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8月 28 2023 シンデレラ体重の若年日本人女性の栄養不良の実態が明らかに
国内で増加している低体重若年女性の栄養状態を、詳細に検討した結果が報告された。栄養不良リスクの高さや、朝食欠食の多さ、食事の多様性スコア低下などの実態が明らかにされている。藤田医科大学医学部臨床栄養学講座の飯塚勝美氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に5月7日掲載された。
日本人若年女性に低体重者が多いことが、近年しばしば指摘される。「国民健康・栄養調査」からは、20歳代の女性の約20%は低体重(BMI18.5未満)に該当することが示されており、この割合は米国の約2%に比べて極めて高い。BMI18未満を「シンデレラ体重」と呼び「美容的な理想体重」だとする、この傾向に拍車をかけるような主張もソーシャルメディアなどで見られる。実際には、女性の低体重は月経異常や不妊、将来の骨粗鬆症のリスクを高め、さらに生まれた子どもの認知機能や成人後の心血管代謝疾患リスクに影響が生じる可能性も指摘されている。とはいえ、肥満が健康に及ぼす影響は多くの研究がなされているのに比べて、低体重による健康リスクに関するデータは不足している。
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次に、女性のみ(1,457人、平均年齢28.25±4.90歳)を低体重(BMI18.5未満)245人、普通体重(同18.5~25.0未満)1,096人、肥満(25.0以上)116人の3群に分類して比較すると、低体重群は他の2群より有意に若年で、握力が弱かった。栄養状態のマーカーである総コレステロールは同順に、177.8±25.2、184.1±29.2、194.7±31.2mg/dL、リンパ球は1,883±503、1,981±524、2,148±765/μLであり、いずれも低体重群は他の2群より有意に低値だった。一方、HbA1cは肥満群で高値だったものの、低体重群と普通体重群は有意差がなかった。
続いて、極端な低体重のため二次健診を受診した女性56人を対象として、より詳細な分析を施行。この集団は平均年齢32.41±10.63歳、BMI17.02±0.69であり、総コレステロール180mg/dL未満が57.1%、リンパ球1,600/μL未満が42.9%、アルブミン4mg/dL未満が5.3%を占めていた。その一方で39%の人がHbA1c5.6%以上であり、糖代謝異常を有していた。なお、バセドウ病と新規診断された患者が4人含まれていた。
20~39歳の44人と40歳以上の12人に二分すると、BMIや握力、コレステロールは有意差がなかったが、リンパ球数は1,908±486、1,382±419/μLの順で、後者が有意に低かった。また、アルブミン、コレステロール、リンパ球を基にCONUTという栄養不良のスクリーニング指標のスコアを計算すると、軽度の栄養不良に該当するスコア2~3の割合が、前者は25.0%、後者は58.3%で、後者で有意に多かった。
極端な低体重者の摂取エネルギー量は1,631±431kcal/日であり、炭水化物と食物繊維が不足と判定された人の割合が高く(同順に82.1%、96.4%)、一方でコレステロールの摂取量は277.7±95.9mgと比較的高値だった。また、28.6%は朝食を抜いていて、食事の多様性スコア(DDS)は、朝食を食べている人の4.18±0.83に比べて朝食欠食者は2.44±1.87と有意に低いことが明らかになった。
極端な低体重者は微量栄養素が不足している実態も明らかになった。例えば鉄の摂取量が10.5g/日未満やカルシウム摂取量650mg/日未満の割合が、いずれも96.4%を占めていた。血液検査からはビタミンD欠乏症の割合が94.6%に上り、ビタミンB1やB12の欠乏も、それぞれ8.9%、25.0%存在していることが分かった。さらに、40歳未満の13.6%に葉酸欠乏症が認められ、その状態のまま妊娠が成立した場合の胎児への影響が懸念された。
これらの結果に基づき著者らは、「日本人若年低体重女性は潜在的にビタミン欠乏症になりやすいことが判明した。将来の疾患リスクや低出生体重児のリスクを考えると、低体重者への食事・栄養指導が重要と考えられる」と総括している。
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3月 07 2023 女性や北国の人はビタミンDの摂取量が多いほど死亡リスクが低い
ビタミンDの摂取量が多い女性は死亡リスクが低いことが、日本人を対象とする研究から明らかになった。福岡女子大学国際文理学部食・健康学科の南里明子氏らが、国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)のデータを解析した結果であり、詳細は「European Journal of Epidemiology」に1月31日掲載された。高緯度地域の居住者、カルシウム摂取量の多い人などでも、ビタミンD摂取量が多い群では少ない群に比べ死亡リスクが低い傾向があるという。
