7項目でメタボ発症を予測可能な日本人向けリスクスコア

 向こう5年間でのメタボリックシンドローム(MetS)発症リスクを、年齢や性別、BMIなど、わずか7項目で予測できるリスクスコアが開発された。鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科のSalim Anwar氏、窪薗琢郎氏らの研究によるもので、論文が「PLOS ONE」に4月7日掲載された。

 MetSの有病率は、人種/民族、および、その国で用いられているMetSの定義によって異なる。世界的には成人の20~25%との報告があり、日本では年齢調整有病率が19.3%と報告されている。これまでにMetSの発症を予測するためのいくつかのモデルが提案されてきているが、いずれも対象が日本人でない、開発に用いたサンプル数が少ない、検査値だけを検討していて生活習慣関連因子が考慮されていないなどの限界点がある。著者らはこれらの点を考慮し、日本人の大規模なサンプルのデータに基づく予測モデルの開発を試みた。

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 研究には、2008年10月~2019年3月に鹿児島厚生連病院で年次健康診断を受けた19万8,292人のうち、ベースラインとその5年後(範囲3~7)にも健診を受けていた30~69歳の成人5万4,198人(平均年齢54.5±10.1歳、男性46%)のデータを用いた。全体を無作為に2対1の割合で二分し、3万6,125人のデータをMetS発症予測モデルの開発に用い、1万8,073人のデータはそのモデルの精度検証に用いた。観察期間中のMetS発症率は、開発コホートが6.4%、検証コホートが6.7%だった。

 健診項目の中から、多変量解析にてMetS発症リスクに有意な関連の認められた11項目を抽出し、そのβ係数を基に各評価項目をスコア化するという手法により、合計27点のリスクスコアが完成した。評価項目とスコアは、例えば年齢は30代は0点、40~60代は2点、性別は女性0点、男性3点、喫煙2点、習慣的飲酒1点などであり、その他、BMI、収縮期/拡張期血圧、中性脂肪、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、空腹時血糖値が含まれている。

 このリスクスコアの開発コホートにおける向こう5年間でのMetS発症予測能は、スコア13点をカットオフ値とした場合、感度87%、特異度74%、スコア14点では感度、特異度ともに81%であり、ROC曲線下面積(AUC)は0.81だった。検証コホートでは、スコア13点で感度89%、特異度74%、スコア14では感度、特異度ともに81%であり、AUCは同じく0.81だった。

 次に、臨床現場でより簡便に使用できるように、採血を要さない項目のみに絞り込んだ簡易版を検討。以下のように7項目からなる合計17点のリスクスコアを開発した。その評価項目とスコアは、年齢は40~60代2点、男性3点、BMIは21~22.9が4点、23以上は5点、収縮期血圧は120mmHg以上で2点、拡張期血圧は80mmHg以上で2点、喫煙で2点、習慣的飲酒で1点というもの。

 この簡易版リスクスコアの開発コホートにおける向こう5年間でのMetS発症予測能は、スコア15点をカットオフ値とした場合、感度83%、特異度77%、AUC0.78、検証コホートでは、スコア15点で感度82%、特異度77%、AUCは同じく0.78だった。

 このほかに、各評価項目の検査値に係数を掛けて加算するという方程式モデルも開発。そのAUCは開発コホート、検証コホートともに0.85だった。

 著者らは、「日本人の健診データから開発された3種類のMetS発症予測モデルは、いずれも予測能が高く、特に簡易版は利便性に優れ、大規模な集団からMetSリスクの高い対象者を簡便に抽出する際に有用。これらを臨床の現場に応じて使い分けてほしい」と語っている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2023年5月29日
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