疫学データ

更年期障害の疫学データに関連する基本情報

一つの物事に関して「知っている」のと「知らない」のとでは、後者のほうが不安や恐怖を感じやすいです。また、知らないにしても「ほとんど知らない」のと「全く知らない」のとでは、やはり後者のほうが感情が大きいです。更年期障害も然り、病気について知っていることが多ければ不安も少なくなるでしょう。今回は、更年期障害を統計などから見てみたいと思います。
  1. 更年期障害の基本情報
  2. 更年期障害のデータを数字から見る
  3. 更年期障害と「Japan nurses health study」とは
  4. まとめ
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更年期障害の基本情報

まずは、更年期障害がどのような病気であるのかについて解説します。

閉経に伴う女性ホルモン分泌機能の低下と自律神経の乱れによる諸症状
若年性更年期障害を除けば、更年期障害の根本的な原因は「閉経」です。閉経は平均すると50歳頃に起こりますが、その前後の10年間を更年期と呼んでいます。女性は閉経により卵巣機能が徐々に低下して、体内での女性ホルモンの分泌が弱まります。

女性ホルモンは自律神経に密接な関係を持ちますので、ホルモンバランスが乱れることで自律神経が乱れ、これらを原因としたさまざまな症状を呈するようになります。その中でも特に重い症状を呈する場合に、これを更年期障害と呼びます。

治療法は確立している?

多くの女性が経験する症状であるため、症例も多く、その治療法はおおむね確立していると言えます。医療機関で実施されている主な治療法は以下のとおりです。
  • ホルモン療法
  • 漢方療法
  • 精神療法
また、更年期症状のセルフケアとしては以下の内容が効果を発揮すると言われています。
  • ストレスを溜めない
  • 大豆イソフラボンを摂取する
  • 適度な運動をする
  • 不足している栄養をサプリメントで補う
  • 十分な睡眠をとる

更年期障害のデータを数字から見る

次に、更年期障害に関する数値データを、統計などから見ていきたいと思います。

更年期女性の人口
平成27年度の統計によれば、更年期に該当する年齢の人口は45~49歳および50~54歳の合計で約830万人となります。女性人口全体から見れば、約14.5%の割合に相当する数字です。「プレ更年期」や長引く更年期障害を考慮すれば、その人口はさらに多くなります。

更年期障害の人数は?
更年期の女性の50%~80%ほどが更年期における何らかの症状を訴えると言われています。昨今は女性の社会進出が増加していますので、職場におけるストレスを考慮すればその割合は多いだろうと推測されます。仮に更年期女性全体の80%が症状を訴えると仮定すれば、その人数は664万人に上るということになります。

厳密に言えば、更年期障害とは医療機関において「更年期特有の症状が見られ、その症状が重いことで日常生活における支障が大きく、治療の対象になる」という定義があります。この「治療の対象になる」人数は、更年期女性全体の25%~30%であると言われています。仮に25%だとしても、200万人以上の女性が治療の対象となる更年期障害であると推測できます。

女性人口全体が約5700万人であるため、女性全体から見ても約3.5%の女性が更年期障害の治療対象であるという計算になります。女性30人に1人の割合で更年期障害の治療が必要であるということになるのです。

実際の患者数は少ない
ただし、実際の患者数となるともっと少ない数字になります。これは、実際に更年期障害の治療を受けている女性と、潜在的な更年期障害患者数に乖離があるということです。つまり、治療が必要でありながらそれを自覚していない、あるいは自覚症状があっても医療機関を受診して治療を受けていないということになります。経済的な事情もあるかと思いますが、更年期女性本人が更年期障害について自覚できていないという側面も大きいです。

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更年期障害と「Japan nurses health study」とは

日本人は、更年期障害の研究に関して無関心であるというわけではありません。例えば、女性の生活習慣および健康に関する疫学調査研究「Japan nurses health study(JNHS)」というものがありますが、日本女性医学学会(旧:日本更年期医学会)は国内外での高い信頼性を持つ更年期女性の健康に関する疫学研究となるべく、その一環としてJNHSに参画しています。

JNHSでは、25歳以上の女性看護職を対象として、自己記入式調査によって日本女性の生活習慣および保健習慣が健康に対してどのような影響を及ぼしているのかを調べています。更年期女性についてもそれを調べることで、生活習慣や保険習慣が更年期の諸症状に対してどのような影響を及ぼすものであるかを調査できます。

更年期障害に関する治療法は、ホルモン補充療法を中心として既にさまざまな方法が医療機関において利用されています。実地の聞き取り調査が進んで情報が蓄積されることで、より正確な疫学的根拠を確立することができるでしょう。その成果は、更年期の諸症状に悩む女性にとって大きな手助けとなるはずです。

まとめ

さまざまな観点から見てみると、更年期障害が決して他人事ではないということがわかります。病院での治療対象であるということ、更年期女性の半数以上が症状を呈し、4分の1が治療対象であるということ、研究・調査が進んでいるということなど、知れば知るほど更年期障害に対して無関心で居ることは間違っているということがわかります。

更年期に該当する女性はもちろん、その周囲の人達もまた更年期障害や更年期の症状についての理解を深める必要があります。更年期の女性を襲う健康上のリスクはそれだけではありませんが、一つでも問題を解消することで健康的な老後を手に入れる手助けとなることでしょう。

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更年期障害症状や予防など関連する基本情報。男性でも女性でも必ず迎える更年期。そのときに発症する可能性がある更年期障害。どんな病気なのか?予防法があるのかなど詳しく解説しています。

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参考サイト:リンク
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