• 日本人NAFLD患者のCVDリスクはBMI23未満/以上で有意差なし

     瘦せている非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者の心血管疾患(CVD)リスクは、痩せていないNAFLD患者と同程度に高いことが明らかになった。武蔵野赤十字病院の玉城信治氏、黒崎雅之氏、泉並木氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Gastroenterology」に6月17日掲載された。

     NAFLDはメタボリックシンドローム(MetS)の肝臓における表現型と位置付けられており、世界人口の25%が該当するとされる主要な健康問題の一つ。NAFLD患者の多くは肥満だが、一部の患者は痩せているにもかかわらずNAFLDを発症する。欧米ではBMI25未満、アジアでは23未満のNAFLDが「痩せ型NAFLD」と定義されている。肥満併発NAFLDはCVDリスクが高いことは知られているが、痩せ型NAFLDもCVDハイリスクなのか否かは、これまでのところ十分明らかになっていない。黒崎氏らは同院の健診データを用いて、この点に関する後方視的研究を行った。

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     2017年1月~2022年5月に同院で健診を受け脂肪肝と診断され、3年以上追跡が可能だった人から、習慣的飲酒者(エタノール換算で男性は30g/日以上、女性は20g/日以上)、ベースライン時点でのCVD既往者、データ欠落者などを除外した581人のNAFLD患者を解析対象とした。このうち219人(37.7%)がBMI23未満の痩せ型NAFLDだった。

     痩せ型/非痩せ型NAFLDのベースラインデータを比較すると、年齢は有意差がなく(58±12対59±11歳)、性別は後者に男性が多いという有意差が見られた〔50.2対60.8%(P=0.02)〕。BMIは21.5±1.1対26.2±2.8(P<0.01)であり、そのほかに高血圧、糖尿病の有病率、AST、ALT、GGT、中性脂肪は非痩せ型の方が高く、HDL-Cは痩せ型の方が高いという有意差があった。喫煙者率、脂質異常症有病率、LDL-C、血小板数、アルブミンには有意差がなかった。なお、高血圧や糖尿病、脂質異常症患者は、比較的良好に管理されていた(血圧は中央値128/81mmHg、HbA1cは同6.8%、LDL-Cは同143mg/dL)。

     3年間のCVD(虚血性心疾患、心不全、脳血管疾患、末梢動脈疾患)発症率は、痩せ型群2.3%、非痩せ型群3.9%で、有意差がなかった(P=0.3)。

     次に、年齢、性別(男性)、高血圧、糖尿病、脂質異常症、痩せ型/非痩せ型NAFLDを説明変数、CVD発症を目的変数とする単変量解析を施行。すると、年齢、高血圧、糖尿病と、CVD発症との有意な関連が認められた。続いて行った多変量解析の結果、CVD発症と独立した関連のある因子として、年齢のみが抽出された〔10歳ごとのオッズ比が2.0(95%信頼区間1.3~3.4)〕。

     著者らは、単一施設での後方視的解析でありサンプル数が少なく、追跡期間も十分とは言えないことなどを本研究の限界点として挙げた上で、「われわれの研究結果は、痩せ型NAFLDでも非痩せ型NAFLDと同等のCVDリスクを有していると見なし、予防介入すべきであることを示している」と結論付けている。

     また、CVDリスクに差がないことの背景としては、「非痩せ型NAFLDでは高血圧や糖尿病が多かったが、血圧、血糖値、およびLDL-Cが良好にコントロールされていたことが、CVDリスク低下に寄与していた可能性がある」との考察が述べられている。なお、本研究で示された痩せ型NAFLDの割合が37.7%という値は、国内の既報研究より高い。その理由として、「3年以上連続して健診を受けた対象での検討結果であり、既報研究に多い患者または一般集団での横断研究とは異なるためではないか」としている。

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    HealthDay News 2023年9月4日
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