• 食後に椅子に座らなければエネルギー消費が1割増える

     食後に立っているだけで、座って過ごすよりもエネルギー消費が1割増えるというデータが報告された。ただし、糖尿病でない人を対象に行われたこの研究では、食後の血糖値には有意差が認められなかったことから、代謝性疾患の予防という点では単に立っているだけでなく、軽い運動を加えた方が良い可能性があるという。岐阜大学教育学部保健体育講座の河野寛也氏、上田真也氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に10月17日掲載された。

     エネルギー収支がプラスの状態が続いていると、肥満やそれに伴う糖尿病、心血管疾患などのリスクが上昇する。最近の肥満や糖尿病の増加の一因として、人々の生活の中の座位行動が増えてエネルギー消費が減り、収支がプラスになりやすくなっていることとの関係が指摘されている。特に本研究で対象とした大学生は座学での講義が多いために、一般人口以上に座位行動が長いという報告がある。

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     一方、エネルギー消費を増やす方法として以前からスポーツや運動が推奨されているが、近年では座位行動を減らすだけでも健康上のメリットを得られることが分かってきた。ただし、食後の座位を立位に変えることの代謝への影響は、十分検討されていない。上田氏らは、食後に立位で過ごすことでエネルギー消費が増え、血糖上昇が抑制されるとの仮説の下、大学生を対象に以下の検討を行った。

     研究参加者は15人の男子大学生(平均年齢21.6±1.1歳)で全て非喫煙者であり、代謝性疾患などの既往歴のある学生や何らかの薬剤が処方されている学生は除外されている。試験デザインはクロスオーバー法で、全員に対して食事摂取後に通常の椅子に座るか、身長に合わせて高さを調整したスタンディングデスクを使うという2条件を試行。試行順序は無作為化し、7日間のウォッシュアウト期間を設けて行った。

     テスト前日からアルコールやカフェインの摂取と中強度以上の運動を禁止し、夕食は21時までに済ませて、それ以降は翌日の朝食以外、水以外の飲食を禁止した。テスト当日は8時までに、2条件共通の食事を取った上で、12時から300gの白米を食べてもらうという食事負荷テストを実施。食前から食後120分まで、間接熱量測定法に基づくエネルギー消費量、心拍数、血糖値、呼吸交換比(RER)、外因性グルコース代謝率などの推移を把握した。

     その結果、食後30~120分のエネルギー消費量は、両条件ともに食前に比べて有意に増大し、食事誘発性熱産生が確認された。ただし、立位条件のエネルギー消費量の方がより高値で推移し、30分おきに測定した全てのポイントで有意差が認められた。条件間の差は1分当たり0.16±0.08kcalであり、立位条件では120分間でのエネルギー消費が10.7±4.6%多かった。

     10分おきに測定された心拍数に関しては、食前は有意差がなかったものが、食後は10~120分の全てのポイントで立位の方が有意に高値だった。血糖値は30分おきに測定され、両条件ともに食後30分のみ食前より有意に高値となり、その他のポイントは食前値と有意差がなく、また全ポイントで条件間の有意差は見られなかった。

     RERや外因性グルコース代謝率の推移にも、条件間の有意差は観察されなかった。なお、両条件ともに食後60~120分にかけて外因性グルコース代謝率が食前値より高値となり、糖質の酸化が同程度に亢進していたことが確認された。このことから、立位条件でのエネルギー消費の増大は、主として脂質酸化の亢進によるものと考えられた。

     著者らは以上の総括として、「食後に立位で過ごすことで、糖代謝への影響は生じないが、エネルギー消費は有意に増大することが確認された」と結論付けている。なお、立位によりエネルギー消費が10.7±4.6%増えるという結果を基に、1日に4時間の座位を立位に置き換えた場合の影響を試算すると、エネルギー収支が38.4kcalマイナスになり、これを毎日続ければ1年間で体脂肪量1.6kg減という効果が予測されるという。

     一方、血糖変動には有意差がなかったことに関連して、「食後の血糖上昇は非糖尿病者でも酸化ストレス亢進や血管内皮機能の低下などをもたらし得る。疾患予防のためには、例えば食後に座位と立位を繰り返すなどの運動を加えて糖質の酸化を刺激することが必要ではないか」との考察を付け加えている。