ビタミンDが骨の健康に重要であることは古くから知られている。しかし近年はそればかりでなく、血液中のビタミンDレベルの低さが、がんや循環器疾患、糖尿病、抑うつ、新型コロナウイルスを含む感染症など、さまざまな疾患の罹患リスクや死亡リスクの高さと関連のあることが報告されてきている。ただしビタミンDは、皮膚に紫外線が当たった時に多く産生されるため、食事からの摂取量と血液中のビタミンレベルとの相関が、ほかの栄養素ほど高くない。その影響もあり、ビタミンDの摂取量と死亡リスクとの関連についてのこれまでの研究結果は一貫性を欠いている。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。今回、南里氏らは、日光を避けることの多い女性や高緯度地域に住んでいる人は、皮膚でのビタミンD産生量が少ないため、食事からのビタミンD摂取量の多寡が死亡リスクに影響を及ぼしている可能性を想定。また、ビタミンDの吸収を高めるカルシウム摂取量の多い人、何らかの疾患があり死亡リスクの高い人なども、摂取量の多寡の違いが強く現れているのではないかと考え、性別や居住地、栄養素摂取量、併存疾患などの特徴別に、ビタミンD摂取量と死亡リスクの関連を検討した。
研究対象は、1990年と1993年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、茨城県水戸、東京都葛飾区、新潟県長岡、大阪府吹田、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古など11の保健所管内に居住していた40~69歳の成人のうち、研究開始5年後の食事調査に回答し、かつ、がんや循環器疾患などに罹患していなかった9万3,685人(女性54.1%)。2018年12月まで追跡して、食事調査時のビタミンD摂取量と追跡期間中の死亡リスクとの関連を解析した。
平均18.9年(176万8,746人年)の追跡で、2万2,630人が死亡。年齢、性別、研究地域で調整後、ビタミンD摂取量の第1五分位群(下位20%)に比べて、第2~第5五分位群は全死亡のハザード比が有意に低かった(傾向性P=0.021)。ただし、調整因子にBMI、喫煙・飲酒・運動習慣、糖尿病や高血圧の既往、摂取エネルギー量、カルシウムやオメガ3脂肪酸の摂取量、緑茶・コーヒー・サプリメントの摂取、職業などを加えると、有意性が消失した(同0.29)。
次に、事前に作成した解析計画に沿って、性別や居住地の緯度などで層別化したサブグループ解析を実施。その結果、女性はビタミンD摂取量が多いほど全死亡リスクが低いという有意な関連のあることが明らかになった(傾向性P=0.001)。また、高緯度地域の居住者やカルシウム摂取量が中央値以上の人、高血圧の既往のある人では、摂取量の第1五分位群に比べて第2~第5五分位群は全死亡ハザード比が有意に低かった(傾向性P値は同順に、0.085、0.19、0.058)。
続いて死因に着目すると、ビタミンD摂取量が多いほど脳梗塞による死亡のリスクが低いという有意な関連が認められ(傾向性P=0.029)、肺炎も有意に近い傾向が認められた(同0.09)。脳梗塞以外の脳・心血管疾患やがんによる死亡リスクについては、ビタミンD摂取量との有意な関連が見られなかった。
これらの結果を基に著者らは、「日光にあまり当たらない人や高緯度地域に住む人は食事からのビタミンD摂取を増やすことで、早期死亡リスクが抑制される可能性がある」と結論付けている。なお、ビタミンDを多く含む食品として、青魚やキノコなどが挙げられる。
著者の1人である国立国際医療研究センター疫学・予防研究部の溝上哲也氏は、「日光を浴びる機会が少ない現代の生活様式がコロナ禍で加速しており、食事からビタミンDを摂取することの重要性が高まっている」とコメントしている。
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9月 26 2022 85歳以上で身体活動量が多い人の食習慣――慶大TOOTH研究
85歳以上の日本人500人以上を対象に、食事の傾向や身体活動習慣を調査した結果が報告された。高齢者の食習慣の特徴が浮かび上がるとともに、多くの植物性食品を取っている人はそうでない人よりも身体活動量が有意に多いことなどが明らかになった。慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科の小熊祐子氏、於タオ氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に7月17日掲載された。
