保護者の料理スキル、子どものレジリエンスや思いやり行動と関連
子どもの心の健康には、家庭環境や親子関係が大きく関わることが知られている。今回、日本の小学生と保護者を対象とした縦断研究により、保護者の料理スキルが高いほど、子どものレジリエンス(困難への対処力)や向社会的行動(思いやり行動)が高い傾向にあることが示された。さらに、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが、この関連に一部関与している可能性も示唆された。研究は、東京科学大学大学院医歯学総合研究科公衆衛生学分野の谷友香子氏らによるもので、詳細は5月1日付の「BMC Psychology」に掲載された。
思春期は多くの精神疾患が発症し始める時期とされ、この時期にレジリエンスや向社会的行動を育むことは、その後のメンタルヘルスに重要と考えられている。これまで、家族の結び付きや親の関わりなどの家庭環境が、子どもの心理的発達に関与することが報告されてきた。なかでも食事や調理は、親子のコミュニケーションや家族のつながりを生む日常的な活動とされる。日本の「おふくろの味」という言葉にも家庭料理への情緒的価値観が表れている。こうした背景から、著者らは保護者の料理スキルと子どものレジリエンスや向社会的行動との関連を検討した。

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著者らは、東京都足立区の全69公立小学校に通う小学4年生と保護者を対象とした「A-CHILD研究」のデータを解析した。2018年のベースライン調査参加者を2年間追跡(追跡率87%)し、最終的に3,641組を解析対象とした。保護者の料理スキルを4群に分け、2年後の小学6年時点における子どものレジリエンスや向社会的行動との関連を検討した。解析ではベースライン時点の心理指標や家庭背景因子を調整したほか、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが、この関連を媒介するかも解析した。
多変量解析の結果、ベースライン時点で保護者の料理スキルが高いほど、2年後の子どものレジリエンスおよび向社会的行動のスコアが高いことが示された。交絡因子を調整した解析では、料理スキルが最も低い群と比べ、最も高い群ではレジリエンススコアが8.75点高く(95%信頼区間〔CI〕 7.38~10.1)、向社会的行動スコアが9.51点高かった(95%CI 7.68~11.3)。これらの関連は、ベースライン時点の各スコアを調整後も維持され、料理スキルが高い群ほどスコアが段階的に高くなる傾向が認められた。さらに、この関連は世帯収入や子どもの性別によらず一貫していた。
また、保護者の料理スキルが高い群では、子どもの野菜摂取頻度や親子で一緒に料理する頻度、学校生活について親子で会話する頻度なども高かった。この関連について媒介分析を行ったところ、食に関する家庭習慣や親子の関わり、家族の結び付きが関連の一部を説明していた。
著者らは、「保護者の料理スキルは単なる調理技術ではなく、家庭内の関係性や生活習慣を通じて子どもの精神的発達に影響し得る『修正可能な家庭資源』であり、調理教育などの支援を通じて思春期のメンタルヘルス向上につながる可能性がある」と述べている。
なお、著者らは本研究の限界として、保護者1名による評価や自己報告バイアスの可能性、食事の質の未評価、残余交絡や因果関係の不確実性、COVID-19の影響、単一地域調査による一般化可能性の制約などを挙げている。
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