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    HealthDay News 2023年12月4日
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  • 高額医療費患者の3割強はメタボ関連――協会けんぽの全国規模データの解析で明らかに

     年間医療費が高額な上位10%の患者で、全医療費の約6割が使われていて、その患者の3割強が広義のメタボリックシンドローム(メタボ)に該当することが明らかになった。慶應義塾大学スポーツ医学研究センターの勝川史憲氏らが、協会けんぽのデータを解析した結果であり、詳細は「PLOS ONE」に9月28日掲載された。著者らは、「メタボの重症化予防が、医療費増大の抑制という点からも重要であることが示唆される」と述べている。

     日本では保険証さえあれば窓口での一部負担金のみで治療を受けられ、このような医療アクセスの良さは国際的にも高く評価されている。その一方で近年では多くの保険者の財政状況が悪化しており、医療費増大の抑制が喫緊の課題となっている。

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     医療費が高額になる一因として、複数の慢性疾患を併せ持つ「マルチモビディティ」に該当する患者の存在が海外では注目されている。ただし国内でのマルチモビディティの実態と医療費の関連は、詳細が不明。これを背景として、慶應義塾大学、東京医科歯科大学、川崎医科大学の研究グループにより、協会けんぽのビッグデータを用いた解析が行われた。2020年度に開始された同協会による、外部有識者を活用した委託研究事業として初の報告。

     今回の研究では、2015年度に同協会に加入していた18歳以上65歳未満の被保険者1698万9,029人のうち、高額な医療費が使われていた上位10%に当たる169万8,902人を抽出し、それらの患者がどのような疾患で医療を受けていたかを検討した。なお、人数では全体の1割を占めるこの患者群に使われていた医療費は、上記の1698万人の医療費の59.0%と約6割を占めていた。

     解析の結果、医療費の上位10%を占めるこの集団では、95.6%がマルチモビディティに該当することが明らかになった。

     次に、各患者の疾患の特徴に基づき全体をいくつかのパターンに分類する、潜在クラス分析という統計学的手法を用いて、マルチモビディティか否か、および、マルチモビディティの場合は併発している疾患の組み合わせによって、全体を30パターンに分類。すると、そのうち7パターンは広義のメタボ(腹囲やBMIの判定基準に該当するか否かにかかわらず、糖尿病、高血圧症、脂質異常症を併発している患者)に該当し、患者数としては31.8%を占めていた。また、この広義のメタボ該当者の医療費は28.6%と約3割を占めていた。なお、広義のメタボ以外で医療費が高額になりやすい疾患は、腎疾患と悪性腫瘍であり、特に腎疾患は1人当たりの医療費が最も高額だった。

     続いて、30パターンの疾患群の分布を性別・年齢別に検討。その結果、男性では30代でメタボのパターンに分類される患者の割合が20%を超え、50代以降では半数以上に上った。一方、女性では40代までは周産期関連または月経前症候群といった女性特有の産科・婦人科系疾患のパターンに分類される患者が半数近くを占めていたが、50代以降ではメタボや運動器疾患のパターンに分類される患者が増加していた。

     著者らは、「解析に用いたレセプト病名は、必ずしも実際の病態を反映しないケースもあるため、結果解釈に注意が必要」といった限界点を挙げた上で、「患者数・医療費ともに多いメタボの重症化予防の重要性が改めて示唆された。特に将来的な医療費を抑制するという観点では、就労世代からのマルチモビディティ予防がポイントとなると考えられる」と総括している。

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    HealthDay News 2023年11月13日
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  • 7項目でメタボ発症を予測可能な日本人向けリスクスコア

     向こう5年間でのメタボリックシンドローム(MetS)発症リスクを、年齢や性別、BMIなど、わずか7項目で予測できるリスクスコアが開発された。鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科のSalim Anwar氏、窪薗琢郎氏らの研究によるもので、論文が「PLOS ONE」に4月7日掲載された。

