良い食事

クローン病の良い食事について

炎症性腸疾患のクローン病は、活動期に入ると栄養状態が悪くなってしまう傾向があります。クローン病は長く付き合っていくことになる病気ですから、患者さんそれぞれに合わせた栄養管理が大切です。

クローン病の食事、そして栄養管理は、同じ炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎とは異なり、栄養療法・食事療法が他の治療と同じくらい重要なものとなっています。

栄養摂取は生きていくために必要なこと。しかし、生活スタイルや病気に対する考え方・受け止め方によってうまく行かないこともあります。そこで、クローン病の良い食事とはどのようなものなのか、制限が必要なポイント、病気の状態によって気をつけたいことを中心にご紹介します
  1. クローン病の栄養管理について
  2. クローン病の良い食事 食事療法の特徴
  3. クローン病の良い食事 自分の体に合う・合わないものを把握する
  4. 食事を選ぶ際のポイント
  5. まとめ
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クローン病の栄養管理について

クローン病は大腸だけでなく小腸や他の消化器にも炎症が起きる病気です。そのため、しばしば栄養不良となりやすく、それによってさらに体力を消耗しやすくなったり感染しやすくなったりする状態を招いてしまいます。

クローン病は、近年の医学の進歩により効果的な薬が登場し、以前に比べて病気のコントロールができるようになってきました。しかし、クローン病にとって栄養管理はとても大切なものです。たとえば、栄養療法で使われている成分栄養剤は、服用することで腸の炎症を抑える効果が期待できるのです。

クローン病の栄養管理は、

完全中心静脈栄養
長いカテーテルを血管に入れ、点滴によって栄養成分を得る

経腸栄養療法
成分栄養剤や半分消化した状態になった栄養剤を口から飲む、または鼻からチューブを入れ、栄養剤をゆっくり入れて摂取する

以上の栄養療法2つと食事療法で行います。

栄養療法・食事療法は、大腸型の患者さんよりも小腸型・小腸大腸型の患者さんにとって、より効果であると考えられています。

実際に食事療法が可能となるのは、寛解期に移行している時期から寛解期の患者さんです。食事ができるようになってからも栄養療法は継続するのが基本です。

クローン病の良い食事 食事療法の特徴

どの病気にも言えることですが、クローン病の患者さんは一人ひとり病気の状態が異なっています。ガイドラインで基本的な基準はもうけられていますが、腸管の状態・合併症の有無などによって食事の内容が決まります。

脂肪が腸管を刺激すること、そして動物性たんぱく質を多く摂取する国に置いてクローン病の患者数が多いことから、脂肪とたんぱく質はクローン病に大きく関連していると考えられています。よって、栄養成分で制限が必要となるのは脂肪とたんぱく質がメインとなります。

クローン病の食事療法では1日あたりの摂取に次のような基準があります。

  • 脂肪:1日30g以下
  • たんぱく質:体重1kgにつき0.8〜1.0g
  • 摂取カロリー:体重1kgにつき30〜35kcal

クローン病の良い食事 自分の体に合う・合わないものを把握する

クローン病にかかると、食事がほとんどできないと思ってしまう方もいらっしゃいますが、制限の基準はあくまで基準。誰もがそうしなければならないというわけではありません。

食事ができるようになったら、流動食から始め、次にゆるいおかゆをしばらく続け、そして柔らかいご飯にする、という具合にゆっくり焦らず進めていきましょう。
主食・副食ともに、食材は人によって合うものと合わないものがあります。ですから、いろいろなものを少しずつ食べてみて、その後の体調の変化を観察します。体調が変わらなければ食べる量を1口増やす、体調が悪くなったらその食材はやめる、というように試していきます。

食べるときは、一度にいろいろな食材を試さないようにします。何種類もの食材を一度に試してしまうと、体調が悪くなったときにどの食材が合わなかったのか分からないからです。

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食事を選ぶ際のポイント

脂質
クローン病の患者さんにとって、脂質は注意したいもの。しかし、脂質にも種類があります。脂質の中でも、炎症を抑えるはたらきがあると考えられている「n-3系脂肪酸」は、適切な摂取量であれば比較的安全といわれています。
お菓子やパンには油分を多く含む傾向がありますので、慎重に選びましょう。

n-3脂肪酸系の油:しそ油、えごま油、亜麻仁(あまに)油など

食物繊維
食物繊維は、腸管に狭窄がある方は摂取を慎重にします。食物繊維を摂取するときは、不溶性食物繊維よりも水溶性食物繊維がおすすめです。

たんぱく質
牛肉や豚肉は控えて、鶏肉にします。動物性たんぱく質よりも、大豆などの食物性たんぱく質を選ぶようにします。きな粉は鉄分も取れるので、貧血になりやすいクローン病の方にとっておすすめです。

くだもの
パイナップルやキウイフルーツなど、不溶性食物繊維が多いものは控え、ペクチンが多く含まれているりんごやバナナなどを選ぶようにします。

その他
クローン病は、腸内環境を整えることが大切。ですから、ビフィズス菌・乳酸菌など善玉菌を含む乳製品も食べるようにしましょう。ただし、低脂肪や無脂肪のものを選ぶようにします。乳製品はカルシウムの摂取にも良いですが、乳製品が合わない方は、海藻のだしや海苔の佃煮でカルシウムを補ってもいいでしょう。

アルコールや炭酸は腸の粘膜を傷つけてしまうといわれています。飲みたい場合は、寛解期に少量にしておきましょう。

まとめ

クローン病の良い食事は、一定の基準があるものの、実際のところは患者さんの病状によってさまざまです。治療中は、医療機関で定期的に栄養評価を行い、その結果によって、現在の食事の評価と見直しをします。食事を楽しむためには、まずしっかり治療すること、そして普段から自分の体に興味を持つことです。クローン病の良い食事は、食事療法として自分なりの楽しみ方ができるように、医師・看護師・管理栄養士としっかり相談していきましょう。

クローン病の治療法に関する詳しい解説はこちら

できるだけ早く症状を落ち着かせ、寛解状態が継続できるように治療を行なっていくクローン病。クローン病の治療方法は、国の研究機関によって治療ガイドライン(クローン病治療指針)がつくられています。ここでは、この治療ガイドラインとそれぞれの治療方法について詳しく解説していきます。

クローン病の治療方法について

参考文献・サイト:
羊土社 日比紀文監修 チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト
参考サイト1参考サイト2参考サイト3
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