質の高い食生活や活発な身体活動が健康の維持・増進につながることは広く知られている。ただし、それら両者の相互関係は十分研究されておらず、また、食事や身体活動に関するこれまでの研究の多くは、非高齢者または高齢者の中でも比較的若い世代を対象に行われてきている。こうした中、同大学百寿総合研究センターの新井康通氏らは、85歳以上の高齢者の健康に関する包括的研究「TOOTH(The Tokyo Oldest Old Survey on Total Health)研究」を実施している。小熊氏らは、このTOOTH研究の参加者のベースラインデータを用いて、85歳以上の日本人の食習慣の特徴を探るとともに、身体活動量と関連のある食事パターンの特定を試みた。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。TOOTH研究の参加者は、2008~2009年に同大学病院から6km以内に居住する85歳以上の住民から無作為に抽出され、研究参加に同意した542人が登録された。このうち、データ欠落のない519人を今回の研究の解析対象とした。年齢は中央値87.3歳、男性42.2%、BMI21.4、独居者33.9%であり、MMSE(認知機能の指標)は中央値27(四分位範囲25~29)、バーゼル指数〔日常生活動作(ADL)の指標〕は同100(95~100)であって、認知機能や身体機能が維持されている人が大半を占めていた。
登録時に行った、過去1カ月間での日常的な食品の摂取に関するアンケートの回答を基に、主成分分析という方法で特徴的なパターンを検討。その結果、緑黄色野菜などの多様な植物性食品、魚ときのこ、ご飯とみそ汁という3つの食品群の摂取割合の多寡により、食習慣を特徴付けられることが分かった。
1つ目の多様な植物性食品を特徴とする食事パターンの主成分得点(主成分分析で得られるスコアで-1~1の範囲で表し、1に近いほどその食事パターンへの傾向が高いことを意味する)の中央値で二分し、栄養素摂取量を比較。すると、植物性食品の摂取割合の高い群は低い群に比べて、タンパク質、脂質、食物繊維、および大半の微量栄養素(ビタミンとミネラル)の摂取量が多く、炭水化物の摂取量は少なかった。2つ目の魚ときのこの摂取割合の多寡で二分した比較も、それとほぼ同様の結果だった。3つ目の食事パターン(ご飯とみそ汁)の主成分得点の中央値で二分した比較では、タンパク質と炭水化物の摂取量は有意差がなく、脂質の摂取量はご飯・みそ汁の摂取割合が高い群の方が有意に少なかった。
次に、これら3つの違いで特徴付けられる食事パターンと、身体活動量との関連を検討。その結果、多様な植物性食品の摂取割合が高い群は低い群に比べて、ウォーキング、および、エクササイズ(筋力トレーニングや柔軟体操)による運動量(メッツ×時間)が多く、PAI(身体活動量の指標)が高いという有意差が認められた。また、2つ目の食事パターン(魚ときのこ)の高傾向群は低傾向群に比較し、エクササイズによる運動量が多いという有意差が認められたが、ウォーキングによる運動量やPAIには有意差がなかった。3つ目の食事パターンの低/高傾向群の比較では、ウォーキングやエクササイズでの運動量、PAIのいずれにも有意差がなかった。
続いて、年齢、性別、BMI、ADL、MMSE、喫煙習慣、教育歴、就労・経済状況、糖尿病・高血圧・脂質異常症・腎臓病・心臓病・がんの既往を調整後、食事パターンと身体活動との関連を検討した。すると、多様な植物性食品を特徴とする食事パターンへの傾向と、エクササイズによる運動量〔偏回帰係数(B)=0.64(95%信頼区間0.02~1.25)、P=0.04〕、およびPAI〔B=1.41(同0.33~2.48)、P=0.01〕との間に、有意な正の関連が認められた。
著者らは本研究を、「85歳以上の高齢者集団で食事パターンと身体活動量との関連を検討した初の研究」としている。限界点として、研究参加者が都心部に居住し、かつ外出可能な身体機能が維持されている人に限られていること、横断研究のため因果関係には言及できないことなどを挙げた上で、「85歳以上であっても、より健康的な食習慣が身体活動量の多さと関連していることが示唆された」と結論をまとめている。
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軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
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3月 03 2022 たんぱく質の推奨量を満たすには1日何品食べるべき?:京都亀岡研究
高齢者がたんぱく質摂取推奨量を満たすためには、1日20品目以上を目安に食事を取ると良いことを示唆するデータが報告された。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の渡邉大輝氏らの研究によるもので、「Geriatrics & Gerontology International」2月号にレターとして研究結果が掲載された。