     MetSの有病率は、人種/民族、および、その国で用いられているMetSの定義によって異なる。世界的には成人の20~25%との報告があり、日本では年齢調整有病率が19.3%と報告されている。これまでにMetSの発症を予測するためのいくつかのモデルが提案されてきているが、いずれも対象が日本人でない、開発に用いたサンプル数が少ない、検査値だけを検討していて生活習慣関連因子が考慮されていないなどの限界点がある。著者らはこれらの点を考慮し、日本人の大規模なサンプルのデータに基づく予測モデルの開発を試みた。

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     研究には、2008年10月~2019年3月に鹿児島厚生連病院で年次健康診断を受けた19万8,292人のうち、ベースラインとその5年後(範囲3~7)にも健診を受けていた30~69歳の成人5万4,198人(平均年齢54.5±10.1歳、男性46%)のデータを用いた。全体を無作為に2対1の割合で二分し、3万6,125人のデータをMetS発症予測モデルの開発に用い、1万8,073人のデータはそのモデルの精度検証に用いた。観察期間中のMetS発症率は、開発コホートが6.4%、検証コホートが6.7%だった。

     健診項目の中から、多変量解析にてMetS発症リスクに有意な関連の認められた11項目を抽出し、そのβ係数を基に各評価項目をスコア化するという手法により、合計27点のリスクスコアが完成した。評価項目とスコアは、例えば年齢は30代は0点、40~60代は2点、性別は女性0点、男性3点、喫煙2点、習慣的飲酒1点などであり、その他、BMI、収縮期/拡張期血圧、中性脂肪、HDL-コレステロール、LDL-コレステロール、空腹時血糖値が含まれている。

     このリスクスコアの開発コホートにおける向こう5年間でのMetS発症予測能は、スコア13点をカットオフ値とした場合、感度87%、特異度74%、スコア14点では感度、特異度ともに81%であり、ROC曲線下面積(AUC)は0.81だった。検証コホートでは、スコア13点で感度89%、特異度74%、スコア14では感度、特異度ともに81%であり、AUCは同じく0.81だった。

     次に、臨床現場でより簡便に使用できるように、採血を要さない項目のみに絞り込んだ簡易版を検討。以下のように7項目からなる合計17点のリスクスコアを開発した。その評価項目とスコアは、年齢は40~60代2点、男性3点、BMIは21~22.9が4点、23以上は5点、収縮期血圧は120mmHg以上で2点、拡張期血圧は80mmHg以上で2点、喫煙で2点、習慣的飲酒で1点というもの。

     この簡易版リスクスコアの開発コホートにおける向こう5年間でのMetS発症予測能は、スコア15点をカットオフ値とした場合、感度83%、特異度77%、AUC0.78、検証コホートでは、スコア15点で感度82%、特異度77%、AUCは同じく0.78だった。

     このほかに、各評価項目の検査値に係数を掛けて加算するという方程式モデルも開発。そのAUCは開発コホート、検証コホートともに0.85だった。

     著者らは、「日本人の健診データから開発された3種類のMetS発症予測モデルは、いずれも予測能が高く、特に簡易版は利便性に優れ、大規模な集団からMetSリスクの高い対象者を簡便に抽出する際に有用。これらを臨床の現場に応じて使い分けてほしい」と語っている。

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    HealthDay News 2023年5月29日
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  • 日本人では睡眠時間と内臓脂肪面積との関連が男性と女性で大きく異なる

     睡眠時間と内臓脂肪面積の関係は、男性と女性で大きく異なることを示すデータが報告された。8時間以上の長時間睡眠の男性には内臓脂肪型肥満が有意に多く、一方で長時間睡眠の女性には内臓脂肪型肥満が有意に少ないという。東京大学医学部の齊藤活輝氏、同予防医学センターの山道信毅氏らが行った日本人対象横断研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に11月24日掲載された。

