疫学データ

潰瘍性大腸炎の疫学データについて

潰瘍性大腸炎は国から難病指定を受けている病気です。医療機関で専門医から確定診断を受けると、患者として登録することになっています。

日本で潰瘍性大腸炎として治療している人はどれくらいいるのか、潰瘍性大腸炎という病気の歴史や患者数の移り変わり、年齢、男女比などについてまとめました。潰瘍性大腸炎の疫学データから、潰瘍性大腸炎の特徴についてみていきます。
  1. 潰瘍性大腸炎の歴史
  2. 潰瘍性大腸炎の疫学データ、患者数の変化
  3. 潰瘍性大腸炎の疫学データ、年齢層と男女比
  4. 潰瘍性大腸炎の疫学データ、寛解する人の割合
  5. 潰瘍性大腸炎の疫学データ、予後・合併症について
  6. まとめ
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潰瘍性大腸炎の歴史

潰瘍性大腸炎は、戦前の頃までは世界の一部の地域や人種に多く見られる病気として知られていました。しかし、戦後さまざまな地域から患者に関する報告が聞かれれるようになったといわれています。

日本においては戦後でもまだまだ珍しい病気とされていました。しかし、潰瘍性大腸炎と診断される方が徐々に増加したため、厚生労働省は1973年に潰瘍性大腸炎を特定疾患として指定し、研究班を発足させたのです。

潰瘍性大腸炎の研究班は日々病気に関する研究を行い、それをもとに診断基準の作成と改訂、そして疫学調査などを行なっています。

日本の医学の発展により潰瘍性大腸炎の解明も進んできています。潰瘍性大腸炎は薬による治療(内科的治療)が中心となる病気です。しかし、以前は潰瘍性大腸炎に効果的な薬があまりありませんでした。

しかし、現在は効果的な薬の登場により、寛解を長く維持できるようになっています。治療法の中には日本で開発されたものもあり、日本は世界の中でも潰瘍性大腸炎の治療法が多い国のひとつとなっています。

潰瘍性大腸炎の疫学データ、患者数の変化

潰瘍性大腸炎と診断された人は、1970年代頃では国内で数千人いるかどうかというほどでしたが、徐々に患者数は増えてきています。

2012年 2013年 2014年
特定疾患医療受給者証所有者数(人) 143,733 155,116 170,781

2014年に厚生労働省によって行われた「衛生行政報告例」における特定疾患(難病)の調査によると、潰瘍性大腸炎の特定疾患医療受給者証を所持している人は17万人を超えています。

2014年時点の特定疾患306種類※でみますと、特定疾患医療受給者証を所持している人は合計で約92万6000人います。この中で潰瘍性大腸炎は最も人数が多くなっています。

人口10万人あたりの人数でみていきますと、特定疾患医療受給者証を所持している人は約730人です。潰瘍性大腸炎は、人口10万人あたり約135人となっています。

潰瘍性大腸炎と診断された人のうち、特定疾患医療受給者証ではなく特定疾患登録者証を持つ人(軽快者)は、約1万人です。

特定疾患登録証を持つ人が最も多いのは、突発性血小板減少性紫斑病で約1万3000人。潰瘍性大腸炎は2番目に多くなっています。
2017年4月より、特定疾患の種類は306疾患から330疾患に増えています。

潰瘍性大腸炎の疫学データ、年齢層と男女比

潰瘍性大腸炎の発症年齢で最も多いのは20代から30代です。しかし、この病気は子どもから50歳以上の人まで、幅広い年代でみられる病気です。

発症のピークが20代から30代ということから、潰瘍性大腸炎の発症には食生活の乱れや環境の変化に対する心身のストレスが大きく関わっているのではないかと考えられています。

潰瘍性大腸炎の発症は男女の比率は1対1で、性差はありません。

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潰瘍性大腸炎の疫学データ、寛解する人の割合

潰瘍性大腸炎は、処方された薬を長期にわたり正しく飲むことがとても大切です。症状が落ち着いてしまうと、ついつい内服を忘れてしまうことがありますが、たとえ体調が良くても内服は継続しなければなりません。

潰瘍性大腸炎の人が医師の指示通りに内服できた場合とそうでない場合では、寛解維持に差が出てきます。2年間きちんと内服できている人の経過を見ると、その約90%が寛解維持できていて、正しく内服できなかった人は約40%しか寛解維持できていなかったという調査報告があります。

潰瘍性大腸炎の疫学データ、予後・合併症について

潰瘍性大腸炎は急激に重症化した場合を除き、すぐに生命にかかわる病気ではありませんので、生存率は一般の人と変わらないといわれています。

しかし、潰瘍性大腸炎は慢性疾患のため、さまざまな合併症が起こるリスクがあります。合併症の中でも、潰瘍性大腸炎の方が最も心配されるものに大腸がんがあります。

潰瘍性大腸炎により長い間大腸に炎症が繰り返されると、その部分にがんが発生しやすくなるといわれています。大腸がんを合併するリスクは、潰瘍性大腸炎と診断されてから10年後で2%、20年で8%、30年で18%まで増加するという報告があります。

大腸がんの合併は、潰瘍性大腸炎の中でも全大腸炎型(全結腸炎型)というタイプに多い傾向があります。診断から7年から10年ほど経過してくると、毎年内視鏡検査を行いながら経過をみていくことになります。

まとめ

潰瘍性大腸炎の疫学データから、潰瘍性大腸炎の患者数が増加していること、また特定疾患医療受給者証を持つ人の中で潰瘍性大腸炎が一番多くなっていることがわかります。

潰瘍性大腸炎は症状が落ち着いてもきちんと内服を続けることで、多くの人が寛解を維持することができます。

潰瘍性大腸炎は長く経過すると大腸がんの合併が心配されますが、潰瘍性大腸炎を診断された方すべてに大腸癌がんが発生するわけではありません。病気を長く付き合っている方には経過をみながら毎年検査を行うようにします。

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潰瘍性大腸炎の治療は、近年大きく発展を遂げており、効果の高い薬が出てきています。潰瘍性大腸炎の治験や現在期待されている新薬の情報、そして病気のことを知り、病気と付き合っていくために役立つ患者会などの情報をまとめました。

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参考元:
医学書院 medicina 2015年9月号 p.1714〜p.1716
診断と治療社 消化器研修ノート 改訂第2版 p.375~p.380
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