筋肉量や筋力は30歳過ぎから低下し始め、高齢になるとその影響が顕著に表れ、人によってはサルコペニアやフレイルによる要介護リスクが高まる。それに対して、たんぱく質摂取量と除脂肪体重(筋肉や骨などの重量)には用量反応関係があることがメタ解析から報告されており、たんぱく質をしっかり摂取することが、高齢者にとって重要と考えられる。たんぱく質摂取量の目安として、厚生労働省が5年ごとに策定している「日本人の食事摂取基準」の最新版(2020年版)では、高齢者に対し男性60g/日、女性50g/日という推奨量を示している。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。一方、食事の多様性が高い高齢者ほど身体能力が高く関連することが、日本人対象の研究結果として報告されている。よって、たんぱく質摂取量を確保するには、食事の品数が多い方が有利と考えられる。しかし、1日に何品目の食事を取れば、「日本人の食事摂取基準」の推奨量を満たせるのかというカットオフ値は分かっていない。渡邉氏らは、このカットオフ値を明らかにする目的で、以下の検討を行った。
検討には、京都府亀岡市で行われている「京都亀岡研究」のデータを用いた。京都亀岡研究は、介護予防の推進と検証を目的として2011年にスタートした前向きコホート研究。今回の研究では、2012年5~6月の7日間の食事記録のデータが利用可能な、65~88歳の高齢者143人(女性65人、男性78人)を解析対象とした。その平均年齢(標準偏差)は73.2(5.3)歳、BMIは22.8(3.2)kg/m2だった。食品数は、2013年に実施された国民健康・栄養調査で使用された評価方法を基に算出した。
食事記録から、対象者の平均エネルギー摂取量(標準偏差)は1,943(301)kcal/日であり、1日の摂取品目数は23.1(7.3)品目、1日の摂取たんぱく質量は73.6(12.7)g/日であった。女性の13.4%、男性の18.1%が、前記のたんぱく質摂取推奨量を満たしていなかった。
ROC解析の結果、たんぱく質摂取推奨量を満たすための食品数のカットオフ値は、女性、男性ともに20品目であることが分かった(女性は感度60.9%、特異度67.2%、男性は感度63.4%、特異度71.0%)。ROCのAUCは女性0.702(95%信頼区間0.631~0.774)、男性0.738(同0.686~0.789)と計算された。また、食品数を1つ増やすと1日のたんぱく質摂取量が、女性では2.4g(同1.5~3.2)、男性では2.2g(同1.5~2.9)増加することも分かった。
1985年に厚生省(現:厚生労働省)が発表した「健康づくりのための食生活指針」では、バランスの良い食事のために1日30品目を摂取することが推奨されていた。ただし、この値のエビデンスが不十分なことから、この推奨は改訂された2000年版では削除され現在に至っている。米国心臓協会でも、さまざまな食品数を摂取する食事の多様性が成人の体重増加や肥満と関連する可能性が示唆されるため、肥満予防の効果的な戦略ではないことが示されている。それに対して今回の研究から、1日20品目がたんぱく質摂取量に関する目安になることが示された。
著者らは、「肥満よりも痩せの問題を有する高齢者においては、食品の多様性が体重の増加や必要なたんぱく質摂取量の確保に有効である可能性がある。1食につき7品目として、1日3食食べることで、高齢者のサルコペニアやフレイルを予防できる可能性がある」と述べている。
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12月 13 2021 中年期でも口の健康と栄養状態が有意に関連
口腔機能が低下している高齢者は栄養状態も良くないことが知られているが、このような関連は非高齢者でも認められることが明らかになった。東京歯科大学老年歯科補綴学講座の上田貴之氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical and Experimental Dental Research」に11月17日掲載された。
口腔機能の軽度の低下を表す「オーラルフレイル」が近年、フレイル(要介護予備群)の表現型の一つとして注目されている。口腔機能低下のために栄養状態に影響が生じ、両者の相互作用によって心身機能が加速度的に低下してしまうことから、高齢者のオーラルフレイルには早期介入が求められる。ただし、このようなオーラルフレイルのリスクは高齢者だけでなく、中年期から生じている可能性がある。しかしその実態はこれまで検討されていない。上田氏らの研究はこの点に着目したもの。
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口腔機能は、残存歯数、口腔水分、口唇と舌の巧緻性、舌圧、口唇閉鎖力、および咀嚼能力で評価した。一方、栄養状態は、BMI、除脂肪量指数(FFMI)、および骨格筋量指数(SMI)で評価した。