     肥満は体に脂肪が過剰に蓄積した状態であり、さまざまな疾患のリスクを高める。特に、内臓の周囲に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満は、よりハイリスクな状態であることが知られている。近年、BMI(Body Mass Index;肥満指数)高値で定義される肥満と睡眠時間との間に関連のあることが分かり、そのメカニズムとして、睡眠不足によってストレスホルモンや食欲関連ホルモンの分泌、深部体温に影響が生じることなどの関与が想定されている。ただし、BMI高値より正確な肥満指標である内臓脂肪面積高値で定義される内臓脂肪型肥満と睡眠時間の関係については、特にアジアからのデータの報告はほとんどなかった。齊藤氏らはこの点を明らかにするため、日本人成人を対象とする以下の研究を実施した。

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     研究対象は、2008~2020年の人間ドック(千葉県)の健診受診者のうち、CT検査による内臓脂肪面積のデータや睡眠時間などに関するアンケート記録がある2,538人(平均年齢56.4±10.8歳、男性75.6%、BMI24.5±3.4)。内臓脂肪面積は男性116.5±47.1cm2、女性70.0±41.2cm2であり、100cm2以上を内臓脂肪型肥満とすると、男性の59.8%、女性の21.1%が該当した。睡眠時間は6.15±1.07時間であり、性別で比較すると男性の方が有意に長かった(6.18±1.06対6.05±1.08時間、P=0.004)。

     内臓脂肪型肥満群とそうでない群を性別に比較すると、男性・女性ともに内臓脂肪型肥満群は有意に高齢であり、血圧が高く、また、糖・脂質代謝指標の悪化が認められた。喫煙習慣と飲酒習慣については男性でのみ有意差があり、内臓脂肪型肥満群で現喫煙者・前喫煙者が多く、また、習慣的飲酒者が多かった。睡眠時間については男性・女性ともに、内臓脂肪型肥満の有無による有意差がなかった。

     次に、多重ロジスティック回帰分析にて、内臓脂肪型肥満と関連のある因子を検討。男性・女性ともに、年齢、BMI、中性脂肪は有意な正の関連があり、そのほかに男性では尿酸値と正の関連、HDL-Cと負の関連、女性ではHbA1cと正の関連が認められた。睡眠時間に関しては、6~7時間の群を基準として8時間以上の場合、男性は正の関連〔オッズ比1.19(95%信頼区間1.06~1.34)〕、女性は負の関連〔オッズ比0.83(同0.70~0.98)〕が認められた。

     年齢、BMI、収縮期血圧、HbA1c、HDL-C、LDL-C、中性脂肪、尿酸値、喫煙・飲酒習慣の傾向スコアを用いた共変量調整後の解析では、睡眠時間6~7時間の群を基準として8時間以上の場合、男性ではオッズ比1.64(同1.10~2.45)、女性ではオッズ比0.34(同0.12~0.97)となり、やはり男性は長時間睡眠者に内臓脂肪型肥満が多く、女性はその反対という結果が得られた。睡眠時間が5~6時間や5時間未満の短時間睡眠の群や、7~8時間の群では、性別によらずオッズ比の有意な上昇や低下は観察されなかった。

     この結果に基づき著者らは、「日本人の睡眠時間と内臓脂肪型肥満の関連は、男性と女性で大きく異なることが明らかになった」と結論付け、その背景として、「職業や収入、健康意識に関する性差といった社会的因子や、性ホルモンなどの内因的物質による影響が関係している可能性が考えられる。今後、前向き研究を含め、多角的視野からのさらなるデータ解析が必要である」との考察を加えている。また、欧米からは短時間睡眠の人にも肥満が多いというデータが報告されているが、今回の研究ではそのような関連は見られなかった。この点に関しては、人種/民族の違いのほかに、「それらの先行研究はBMIと睡眠時間の関係を評価しているものが多く、BMI高値で定義される肥満と内臓脂肪型肥満との乖離の影響も考えられる」としている。

     重要な健康指標であり、多くの疾患のリスクとなることが明らかである肥満。今後のさらなる研究の発展を期待したい。

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    HealthDay News 2023年2月27日
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  • メタボ該当者はうつ病リスクが高い――国内のコホート内症例対照研究

