• 6歳まで持続する牛乳アレルギー、約半数は12歳までに耐性獲得

     6歳の時点で牛乳アレルギー(cow’s milk allergy;CMA)が持続していても、約半数の子どもは12歳になるまでに耐性を獲得するという調査結果を、国立病院機構相模原病院小児科の研究グループが「Pediatric Allergy and Immunology」に12月24日発表した。研究では学童期にCMAが持続する3つの危険因子を同定。危険因子を全て保有すると耐性を獲得しにくい可能性も示された。

     即時型CMAを有する小児は、就学前までに約50~90%が耐性を獲得すると報告されている。しかし、これらの研究は乳幼児期に追跡調査を開始しているため、学童期にCMAが持続する場合の耐性獲得率は明らかになっていない。責任著者の柳田紀之氏らは同病院に通院し、6歳の時点でCMAが持続している児を12歳になるまで後ろ向きに調査し、牛乳への耐性を獲得する割合の推移を明らかにした。

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     対象は、6歳の時点でCMAが持続して見られた小児80人(男児69%)。38%(30人)は牛乳によるアナフィラキシーの既往があり、50%(40人)は食事から牛乳を完全に除去していた。6歳時点の牛乳特異的IgE抗体価(CM-sIgE)の中央値は12.0kUA/Lだった。なお、経口免疫療法を受けた児は解析から除外した。

     耐性獲得は、非加熱牛乳200mLの食物経口負荷試験結果が陰性だった場合、または、アレルギー症状を呈することなく非加熱牛乳200mLを家庭で摂取可能な場合と定義し、どちらの基準も満たさない場合をCMA持続と判定した。主要評価項目は12歳までの牛乳に対する耐性獲得とし、CMA持続の危険因子についても評価した。

     分析の結果、9歳までに25人(31%)が、12歳までに58%(46人)が耐性を獲得した。多変量Cox回帰分析から、CMAが持続する危険因子として、ベースライン時(6歳時点)のCM-sIgE高値(調整ハザード比2.29、95%信頼区間1.41~3.73、至適カットオフ値は12.7kUA/L)、牛乳によるアナフィラキシーの既往(同2.07、1.06~4.02)および牛乳の完全除去(同3.12、1.46~6.67)の3つが判明した。これらの危険因子をいずれも保有しなかった児の86%が12歳までに耐性を獲得したのに対し、危険因子を全て保有する14人のうち耐性を獲得した児はいなかった。

     以上から、著者らは「IgE依存性即時型CMAの自然経過を検討した結果、6歳までCMAが持続していた児は、経口免疫療法を受けた子どもを除くと12歳までに58%が耐性を獲得することが分かった。この耐性獲得率はピーナツアレルギーの21.5%(4~20歳、海外からの報告)よりも高いが、われわれが過去に報告した鶏卵アレルギーの60.5%(6~12歳)とほぼ同程度だった」と結論。また、「本研究ではCMAが持続する3つの危険因子が判明し、経口免疫療法を考慮すべき小児についても特定することができた」と述べている。

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    HealthDay News 2024年2月5日
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  • ホタテ養殖への従事が納豆アレルギーの潜在的リスクの可能性――道北での調査

     北海道の漁業従事者を対象に行った調査研究から、ホタテガイ(ホタテ)の養殖で使う網などを素手で取り扱うことが、納豆アレルギーのリスクを高める可能性が浮かび上がった。北海道大学大学院医学院社会医学講座公衆衛生学教室の黒鳥偉作氏らの研究によるもので、詳細は「Allergology International」に7月8日掲載された。ただし黒鳥氏は、「一般の人がホタテを食べたり触ったりすることは納豆アレルギーと関係がなく、漁業従事者もリスクにはならない。また養殖に携わる人でも、網の修繕などの作業時に手袋をするといった対策により予防可能」として、誤解しないよう呼びかけている。