まず、評価結果を性別で比較すると、舌圧、口唇閉鎖力、BMI、FFMI、SMIは男性の方が高値であり、群間差が有意だった。その他の評価項目は性別による有意差はなかった。
具体的には、口腔機能のうち舌圧は、男性が40.1±8.3kPa、女性は34.9±7.0kPaであり(P<0.01)、口唇閉鎖力は同順に13.6±3.9N、12.0±3.1N(P=0.04)だった。栄養状態はBMIが男性23.7±2.6kg/m2、女性22.7±4.2kg/m2、FFMIは18.3±1.5kg/m2、15.6±1.6kg/m2、SMIは10.2±1.0kg/m2、8.4±1.0kg/m2だった(いずれもP<0.01)。なお、残存歯数は中央値27で、義歯装着者は2人、インプラント装着者は1人だった。
栄養状態関連指標を目的変数、口腔状態関連指標を説明変数とする線形重回帰分析の結果、以下のように全ての栄養関連指標について、舌圧および口唇閉鎖力が低いほど低値という有意な関連が認められた。BMIに関しては舌圧がβ=0.204(P=0.047)、口唇閉鎖力がβ=0.252(P=0.015)、FFMIは舌圧β=0.156(P=0.048)、口唇閉鎖力β=0.208(P=0.009)、SMIは舌圧β=0.149(P=0.048)、口唇閉鎖力β=0.200(P=0.009)。また、FFMIとSMIは性別も有意な関連があり、女性で低値だった。
以上より著者らは、「中年期成人においても口腔機能が低下している人の存在が認められる」とした上で、「歯科医院外来の中年期患者では、舌圧と口唇閉鎖力がBMI、FFMI、およびSMIと正相関している」とまとめ、高齢者だけでなく中年期成人においても口腔機能と栄養状態に関連があると結論付け、「舌圧と口唇閉鎖力を測定することで、BMIやFFMI、SMIなどで把握される栄養状態を推定可能と考えられる」と述べている。
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7月 19 2021 甘い飲み物の摂取量と死亡リスクが相関――JPHC研究
甘味飲料の摂取量が多いことと、全ての原因による死亡(全死亡)、および循環器疾患や心疾患による死亡リスクの高さが有意に関連していることが、日本人を対象とした研究から明らかになった。一方、がん死や消化器疾患、脳血管疾患などによる死亡リスクとは有意な関連がないことも分かった。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「Preventive Medicine」7月号に掲載された。
甘味飲料の摂取量が多いことは、体重増加や糖尿病、がん、脳血管疾患のリスクと関連しており、さらに欧米からは死亡リスクとも関連することが報告されている。一方、アジアからは欧米と異なり、甘味飲料の摂取量と死亡リスクとの間に関連はないとの報告がある。また日本人対象の疫学研究の結果はこれまで報告されていない。
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追跡期間中に1万1,811人が死亡していた。死因は、がん4,713人、循環器疾患2,766人、心疾患1,412人、脳血管疾患1,088人、呼吸器疾患888人、消化器疾患433人だった。死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、摂取エネルギー量、コーヒーや緑茶の摂取量、高血圧の既往、居住地域)を統計学的に調整後、以下のような関連が明らかになった。
甘味飲料摂取量の第1五分位群(摂取量が最も少ない下位20%)に比較して、第5五分位群(摂取量が最も多い上位20%)は全死亡リスクが1.15倍高く〔ハザード比(HR)1.15(95%信頼区間1.09~1.22)〕、甘味飲料摂取量が多いほど全死亡リスクが高いという有意な関連が認められた(傾向性P<0.001)。また、第5五分位群は第1五分位群に比較して、循環器疾患による死亡がHR1.23(同1.09~1.38)であり(傾向性P=0.02)、心疾患による死亡はHR1.35(同1.14~1.60)と(傾向性P=0.01)、摂取量の多さがリスクの高さと関連していた。
一方で、がん死や、脳血管疾患、呼吸器疾患、消化器疾患による死亡リスクについては、甘味飲料摂取量との有意な関連が見られなかった。
これらの結果は欧米の先行研究と同様で、アジアの先行研究とは異なると言える。その理由として著者らは、甘味飲料を摂取している人の割合の違いが関係している可能性を考察している。すなわち本研究では、月に1度以上甘味飲料を摂取する人の割合が85%であり、アジアの先行研究での26%よりも欧米の先行研究での58~76%に近かった。
また、甘味飲料の摂取が循環器疾患や心疾患による死亡リスクと関連していたことについては、「甘味飲料は血糖値やインスリン濃度を上昇させるグリセミックインデックスが高く、心血管系や代謝系の機能へ悪影響を及ぼす可能性がある」と述べている。
