• CKDに対する集学的治療で腎機能低下が抑制される――国内多施設共同研究

     慢性腎臓病(CKD)に対する集学的治療(MDC)の有効性を示すエビデンスが報告された。MDC介入後には腎機能(eGFR)低下速度が有意に抑制されるという。国内多施設共同研究の結果であり、日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科の阿部雅紀氏らによる論文が「Clinical and Experimental Nephrology」に3月31日掲載された。MDCに携わるスタッフの職種数や介入回数が多いほど、腎代替療法や全死亡のリスクが低下するというデータも示されている。

     CKDが進行すると生命維持のために腎代替療法(透析または腎移植)が必要となるなど、患者本人のQOLが低下するだけでなく医療経済的な負担も大きくなる。日本は人口当たりの透析患者数が台湾に次いで世界2位であり、CKDの進行を抑える治療戦略の確立が喫緊の課題となっている。CKDの進行抑制には、薬物療法に加えて食事療法や運動療法が重要で、それらをサポートする看護師、管理栄養士、薬剤師や理学療法士などを含む多職種によるMDCが有効と考えられる。国内では2017年に腎臓病療養指導士制度がスタートするなど、MDCを積極的に行う環境が整ってきた。阿部氏らは、国内24施設の多施設共同後方視的コホート研究として、MDCがどのように行われているかという実態の把握と、その有効性を評価した。

    慢性腎臓病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     2015~2020年に本研究参加施設でMDCが行われたCKD患者のうち、MDC介入前の12カ月と介入後24カ月のeGFRのデータがあり、除外基準(20歳未満、eGFR60mL/分/1.73m2以上、活動性の悪性腫瘍、観察開始時点で腎代替療法が施行または予定されていたなど)に該当しない3,015人を解析対象とした。主要評価項目は、MDC前後でのeGFR低下率の変化であり、そのほかに腎代替療法と全死亡で構成される複合エンドポイントの発生率に関連のある因子などが検討された。

     解析対象者のMDC介入時点(ベースライン)の主な特徴は、平均年齢70.5±11.6歳、男性74.2%、eGFRは中央値23.5mL/分/1.73m2(四分位範囲15.1~34.4)、尿タンパクは同1.13g/gCr(0.24~3.1)であり、CKDステージは3が34.5%、4が41.4%、5が24.1%だった。

     MDC介入は58.7%が入院で行われ、41.3%は外来で行われていた。入院日数または介入回数(外来)は、入院の場合は中央値7日(四分位範囲6~12)、外来では4回(1~11)で、関与していたスタッフの職種は4職種(3~5)であり、医師以外のスタッフでは管理栄養士(90.4%)、看護師(86.2%)、薬剤師(62.3%)、理学療法士(25.9%)、臨床検査技師(5.9%)、ソーシャルワーカー(2.3%)などが関与していた。

     MDC介入前の1年当たりのeGFR低下速度(mL/分/1.73m2/年)は平均-6.02だった。それに対してMDC介入後の6カ月は-0.34、12カ月では-1.40、24カ月では-1.45であり、いずれの時点でも介入前より低下速度が有意に抑制されていた。CKDの原因(糖尿病と糖尿病以外)やベースライン時のCKDステージで層別化した解析でも、全てのサブグループでMDC介入後にeGFR低下速度が有意に抑制されていた。副次的評価項目として設定されていた尿タンパク(g/gCr)も、MDC介入時点で中央値1.13であったものが、介入6カ月後は0.96、12カ月後は0.82、24カ月後は0.78と、いずれの時点でも有意に改善を示していた。

     中央値35カ月(20~50)の観察期間中に、24.8%に腎代替療法が行われ、4.9%が死亡していた。それら両者を複合エンドポイントとしたCox比例ハザードモデルによる解析の結果、MDCに関与するスタッフの職種〔1職種多いごとにハザード比(HR)0.85(95%信頼区間0.80~0.89)〕や、介入回数〔1回多いごとにHR0.97(同0.96~0.98)〕の多さが、エンドポイント発生リスクの低さと関連していた。また、MDCに栄養士〔HR0.49(0.36~0.66)〕、理学療法士〔HR0.46(0.22~0.93)〕が関与している場合は、それらのスタッフが関与していない場合よりもエンドポイント発生リスクが有意に低いことが分かった。

     以上より著者らは、「CKD患者に対するMDCは、原疾患にかかわりなく効果的であり、また比較的初期の段階での介入も有効と考えられる」と結論付けている。

    糖尿病性腎症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。

    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2023年5月29日
    Copyright c 2023 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 代謝的に健康でもFIB-4 index高値の男性はCKDリスクが高い