     メタボリックシンドローム(MetS)に該当する人は、うつ病のリスクが高い可能性のあることが報告された。名古屋大学医学部附属病院先端医療開発部の今泉貴広氏、同大学大学院医学系研究科病態内科学腎臓内科の丸山彰一氏らによる研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に11月3日掲載された。

     うつ病は労働者の精神疾患として最も一般的に見られる疾患であり、公衆衛生上の大きな問題となっている。うつ病が糖尿病や心血管疾患のリスクと関連のあることは既に知られており、さらにそれらの発症前段階に当たるMetSも、うつ病と関連のあることが報告されている。ただし、MetSとうつ病との関連を縦断的に示した研究はなく、MetS該当者が将来的にうつ病を発症しやすいのかどうかは明らかになっていない。仮にそのような関連があるとすれば、MetSによる心血管疾患の発症抑止という目的で行われている特定健診・保健指導を、うつ病予防の介入の機会とするという公衆衛生対策も可能と考えられる。このような背景のもと今泉氏らは、健診データと医療費請求データを用いて、MetS該当者がうつ病を発症しやすいのかを検討した。

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     2014~2018年度に健診を受診した18~75歳の成人13万4,677人から、腎不全患者や既に抗精神病薬が処方されている人、解析に必要なデータが欠落している人などを除外し、7万6,277人を抽出。2019年3月末まで観察し、抗うつ薬(SSRI、SNRI、NaSSAという3種類の薬)の処方状況を調査した。

     7万6,277人のうち、2,051人には観察開始時点で抗うつ薬が処方されており(既処方群)、残りの7万4,226人のうち941人は、観察期間中に抗うつ薬の処方が行われていた(新規処方群)。抗うつ薬が一度も処方されていない群(非処方群)を加えて3群を比較すると、年齢や性別(男性の割合)には有意差がないものの、MetS該当者率は既処方群が16.1%、新規処方群は16.0%であり、非処方群の11.7%より高かった。また、既処方群は他の2群に比べて糖尿病や脂質異常症の割合が高かった。

     次に、抗うつ薬の新規処方に関連する因子を検討するため、既処方群を除外した上で、性別と年齢(±3歳以内)が一致する新規処方群と非処方群を1対10の割合で割り当て、計1万915人から成るデータセットを作成し、コホート内症例対照研究を実施した。年齢、性別、喫煙・飲酒・運動・睡眠習慣、睡眠薬・抗不安薬・鎮痛薬(NSAID)の処方、心血管疾患やがんによる入院を調整した多変量解析の結果、以下に記すように、MetSであることやMetSの構成因子などの多くが、抗うつ薬の新規処方と有意に関連していることが明らかになった。

     MetS該当者に対する抗うつ薬新規処方のオッズ比(OR)は1.53(95%信頼区間1.24~1.88)、BMIは1高いごとにOR1.04(同1.02~1.06)、腹囲長は10cmごとにOR1.17(1.08~1.27)、20歳からの体重増加が10kg以上でOR1.46(1.25~1.70)、高血圧OR1.17(1.00~1.37)、耐糖能障害OR1.29(1.05~1.58)、脂質異常症OR1.27(1.08~1.51)。なお、このほかに生活習慣関連で、摂食速度が遅いこと(普通に比べてOR1.45)や睡眠不足(OR1.42)が抗うつ薬の新規処方と正の関連があり、摂食速度が速いこと(OR0.64)や飲酒習慣(めったに飲まないに比べて時々はOR0.79、毎日はOR0.65)は負の関連が認められた。

     著者らは本研究には、観察研究であり因果関係は不明なこと、SSRIなど3タイプ以外の抗うつ薬による治療を受けている人をうつ病に含めていないこと(その他の抗うつ薬はうつ病治療以外にも使われることが多いため)、非薬物治療を受けている患者やうつ病による休職中で健診を受けていない人を把握できていないことなどの限界点があるとしている。その上で、「MetSやMetS関連の代謝性疾患は労働者における抗うつ薬の新規処方と関連している。MetS該当者を特定する目的で行われている健診に、うつ病のスクリーニングという要素も追加できるのではないか」と結論付けている。

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    HealthDay News 2023年2月13日
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  • メタボ構成因子該当数とがん死リスクに有意な関連――J-MICC研究