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糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。
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5月 25 2021 1日350gの野菜摂取で日本人の疾病負担は大きく減る
厚生労働省などが推進している国民健康づくり運動「健康日本21」では、成人の1日の野菜摂取量を350g以上とする目標が掲げられているが、この目標が達成できた場合、日本人の疾病負担を大きく減らせるという予測分析の結果が報告された。東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室の田中詩織氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Public Health」に4月21日掲載された。
野菜の摂取量が少ないことは、さまざまな疾患のリスク因子の一つとして知られている。しかし日本人の野菜摂取量は年々減少していることが報告されている。このような状況を背景として田中氏らは、予測される日本人の野菜摂取量の変化と、その変化が心血管疾患、がん、糖尿病性腎臓病に伴う障害調整生命年(disability-adjusted life years;DALYs)にどのように影響するかを試算した。DALYsは、疾病による障害や早期死亡のために失われた健康的な生活の損失の程度を表す指標で、数値が小さいほど疾病負担が少ないことを意味する。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。野菜摂取量は、1995年以降の国民健康・栄養調査のデータを基に、近年の摂取量減少傾向がそのまま続くと仮定したシナリオ1のほかに、以下の3パターンを設定した。シナリオ2は、健康日本21が掲げている1日平均350gという目標が2023年に達成され、その後はそのまま2040年まで維持されるという最善のシナリオ。シナリオ3は、1日平均350gという目標が2040年に達成されるという二番目に良いシナリオ。シナリオ4は、2004年(野菜価格高騰のため摂取量が過去最低だった年)の摂取量である1日240.2gに向かって2040年まで減り続けるというシナリオ。ただしシナリオ4でも、シナリオ1での予測値(2040年時点で1日平均237.7g)よりも、摂取量が多い状態で推移する。
DALYsについては、2017年の世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease;GBD)の日本のデータと、1990~2016年の社会人口統計学的データ(性・年齢別の人口構成など)、および喫煙・飲酒習慣、BMIなどのデータを基に、統計学的手法により2040年までの変化を予測した。その結果、全年齢で見た場合、平均寿命が延長するためDALYs自体は上昇するものの、野菜摂取量が増えるシナリオではその上昇が抑制されることが明らかになった。
例えば20~49歳の女性の心血管疾患によるDALYsは、2040年にシナリオ1では298.8(95%信頼区間290.5~307.4)であるのに対し、シナリオ2では274.8(同267.2~282.7)、シナリオ3でも263.1(同255.8~270.6)であり、95%信頼区間が重複しなかった。また、がんについては全年齢の男女合計でも、シナリオ1の5510.8(同5372.1~5653.2)に対し、シナリオ2が5201.5(同5070.5~5335.9)、シナリオ3が5201.6(同5070.7~5336.0)であり、有意に抑制されることが分かった。糖尿病性腎臓病については、男性のシナリオ1が1965.9(同1928.3~2004.4)に対し、シナリオ2では1804.2(同1769.6~1839.5)と有意に低値だった。
全体的に20~49歳の女性の野菜摂取量が増えた場合に、DALYsが大きく低下する傾向が認められた。これは、若年女性の野菜摂取量が将来的に低下すると予測されることが一因という。なお、シナリオ1とシナリオ4とでは、有意な違いは発生しないと考えられた。
これらの結論として著者らは、「野菜摂取量が増えると、日本人の心血管疾患、がん、糖尿病性腎臓病のDALYsが大幅に軽減される」とまとめている。また、今回の研究について、「野菜摂取量が少ないことに起因する疾病負担を推定することにより、公衆衛生上の課題に対する的を絞った介入の設計に有用な情報を得ることが可能になる」と、研究の意義を述べている。
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5月 13 2021 ビタミン摂取量が多い女性は身体的QOLが高い――志賀町研究