     代謝的に健康で慢性腎臓病(CKD)のリスクは低いと考えられる男性でも、肝臓線維化マーカーである「FIB-4 index」が高い場合はCKDリスクが高いことを示唆するデータが報告された。産業医科大学病院腎センターの久間昭寛氏らが行った縦断的研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に10月5日掲載された。

     メタボリックシンドロームの肝臓における表現型とされる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肝硬変や肝がんのリスクであるのと同時に、心血管代謝疾患リスクとも関連のあることが知られている。さらに、NAFLDがアルブミン尿のリスク因子であるとする報告もある。ただし、NAFLDがCKDの独立したリスク因子であるか否かは十分検討されていない。これを背景として久間氏らは、NAFLDなどによる肝線維化の簡便な指標であるFIB-4 indexとCKDリスクとの関連を検討した。

    慢性腎臓病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     2009~2014年の企業健診受診者1万1,296人から、ベースライン時点でCKDに該当する人、習慣的飲酒者(エタノール換算で男性30g/日以上、女性20g/日以上)、追跡期間が5年未満だった人を除外し、男性5,353人(FIB-4 indexは平均0.73、eGFR81.8mL/分/1.73m2)のデータを解析に用いた。女性は解析対象に残らなかった。

     FIB-4 indexが1.3以上を高値とすると、243人(4.5%)が該当した。傾向スコアマッチングにより、FIB-4 index1.3未満の群からこの243人と背景の一致する同数の対照群を設定。両群を比較すると、FIB-4 indexの計算に必要なAST、ALT、血小板数を除き、年齢、BMI、eGFR、血清脂質、血圧、HbA1c、喫煙者率、高血圧・糖尿病の該当者率など、全て有意差のないことが確認された。FIB-4 indexは低値群が0.91±0.22、高値群が1.65±0.49だった。

     これら両群を5年間追跡したところ、FIB-4 index低値群の33人(14%)、高値群の48人(21%)がCKDを発症。全数解析では有意な群間差は認められなかった〔オッズ比(OR)1.57(95%信頼区間0.97~2.56)〕。年齢(55歳未満/以上)および、肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙習慣の有無で層別化したサブグループ解析では、非肥満〔OR1.92(同1.09~3.40)〕、非高血圧〔OR2.15(1.16~3.95)〕、非喫煙者〔OR1.88(1.09~3.23)〕において、FIB-4 index高値群でCKD発症オッズ比の有意な上昇が認められた。年齢や糖尿病・脂質異常症の有無では、FIB-4 indexの高低による有意なリスク差は認められなかった。

     次に、サブグループ解析で有意差の認められた代謝関連因子(肥満、高血圧、喫煙習慣)が一つ以上該当する群(227人)と一つも該当しない群(237人)に二分し、FIB-4 index低値群に対する高値群のCKD発症オッズ比を検討。すると、代謝関連因子を有する群は有意なオッズ比上昇が観察されなかった一方で〔OR1.06(0.54~2.09)〕、代謝関連因子を持たない群では、FIB-4 indexが高いことによる有意なオッズ比上昇が認められた〔OR2.45(1.19~5.10)〕。

     続いて、代謝関連因子を持たない群の5年間でのeGFR変化率を目的変数とする多重線形回帰分析を施行。その結果、FIB-4 index(β=-2.8950、P=0.011)、中性脂肪(β=-0.0159、P=0.026)が有意な負の関連因子、尿酸(β=1.0838、P=0.031)が正の関連因子として抽出され、年齢やBMI、LDL-C、HbA1c、収縮期血圧などは有意な関連がなかった。

     以上を基に著者らは、「代謝的に健康でありCKDリスクが低いと考えられる場合でも、FIB-4 index 1.3以上で定義されるNAFLDに該当する男性はハイリスクの可能性があるため、腎機能の注意深い経過観察が必要とされる」と結論付けている。なお、代謝的に健康な場合でのみ両者の関連が有意であることの理由については、「代謝的に不健康な場合はそのことがCKD発症の強力なリスク因子となるため、FIB-4 indexの予測能がマスクされてしまうのではないか」との考察を加えている。

    糖尿病性腎症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。

    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2023年1月23日
    Copyright c 2023 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 透析開始2週後の高BMIが死亡リスクの低さと関連――国内単施設での検討