     日本人のメタボリックシンドローム(MetS)とがん死との関係を解析した研究結果が報告された。徳島大学大学院医歯薬学研究部医科学部門社会医学系予防医学分野の有澤孝吉氏らの研究によるもので、日本の診断基準でのMetS該当者はがん死リスクが高く、またMetSの構成因子を多く有している人ほどそのリスクが高いことが分かった。詳細は「PLOS ONE」に7月8日掲載された。

     MetSは心血管疾患ハイリスク状態を早期に検出するために定義された症候群だが、がんリスク上昇とも関係のあることが示唆されている。ただし、MetSと日本人のがん死との関連についてのこれまでの研究結果は一貫性がない。有澤氏らは、国内多施設共同コホート研究「J-MICC研究」のデータを用いてこの点を検討した。

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     J-MICC研究は、日本人の生活習慣病リスクの解明を目的として2005年から14カ所で継続されている前向きコホート研究。この参加者のうち、ベースライン時点でがん・脳心血管疾患の既往のある人や解析に必要なデータが欠落している人を除外し、2万8,554人(男性49.4%)を解析対象とした。MetSの判定には、米国コレステロール教育プログラム治療パネルIII(NCEP ATP III)の基準を用い、腹囲長の代わりに肥満の判定基準であるBMI25以上を使用した。また、日本肥満学会(JASSO)によるMetSの判定基準のうち、腹囲長高値をBMI25以上に置き換えた場合での検討も加えた。

     MetS該当者はNCEP ATP III基準で16.5%、JASSO基準では8.9%だった。平均6.9年間の追跡で396人が死亡し、そのうち192人ががん死だった。

     がん死リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、閉経前/後、喫煙・飲酒・運動習慣、教育歴など)を調整後、NCEP ATP III基準でのMetSに該当することは、がん死リスクと有意な関連が見られなかった〔ハザード比(HR)1.09(95%信頼区間0.78~1.53)〕。MetSの構成因子別にがん死リスクとの関連を検討すると、高血糖(空腹時100mg/dL以上)のみが有意であり〔HR1.41(同1.05~1.89)〕、肥満、血圧高値、中性脂肪高値、HDL-コレステロール低値は有意な関連がなかった。

     一方、JASSO基準でMetSに該当することは、がん死リスクの上昇と有意な関連があった〔HR1.51(1.04~2.21)〕。MetSの構成因子別にがん死リスクとの関連を検討すると、やはり高血糖(空腹時110mg/dL以上)のみが有意であり〔HR1.74(1.27~2.39)〕、他の因子は有意な関連がなかった。

     次に、MetS構成因子の数とがん死リスクの関連を検討した結果、NCEP ATP III基準ではわずかに非有意だった(傾向性P=0.06)。一方、JASSO基準では該当する因子数が多いほどがん死リスクが高いという有意な関連が認められた(傾向性P=0.01)。より具体的には、該当因子がない場合に比べて、該当因子数が2項目でHR1.65(1.06~2.56)、3項目以上ではHR1.79(1.11~2.89)だった。

     続いて、非肥満でMetS構成因子のない群、非肥満でMetS構成因子が一つ以上該当する群、肥満ながらBMI高値以外のMetS構成因子のない群、肥満でBMI高値以外のMetS構成因子が一つ以上該当する群という4群に分け、がん死リスクを比較検討した。その結果、NCEP ATP III基準で分類した場合と、JASSO基準で分類した場合ともに、肥満でBMI高値以外のMetS構成因子が一つ以上該当する群でのみ、有意なリスク上昇が認められた〔非肥満でMetS構成因子のない群に比較して、NCEP ATP III基準での比較ではHR1.76(1.10~2.80)、JASSO基準ではHR1.69(1.09~2.63)〕。

     このほか、JASSO基準でのMetS該当者で見られたがん死リスクの上昇を、がんの部位別に検討すると、胃、大腸、肝臓、膵臓のがんによる死亡でハザード比が1を上回っていたが、有意なリスク上昇は大腸がんでのみ認められた〔HR2.95(1.04~8.40)〕。