ビタミンの摂取量と女性の生活の質(QOL)に有意な関連があることが、日本人対象の研究から明らかになった。全種類のビタミン摂取量が、身体的側面のQOLを表すスコアと正相関し、かつ、一部のビタミンの摂取量は精神的なQOLのスコアとも正相関するという。ただし男性では、ビタミン摂取量とQOLの間に有意な関連は見られないとのことだ。
この研究は、石川県志賀町で行われている生活習慣病に関する住民対象研究「志賀町研究」のデータを用いて、金沢大学医薬保健研究域医学系環境生態医学・公衆衛生学の成川暢彦氏らが行った横断研究。結果の詳細は、「Nutrients」に3月22日掲載された。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。研究の対象は、志賀町研究参加者のうち、「SF-36」というQOL評価のためのアンケートに回答した40~99歳の3,202人(平均年齢は男性63.3歳、女性64.5歳)。食事アンケートに基づいて、14種類のビタミン摂取量を推計した(レチノールは活性当量も評価)。なお、サプリメントからの栄養素摂取は評価しなかった。また、摂取エネルギー量が600kcal/日未満または4,000kcal/日以上の人は、解析対象から除外した。
QOL評価に用いたSF-36は、過去4週間の8つの健康指標(身体機能、体の痛み、活力、社会的機能など)をアンケートの回答を基に判定するもので、国際的に頻用されており、疾患の有無にかかわらず評価可能であることが検証されている。本研究では、それら8つの指標を「身体的スコア」、「精神的スコア」、「役割/社会的スコア」という3つの要約スコアに統合。男性、女性ごとに各スコアの高値群と低値群に二分し、ビタミン摂取量との関連を検討した。
年齢やBMI、喫煙・飲酒・身体活動習慣、糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療などで調整後、男性では、精神的スコア高値群のビタミンB2摂取量が、スコア低値群より有意に多かった。しかし、身体的スコアや役割/社会的スコアに関しては、高値群と低値群とで摂取量に有意差のあるビタミンはなく、精神的スコアについてもビタミンB2以外の13種類は有意差がなかった。
一方、女性では、身体的スコア高値群は、ビタミンB2、B6、B12、ナイアシン、葉酸、ビタミンC、ビタミンKなど10種類のビタミン摂取量が、スコア低値群より有意に多かった。また、精神的スコア高値群は低値群より、ビタミンB6とナイアシンの摂取量が有意に多かった。役割/社会的スコアの高低では、ビタミン摂取量に有意差はなかった。
女性の身体的スコアおよび精神的スコアを目的変数、ビタミン摂取量を説明変数とする重回帰分析の結果、身体的スコアに関しては全てのビタミン摂取量と有意な正の相関が認められ、精神的スコアに関してはビタミンB6、葉酸、ビタミンCの摂取量と有意な正の相関が認められた。
著者らは本研究を、「大規模データに基づきビタミン摂取量とQOLの関連を性別に検討した初の研究」としている。一方、ビタミン摂取量の評価が自記式食事記録に基づく推計値のため精度が高くないことを、研究の限界点として挙げている。その上で、「横断研究であるため因果関係は不明だが、ビタミン不足は女性のQOLを低下させる可能性がある」と結論付けている。
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10月 24 2020 日本食で死亡リスクが低下――JPHC研究
日本食は、やはり体に良いようだ。日本食パターンのスコアが高い食生活を送っている人ほど死亡リスクが低いという、縦断研究の結果が報告された。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「European Journal of Nutrition」7月16日オンライン版に掲載された。
今回の研究の対象者は、1995年と1998年に、全国11カ所の保健所管轄区域に住んでいた45~74歳の住民のうち、食事調査アンケートに回答した10万2,341人から、がん、脳卒中、心筋梗塞、慢性肝炎などの既往のある人や、摂取エネルギー量が極端に偏っている人(上位または下位2.5%以内)を除外した9万2,969人で、平均年齢は56.5±7.8歳、男性が45.9%。この人たちを2016年まで追跡して、食生活の日本食パターンと死亡リスクとの関連を調査した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。どのような食生活が日本食パターンに近いかは、ご飯、みそ汁、海藻、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶の摂取量の多さと、牛肉・豚肉の摂取量の少なさを点数化する「日本食インデックス(8-item Japanese Diet Index;JDI8)」を用いてスコア化し評価した。対象者全体をJDI8スコアで四分位に分け、18.9年(中央値)追跡した。追跡率は99.7%だった。