     透析導入時点のBMI低値は死亡リスクの高さと関連する一方、透析開始2週間後のBMI高値は死亡リスクの低さと関連するというデータが報告された。中東遠総合医療センター腎臓内科の稲垣浩司氏らの研究によるもので、結果の詳細は「PLOS ONE」に6月24日掲載された。

     肥満は代謝性疾患や心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)のリスク因子だが、一方で高齢者や一部の慢性疾患患者ではBMI高値の方が死亡リスクが低いという、「肥満パラドックス」と呼ばれる現象が見られることが知られている。日本人透析患者でも、BMIが低いほど死亡リスクが高いとする報告がある。ただし、BMI高値が死亡リスクの低さと関連することは示されていない。また透析患者のBMIは体液量によって大きく変動するため、どの時点でBMIを評価するかによって、死亡リスクとの関連性が異なる可能性がある。そこで稲垣氏らは、初回透析時のBMI、および、体液過剰が是正されたと考えられる透析開始2週間後のBMIと、全死亡のリスクとの関係を検討した。

    慢性腎不全に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     同院で2013~2019年に維持血液透析を開始した20歳以上の患者284人のデータを後方視的に解析。エンドポイントは、腎移植の施行、追跡不能、または2022年2月の追跡終了までの全死亡とした。なお、追跡期間が3カ月未満の18人は解析から除外した。解析対象者266人の平均年齢は68.9±12.0歳、男性が66.5%で、54.1%は糖尿病、31.2%は心血管疾患を有していた。

     初回透析時の平均BMIは23.3±4.24で、BMI18.5未満の「低値群」が8.3%、18.5~23.9の「正常群」が55.6%、24以上の「高値群」が36.1%を占めていた。透析開始2週間後は、平均BMIが22.0±3.80であり、低値群18.4%、正常群54.9%、高値群26.7%と、全体的にBMIが低下していた。また、足浮腫を認める患者は初回が58.3%、2週間後が12.8%であり、心胸郭比は同順に、54.6±6.98%、52.4±6.57%だった。

     平均3.89±2.12年の追跡で30.1%が死亡。3年死亡率を初回透析時のBMIカテゴリー別に見ると、低値群40.4%、正常群16.4%、高値群10.5%であり、低値群は他の2群より有意に死亡率が高かった。透析開始2週間後のBMIカテゴリー別では、低値群28.5%、正常群17.7%、高値群4.5%であり、高値群は他の2群より有意に死亡率が低かった。

     次に、単変量解析によって死亡率と有意な関連が認められた因子(年齢、BMIカテゴリー、収縮期血圧、eGFR、心血管疾患の既往など)、および性別、糖尿病の影響を調整したCox回帰分析を施行。その結果、初回透析時のBMI低値群は、正常群に比べて有意に死亡リスクが高いことが示された〔ハザード比(HR)2.39(95%信頼区間1.13~5.03)〕。BMI高値群は正常群と有意差がなかった〔HR0.72(同0.40~1.29)〕。

     一方、透析開始2週間後のBMIに関しては、低値群は正常群との差が有意でなくなり〔HR1.43(同0.81~2.53)〕、高値群の死亡率は正常群より有意に低くなっていた〔HR0.38(同0.18~0.81)〕。なお、65歳以上の高齢者のみで検討すると、BMI高値群ではより大きなリスク低下が示された〔HR0.23(同0.09~0.61)〕。

     著者らは、「初回透析時のBMI低値は死亡リスクの高さと関連し、透析開始2週間後のBMI高値は死亡リスクの低さと関連しており、高齢者ではこの関連が顕著だった」とまとめている。また、「体液過剰是正後のBMI高値は、高齢者や慢性疾患患者での死亡リスクの低下との関連が示唆されている筋肉量や脂肪量の多さを表していると考えられる。よって本研究の結果は、透析患者においても十分な栄養と身体活動が、予後改善に寄与する可能性を示唆している」と述べている。

    糖尿病性腎症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。

    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2022年10月3日
    Copyright c 2022 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 単回の中強度運動は腎血流量や腎機能を低下させない

     単回の中強度運動は腎血流量や腎機能に影響を及ぼさないことを示すデータが報告された。福岡大学スポーツ科学部の川上翔太郎氏らの研究によるもので、詳細は「Physiological Reports」に8月4日掲載された。

     運動による代謝性疾患や心血管疾患などに対する予防・治療上のメリットは、既に強固なエビデンスで裏付けられている。ただし、運動によって筋肉への血流が増えて腎血流量が低下したり、運動後に尿蛋白が陽性になったりすることから、腎臓病の治療において運動はあまり強く推奨されず、むしろ運動を控える指導が行われることがあった。一方で、近年の研究で運動は慢性腎臓病(CKD)患者の蛋白尿を悪化させない可能性が報告されており、運動がCKD患者に対する治療の選択肢となり得る。しかしながら、CKD患者にとって安全で効果的な運動条件は整備されておらず、運動療法の基準を確立する必要性が高まっている。