     近年、サーフィンなどのマリンスポーツを行っている人は、納豆を食べることによるアレルギー反応(納豆アレルギー)の有病率が高いことが知られるようになった。これは、クラゲなどが産生する、ポリ-γ-グルタミン酸(PGA)という物質が原因とされている。クラゲに刺されることによって、極めてまれながらPGAの感作が成立する。そして、納豆のねばねばの成分にもPGAが含まれていることから、クラゲに刺される機会が多いと納豆アレルギーになるリスクが高まる。納豆アレルギーは特異的な検査法がないことに加え、食べてから症状発現までの時間が通常の食物アレルギーよりも長いため、診断が困難なことが多い。さらに病状が遷延し、アナフィラキシーになりやすい。

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     道北の日本海岸に位置する道立羽幌病院では、同地がマリンスポーツの盛んな土地ではないにもかかわらず、納豆アレルギーの患者が散発的に発生している。そこで黒鳥氏らは、2009年4月~2020年8月の同院入院患者の受療記録、および、2021年2~5月に同地区の漁業従事者を対象に行った匿名アンケートの結果を用いた解析により、納豆アレルギーの実態の把握とリスク因子の特定を試みた。

     前記期間の入院患者は7,789人で、このうち29人が食物アレルギーによるアナフィラキシーショックでの入院だった。この29人中6人に納豆アレルギーによる遅発性アナフィラキシーショックが見られ、全員がホタテ養殖の経験を有していた。全員が生存退院し、退院時に納豆を回避するように指導。平均31カ月の追跡期間中に、食物アレルギーによるアナフィラキシーの再発はなかった。

     アンケート調査は、ホタテ養殖関連団体に所属する223人と漁協組合員155人から回答を得た。後者のうち、ホタテの養殖にも携わり、かつ、両方のアンケートに回答した人や、必要なデータが欠落している人なども除外し、ホタテ養殖従事者211人、ホタテ養殖に携わっていない漁業従事者106人を解析対象とした。

     回答を集計した結果、ホタテ養殖従事者の23人(10.9%)、その他の漁業従事者の4人(3.8%)、計27人が「納豆アレルギーあり」と回答した。ロジスティック回帰分析の結果、交絡因子未調整モデルで、ホタテ養殖従事者の納豆アレルギーのオッズ比(OR)が3.18(95%信頼区間1.07~9.43)と有意な関連が見られた。年齢、性別、クラゲに刺された経験、気管支喘息・花粉症・アトピー性皮膚炎・小児期の食物アレルギーの既往を調整したモデルでは、OR5.73(同1.46~22.56)と、より強い関連が認められた。また、「納豆アレルギーあり」と回答した漁業従事者の4人中3人(75%)が、発症時にホタテ養殖に従事していたと回答した。

     次に、ホタテ養殖従事者を「納豆アレルギーあり」と回答した23人と、「納豆アレルギーなし」と回答した181人に二分して比較した結果、前者は高齢で(P=0.01)、ふだん網の修繕作業をしており(P<0.01)、ホタテ養殖歴が長い(P<0.001)という項目で後者と違いが見られた。また、納豆アレルギーがあると回答した23人中22人(95.7%)は、ホタテ養殖に従事する以前は納豆摂取によるアレルギー症状発現の経験がなかった。

     著者らは本研究の限界点として、横断研究であり因果関係は不明であること、食物アレルギーの診断のゴールドスタンダードである経口負荷試験を実施していないこと、アンケート調査では納豆アレルギーの有無を自己申告により判定していること、未調整の交絡因子が存在する可能性のあることなどを挙げている。その上で、「ホタテ養殖では特殊な網を海中に長期間沈め、かつ、繰り返し使う。とくに、小さな稚貝を扱う網は細かく、修繕などを素手で行っている。その際に、クラゲに刺されることとは別の経路でPGAに感作されている可能性がある」とし、「ホタテ養殖従事者に対しては、素手で網に触れる作業を避けるなどの健康指導が必要ではないか」と結論付けている。

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    HealthDay News 2022年9月5日
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