
クローン病の疫学データ、クローン病の特徴
クローン病は今のところ完治できる治療法がありません。国から難病として指定されており、確定診断がつくと患者登録のための申請を行うことになります。
クローン病と診断された方は登録者証や特定疾患医療受給者証を持っています。よって、国は現在どのくらいの患者さんがいて、都道府県や年齢の分布はどうなのかということも把握することができます。


クローン病の歴史
クローン病は、アメリカのクローン医師が1932年に初めて発表した病気です。現在のクローン病という名前は、この医師の名前が由来となっています。当時はクローン病という名前ではなく、限局性回腸炎と呼ばれていました。1973年にWHO(世界保健機構)の国際医学団体協議会が診断基準を定めています。
日本を含むアジア圏ではほとんどみられない病気で、1976年日本でのクローン病の患者数はまだ128人しかいませんでした。この頃に日本においても診断基準が作られ、厚生労働省の研究調査班によって現在まで改訂が重ねられながら現在に至っています。
現在はまだクローン病のことは完全に解明されていませんが、日々の研究によって病気のしくみがわかってきており、クローン病の炎症を抑えるための効果的な薬も出てきています。それにより、以前よりも病気のコントロールができるようになってきました。
クローン病の疫学データ、患者数の変化
日本ではかなり珍しい病気とされていたクローン病ですが、2014年には患者数が4万人を超えています。
2012年 | 2013年 | 2014年 | |
---|---|---|---|
特定疾患医療受給者証所有者数(人) | 36,418 | 38,271 | 40,885 |
2014年クローン病登録者証を交付されている人(医療費受給の条件を満たしていない人)は1,512人です。
同じ炎症性腸疾患の潰瘍性大腸炎は2014年で17万人を超えていますので、それに比べると少なくはありますが、今後も患者数は増加していくと推測されています。
2014年の厚生労働省による調査によると、特定疾患医療受給者証を持っている方は10万人あたり約730人で、そのうちクローン病の方は約32人となっています。
クローン病の疫学データ、年齢層と男女比など
日本では女性よりも男性に多く見られ、その比率は男女が2:1となっています。発症する年代の多くは20代から30代ですが、5歳ころから60代を超える高齢者まで幅広い年代で発症の報告があります。

発症する年代の特徴から、クローン病は環境の変化やそれにともなうストレスが病気と大きく関わっているのではないかと考えられています。

クローン病発症のリスクについて
クローン病は免疫の異常によって起こるものですが、そこには遺伝子や生活環境や衛生環境、食事、ストレスなどさまざまな因子が関わっているとされています。近い親族でクローン病の方がいる場合、クローン病の発症率は1.5〜7倍になるといわれています。また、喫煙の習慣がある人はそうでない人よりも発症のリスクが上がるとされています。
クローン病の疫学データ、クローン病の予後・手術率
クローン病は活動期と寛解期を繰り返す病気で、発症したらすぐ命に関わるというものではありません。ただ、炎症を繰り返すと腸管が狭くなる(狭窄)穴が開いたりする(瘻孔)などの合併症が起きるため、その治療として手術になる方が少なくありません。
クローン病と診断された時点で、すでに腸管に合併症がある方は20%〜30%ほどです。腸管の合併症は薬での治療が難しく、手術治療を行うことになります。
クローン病の方は一般の方よりも小腸や大腸のがんリスクが高く、特に発症から長期間になるほど、がんのリスクが上がるとされています。日本では直腸肛門部がんが多く、欧米では結腸がんが多いといわれています。
クローン病の方が手術になる率は、5年で約30%、10年で約45%、15年では役73%と上がっており、病気との付き合いが長くなるほど合併症やがんの発生で手術になる方が増えています。がんを見つけるためには、内視鏡検査を行い、がんが疑われる部分の組織をわずかに取って検査する必要があります。
また、再手術となる方は今までの累積によると5年では20%〜40%、10年では60%〜70%弱といわれています。
まとめ
クローン病の疫学データから、クローン病は比較的若い世代に発症する傾向があり、病気との付き合いが長くなるほど合併症も起こりやすく、それに対する手術が行われるケースが多くなってきます。
クローン病についてはまだ明らかになっていない部分がありますから、現在では完治できません。しかし、効果的な治療法が出てきたことで、寛解期を長く維持できるようになってきています。
クローン病は炎症を繰り返すことで合併症のリスクが上がるため、計画された治療をきちんと続けることが大切です。寛解状態を保つことで、合併症のリスクを下げることが期待できます。

わが国ではかなり稀な病気とされていたクローン病ですが、今後も患者数は増え続けると予想されており、一日でも早くこの病気解明され、治療法が確立されることが課題となっています。そこで今回は、クローン病にとってより効果的な治療薬・治療法を見つけるために欠かせない治験のこと、そして治験の最近の動きについてまとめました。