    慢性腎臓病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     他方、中強度の運動では腎機能への影響は少ない可能性を示す知見も徐々に蓄積されてきている。ただし、運動による腎臓への影響を、腎血流量と腎障害のバイオマーカーとにより総合的に検討した研究結果はこれまで報告されていない。川上氏らの研究はこのような背景の下で実施され、中強度運動の前から運動後の回復期間にかけて、超音波検査による腎血流量の変化を把握するとともに、クレアチニン、シスタチンC(腎機能マーカー)、アルブミン、KIM-1、L-FABP(腎障害マーカー)などの複数のバイオマーカーにより腎臓への負荷を検討した。

     研究参加者は、8人の健康な男性で、平均年齢38±8歳、BMI22.1±3.1kg/m2、eGFR79±6mL/分/1.73m2、VO2peak33.9±6.4mL/kg/分、乳酸閾値強度(血中の乳酸濃度が顕著に上昇し始める運動強度)60±18watts。自転車エルゴメーターによって乳酸閾値の強度で30分間の有酸素運動を実施した。運動前、運動直後、運動後30分、60分に採血・採尿と超音波検査を施行した(採尿は運動30分後を除く)。水分は自由に摂取可能とした。なお、サンプルサイズは既報研究に基づいて設定され、統計学的に適切と判断された。

     検討の結果、腎血流量については安静時が319±102mL/分、運動直後が308±79mL/分であり有意な変化がなく、回復期間も有意な変化を示さなかった(P=0.976)。また、アルブミンやクレアチニン、シスタチンC、KIM-1など、測定したバイオマーカーは全て、運動前から運動後60分までの回復期間にかけて、腎臓のダメージの発生を示唆する有意な変化を示さなかった。つまり、単回の中強度有酸素運動は腎血流量を変化させず、腎障害を起こさず、腎機能に影響を与えないと考えられた。

     一方、著者らは本研究には、研究対象が少数の腎機能正常者であること、環境温度が管理されている実験室内で水分摂取可という条件下での試験のため、発汗と脱水によって腎機能へ影響が生じる可能性を否定することはできないことなどの限界点があるとして、「異なる被検者や条件での追試が必要」と述べている。その上で、「中強度の運動は、腎血流量を低下させずに腎障害バイオマーカーの変化も生じさせないという新たな知見を得られた。この研究結果は、腎機能低下を防ぐための効果的な運動プログラムの確立に向けた、基礎データとなり得る」と結論付けている。

    糖尿病性腎症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。

    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2022年9月20日
    Copyright c 2022 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 慢性腎臓病+睡眠時無呼吸で死亡リスク上昇――国内医療費請求データの解析

     慢性腎臓病(CKD)に睡眠時無呼吸症候群(SAS)を併発している場合、死亡や心血管疾患などのリスクが有意に高いことを示すデータが報告された。名古屋大学医学部附属病院腎臓内科の田中章仁氏らが、国内医療機関の医療費請求データを解析した結果であり、詳細は「Frontiers in Medicine」に5月31日掲載された。SASに対して持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行っているCKD患者では、リスク上昇が見られないことも分かった。

     CKD患者はSAS有病率が高いことが知られているが、両者の併発が予後へどの程度の影響を及ぼすかは明らかでなく、またSASに対してCPAP治療を行った場合に予後が改善するのか否かも不明。そこで田中氏らは、国内449病院の医療費請求データベースを用いて、この点の解析を行った。

    慢性腎臓病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     2008年4月~2021年8月にCKDとして治療が行われたと考えられる92万4,238人から、年齢が20歳以上で血清クレアチニンが2回以上測定され1年以上の追跡が可能であり、ベースライン時に腎代替療法(透析療法、腎移植)を受けていない3万2,320人を解析対象とした。このうち1,026人(3.2%)がSASを併発していた。

     傾向スコアを用いて、年齢、性別、eGFR、ヘモグロビン、高血圧・糖尿病・心不全・心房細動・心房粗動の既往などをマッチさせ、SAS併発群と非併発群それぞれ940人からなるデータセットを作成。この両群を比較すると、アルブミン(3.76対3.87mg/dL)や総蛋白(6.83対6.94mg/dL)、およびカリウム(4.40対4.46mEq/L)はSAS併発群で有意に低値だったが、その他の臨床検査値やCKD病期(KDIGOステージ)、併発疾患有病率などは有意差がなかった。