     まとめると、日本のMetS基準の腹囲長をBMIに置き換えた基準でMetSに該当する場合、がん死の有意なリスク上昇が認められ、かつMetS構成因子の該当数が多いほどそのリスクが高かった。特に高血糖ががん死リスクの上昇と関連していた。また、肥満かつMetS構成因子を有する「代謝的に不健康な肥満」でがん死リスクが高いことも明らかになった。

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    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2022年8月29日
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  • 笑いは体にも心にも良い――メタボ因子のある日本人でのRCT

     笑うことは、体と心の双方に良い影響を及ぼすことを示す研究データが報告された。福島県立医科大学疫学講座の舟久保徳美氏、大平哲也氏らが、国内3カ所でメタボリックシンドローム(MetS)リスクのある地域住民を対象に行った、無作為化比較試験(RCT)の結果であり、詳細は「BMC Geriatrics」に4月23日掲載された。

     近年、笑うことがメンタルヘルスだけでなく身体的健康にも良い影響を与えることを示した研究報告が増えている。ただ、多くの研究は、同一対象の介入前と介入後の変化を評価したものであり、また、メンタルヘルスと身体的健康という双方への影響を同時に検討した研究は少ない。それに対して大平氏らの研究は、200人以上の地域住民を介入群と対照群に分けて、笑いによる体と心への影響を、多施設共同RCTで評価した点が特徴と言える。

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     この研究には、福島県立医科大学、大阪大学、岡山大学の研究者が参画し、各大学周辺の地域住民から新聞広告などを通じて参加者が募集された。研究参加の適格条件は、MetSの構成因子(腹部肥満や糖代謝異常、高血圧、脂質異常など)を一つ以上持つ40~79歳の成人で、重度の心血管疾患や脳卒中後遺症のないこと。235人(平均年齢66.9歳、女性84.3%)が集まり、性別、年齢、BMIが偏らないように調整した上で無作為に2群に分け、1群を介入群とした。

     介入群に対しては、プロの噺家による落語の鑑賞、笑いヨガの実践、笑いと健康に関する講義などで構成された90分のプログラムを受ける機会が、12週間で8~10回提供された。このプログラム提供期間の前後での、BMIや健康関連の生活の質(HRQOL)、主観的ストレス・幸福感、うつ症状(GDS-15)などの変化を評価した。ベースライン時点で介入群と対照群の間に、年齢、性別(女性の割合)、BMI、飲酒・喫煙・運動習慣、笑う頻度、および、ストレスやうつ状態などのメンタルヘルス関連指標の有意差はなかった。

     年齢、性別、MetS構成因子該当数、処方薬剤数、研究地域などの影響を調整後、介入群は対照群よりも、複数の評価指標の大きな改善が認められた。例えば、体重(P=0.008)、BMI(P=0.006)の低下幅は介入群の方が有意に大きかった。また、主観的ストレス(P=0.004)、主観的幸福感(P=0.002)、楽観主義(P=0.03)のスコアも、介入群の改善幅の方が有意に大きかった。

     さらに、HRQOLで把握した健康関連の生活の質のうち、身体的側面を表すPCSスコアもやはり、介入群の改善幅の方が有意に大きかった(P=0.04)。加えて、このPCSスコアの変化とBMIの変化との間には、有意な負の相関が認められた(r=-0.19、P=0.04)。

     著者らは、本研究は自主的に応募した参加者を対象としているため、笑いに興味のある人の多い集団であった可能性があるという選択バイアスの存在など、解釈上の留意点が存在するとしている。その上で、「笑うことがストレスを軽減してメンタルヘルスを改善することにより、メタボリックシンドロームのリスク因子を持つ人の体重を減らすのに役立つのではないか」と結論付けている。

     なお論文中では、「声を出して笑うことによって消費エネルギー量が10~20%増加すると報告されており、笑いが有酸素運動としての効果も発揮するのではないか」との文献的考察も加えられている。また、介入群に割り付けられた人は、介入中に他者との出会いの機会が大幅に増加するという変化も認められたという。

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    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2022年6月13日
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