腹痛やお腹の張り
- 便の量が少なく回数が多い
- 頭痛や胃痛、胃もたれがする
- 口臭や体臭がきつくなる
慢性便秘の初期症状は?
慢性便秘は、その初期症状としては、排便回数の減少」と「お腹の張り」が起こることが多いと言われています。慢性便秘は長年その症状の表れ方(症状の程度)に変化がないことから、比較的症状としては分かりやすいと言えます。
一方、便秘が続いて便が腸内に長く溜まっていくことにより、心身共に様々な影響が出始めます。腸内の悪玉菌が増えたり、骨盤内の血行不良や自律神経が乱れるといったことが起こります。
まれに生じる症状
慢性便秘は、日本人に増加している大腸がんの原因とも言われています。
便秘により腸内に増えた悪玉菌が発がん物質を作り出してしまい、がんに罹患するリスクが高くなってしまうのです。
また、便秘により腸内の細菌バランスが崩れてしまうことで、脂質や糖の分解、そして吸収といったサイクルに影響を及ぼすことで、生活習慣病の発症につながる恐れがあります。
慢性便秘は軽視すべきではないと言えます。

慢性便秘の治療
便秘の原因となるものは、習慣性の便秘以外に、大腸の腫瘍、狭窄、脳や神経の病気、内分泌の異常など様々です。機能性便秘の場合はストレスを避け、生活習慣を改善することが必要です。
弛緩性便秘には、膨張性下剤の使用、大腸平滑筋運動の促進のための薬剤投与、痙攣性便秘には塩類下剤出便を柔らかくする薬を使用することもあります。
科学的根拠のある治療法としては、診療ガイドラインに、2012年に保険適用となった「ビプロストン」などの処方薬が有効であると言われています。
慢性便秘を放置するとどうなる?
慢性便秘を放置すると、肌荒れや吹き出物、ストレスやイライラ感、不快感、また、疲労感や倦怠感を感じるようになります。そして、お腹がぽっこりとしたり、お腹が張った感じがするといったことが引き起こされてしまいます。
最終的には、腸閉塞や大腸がん、などといった取り返しのつかない大病を引き起こしてしまう可能性が高くなる為、十分に注意する必要があります。
このように、慢性便秘を放置することにより、危険な症状が現れたり、命を脅かすリスクが高くなることを念頭に置いておいてください。慢性便秘が疑われる自覚症状などがあれば、早めにお近くの病院の胃腸科や消化器内科、便秘外来を受診してください。
また、慢性便秘になりやすいのは何も女性だけではありません。男性も便秘がちな方はこのような危険な症状が現れることもある為、十分気を付けてください。
慢性便秘の検査
慢性便秘の診断には検査は必須事項ではない為、その他、腹部超音波検査により、腸内にガスや便が溜まっているかいないかの確認を行ったり、腹部レントゲンにより、腸が張っていないかなどを確認します。
また、大腸に腫瘍が隠れていないかを調べる大腸カメラを実施する他、血液検査や尿検査などを実施することになります。
問診
便秘の症状や生活習慣について、食事やストレスなどの詳細について質問します。
便潜血液検査
便の中の血液の有無を調べます。
血液検査
血液を採取し、検査を行います。
腹部X線検査
X線で腹部を撮影し、ガスが溜まっていないかなどの検査を行います。
大腸内視鏡検査
大腸に内視鏡を挿入し、腸の中を検査します。
注腸造影検査
造影剤を腸の中へ注入し、X線で撮影・検査を行います。
慢性便秘の治療法
- 投薬治療
- 生活習慣の改善
- 腹筋を鍛えるような適度な運動
- 十分な睡眠をとる
投薬治療以外にも、普段の食生活や生活習慣を改善させ、腸に優しい食生活を心掛けることが大切です。その為には朝食はきちんと食べ、1日3食の規則正しい生活を送りましょう。
また、食物繊維を多く含む食事の摂取や、水分をしっかりと摂取する、また、腸内環境を改善するため、ヨーグルトや乳酸菌飲料などを積極的に摂取するようにしましょう。
結果、慢性便秘の症状が治ったと感じることがあっても、この先も規則正しい生活習慣を守って過ごすようにしましょう。
また、便意があれば、それを我慢しないよう、適度な運動を取り入れ、睡眠時間はたっぷりと取るようにしてください。
ただし、症状や患者さんの状態によっては、慢性便秘となる原因が他の病気によるものであった場合は、それらの病気に対する治療法が特定される可能性があります。
まずは、お近くの胃腸科や消化器内科、便秘外来等で相談してください。
慢性便秘について役立つサイト
慢性便秘を患った、あるいは疑いがある場合に役立つサイトをいくつか紹介します。
役立つサイト
【便秘体験談】食生活改善で、脱:便秘!
⇒詳細はこちら
便秘体験談|便秘なんでもネット
このサイトでは、慢性便秘についての体験談が掲載されています。
症状や治療について実際に経験した人の話を知ることができます。
⇒詳細はこちら
ニュース|慢性便秘症治療薬AJG555の国内製造販売承認申請のお知らせ
⇒詳細はこちら
治験について
治験を受けることによって、最新の治療薬を少ない負担で利用できます。場合によっては、今まで慢性便秘に関する医薬品の効果が不十分だった人が、新薬の治験で大きな効果を得られる可能性もあります。そうでなくても、治験のデータによって慢性便秘に苦しむ人たちに貢献できるチャンスとなります。
以下のページのように、治験を募集しているところもあります。参加できそうな場合は積極的に参加してみてください。
※現在、慢性便秘の治験情報はありません。
e治験.com
⇒詳細はこちら
まとめ
慢性便秘は、慢性化してしまうことで、大腸がんや腸閉塞など、危険な症状を引き起こす病気です。生活習慣を見直すことで治ることもありますが、全ての患者さんがそうだと言い切ることはできません。
なぜなら、慢性便秘に至るまでに何らかの他の病気が原因である可能性もあるからです。
慢性便秘の症状に該当する場合は、早めに胃腸科や消化器内科、便秘外来を受診しましょう。

慢性便秘とは?原因や症状。治療法に関する基本情報を掲載しています。多く体験する便秘との違い、小児、子供の診療ガイドラインなどでもでも紹介されていて、決して大人だけが引き起こす症状というわけではありません。