追跡期間中に2万596人(22.2%)の死亡が確認された。年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、摂取エネルギー量、降圧薬・脂質低下薬・血糖降下薬の使用、職業などで調整後、JDI8スコアの第1四分位群(スコアが最も低い群)を基準に、他の四分位群の、全死亡、がん死、循環器疾患死、心疾患死、脳血管疾患死のリスクを解析した。
その結果、第4四分位群(スコアが最も高い群)の全死亡のハザード比(HR)は0.86(95%信頼区間0.81~0.90)で、リスクが14%有意に低かった。さらに第3四分位群(HR0.91)や第2四分位群(HR0.95)も有意にリスクが低く、日本食パターンのスコアがより高いほど全死亡のリスクが低下するという関係が認められた(傾向性P<0.001)。循環器疾患死(傾向性P=0.007)や心疾患死(傾向性P=0.037)にも、同様の有意な関係が認められた。一方、がん死や脳血管疾患死のリスクとJDI8スコアとの間には、有意な関係が確認できなかった。
続いて、JDI8で評価した8種類の食品それぞれの摂取量を「多い/少ない」の2群にわけ、「少ない」群を基準に「多い」群の全死亡のリスクを検討。すると、海藻の摂取量が多い群はHR0.94で、リスクが6%有意に低かった。同様に、漬物ではHR0.95、緑黄色野菜ではHR 0.94、魚介類ではHR 0.97、緑茶ではHR0.89となり、これら各食品の摂取量が多い群の全死亡リスクが有意に低かった。ご飯やみそ汁、牛肉・豚肉に関しては、摂取量の多寡による全死亡リスクの相違は有意でなかった。
これらの結果を研究グループは、「日本食パターンスコアの高い食生活は、全死亡、循環器疾患死、心疾患死のリスク低下と関連している」とまとめるとともに、その理由について「日本食パターンのスコアが高い群では、海藻や漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶に含まれる健康に有益な栄養素(食物繊維や抗酸化物質、カロテノイドやエイコサペンタエン酸など)の摂取量が多かったことが考えられる」と考察している。
なお、がん死との関連が有意でなかった点については、「食品や栄養素の種類とがんリスクの関係はがんの部位によって異なることから、全がん死では有意にならなかった可能性があり、今後のさらなる研究が必要」と述べている。
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5月 25 2019 1日に摂取する食品数が多いほど女性の死亡リスク減 JPHC研究
日本人女性は、1日に摂取する食品の種類が多いほど全死亡や循環器疾患による死亡リスクが減少する可能性があることが、国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究で明らかになった。一方で、男性では摂取する食品数と死亡リスクとの間に関連は認められなかったという。研究の詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」3月19日オンライン版に掲載された。
日本の食生活指針では、1日の食事は穀類や野菜、果物、牛乳や乳製品、豆類、魚などのさまざまな種類の食品をバランスよく摂取することが推奨されている。しかし、食品の種類の多さと死亡リスクとの関連については明らかになっていない。研究グループは今回、JPHC研究に参加した45~74歳の男女約8万人を長期にわたり前向きに追跡したデータを用いて、1日に摂取する食品の種類の数と死亡リスクとの関連を調べた。
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対象者を1日に摂取する食品数によって5つの群に分けて解析した結果、女性では、食品数が最も少ない群と比べて、最も多い群では死亡リスクは19%(傾向P値=0.002)、循環器疾患による死亡リスクは34%、その他の死亡リスクは24%低いことが分かった(いずれも傾向P値=0.01)。一方、男性ではこれらの関連は認められなかった。
また、食品群別に解析したところ、男性では摂取する果物の種類が多いほど、女性では大豆製品の種類が多いほど全死亡リスクが低い傾向がみられた。一方で、男性では摂取する肉類の種類が多いほど全死亡リスクには上昇傾向がみられた。しかし、男女ともに、摂取する魚や野菜の種類の多さと全死亡リスクとの間に関連は認められなかった。
これらの結果について、研究グループは「多様な食品をバランス良く摂取することは、全死亡リスク、循環器疾患やその他の死亡リスクの低減につながる可能性がある」と結論づけている。また、摂取する食品数と死亡リスクとの関連に性差がみられた理由について、研究グループは「男性では女性に比べて飲酒や喫煙の頻度が高く、これらの要因を統計学的に調整しても、その影響が上回ってしまい、関連がみえにくくなった可能性が考えられる」と指摘している。
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