     主要評価項目を、死亡、腎代替療法の開始、心不全・虚血性心疾患・脳卒中による入院で構成される複合エンドポイントとして、カプランマイヤー法で経過を比較すると、SAS併発群はイベント非発生率が有意に低値で推移していた。ただし、SAS併発群の35%に当たるCPAP施行群(330人)では、イベント非発生率がSAS非併発群と同レベルで推移していた。

     SAS非併発群を基準にイベント発生リスクを比較すると、未調整モデルではハザード比(HR)1.26(95%信頼区間1.10~1.45)であり、交絡因子(年齢、性別、eGFR、アルブミン、カリウム)を調整後にもHR1.25(同1.08~1.45)と、SAS併発群は有意にハイリスクであることが示された。

     次に、SAS併発群をCPAP施行の有無で二分して検討すると、CPAPを施行していない群では、未調整モデル〔HR1.42(1.22~1.65)〕、交絡因子調整モデル〔HR1.32(1.12~1.55)〕ともに、有意なリスク上昇が認められた。一方、CPAP施行群では、未調整モデル〔HR1.00(0.84~1.23)〕、交絡因子調整モデル〔HR0.96(0.76~1.22)〕であり、イベント発生リスクはSAS非併発群と同等であることが明らかになった。

     このほか、eGFRの低下速度を比較すると、有意差はないながらもSAS併発群で速く、特にCPAPを施行していない群で速いことが分かった(SAS非併発群は-1.7±5.7/分/1.73m2/年、SAS併発CPAP施行群は-2.0±4.7/分/1.73m2/年、SAS併発CPAP非施行群は-2.2±5.1/分/1.73m2/年)。

     著者らは、本研究が医療費請求データの解析であるため、SASの重症度を含めて詳細な患者背景が不明であることを限界点として挙げた上で、「SASを併発しているCKD患者は予後不良となりやすく、CPAP治療が予後を改善する可能性がある」と結論付けている。それらのメカニズムとしては、CKDによる体液貯留傾向とSASによる上気道の狭窄がともに心不全などの心血管イベントリスクを押し上げ、それに対してCPAPはSASとともに心不全を改善するように働くのではないかとの考察を加えている。

    治験に関する詳しい解説はこちら

    治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

    治験・臨床試験についての詳しい説明

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2022年8月22日
    Copyright c 2022 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 男性はストレスで腎機能が低下?――J-MICC研究データの横断解析

     日本人対象の研究から、男性では自覚ストレスの強さが、腎機能の低下と有意に関連していることを示すデータが報告された。佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野の古賀佳代子氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に1月7日掲載された。意外なことに、ストレスに対する対処行動を表す一部の指標のスコアが高いことも、男性あるいは女性のいずれかにおいて腎機能の低下と関連が見られたという。

     腎機能低下のリスク因子としては、加齢のほかに糖尿病、高血圧、肥満症などの疾患や、喫煙、飲酒、運動不足などの生活習慣が挙げられる。これらの既知のリスク因子に加えて近年、精神的ストレスが腎機能低下と関連している可能性を示唆する研究結果が報告されている。ただし、結果に一貫性がなく、また、ストレスに対する対処行動と腎機能との関係については、ほとんどエビデンスが存在しない。そこで古賀氏らは、「日本多施設共同コーホート研究(J-MICC研究)」の参加登録時データを用いて、自覚ストレスおよびストレス対処行動と腎機能の関係を横断的に解析した。

    慢性腎臓病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     解析対象は、J-MICC研究参加者から、腎疾患既往者、血清クレアチニンが0.2mg/dL未満または2.0mg/dL超、およびデータ欠落者を除外した7万642人(男性が44.9%で56.0±9.2歳、女性は55.2±9.2歳)。自覚ストレスの強さは、「最近1年間にストレスを感じましたか」との質問に対し、(1)全く感じなかった、(2)あまり感じなかった、(3)多少感じた、(4)おおいに感じたという4種類から選択してもらい、(1)と(2)はストレスレベルが「低」、(3)は「中」、(4)は「高」と判定した。またストレスへの対処行動は、ストレスコーピング尺度(GCQと日本語版Brief COPEから5つの項目を抽出)という指標で評価した。

     性別の比較から、女性は男性よりも自覚ストレスを強く感じていることが示された(ストレスレベル「高」の割合が男性は20.6%に対して女性は30.0%)。一方、ストレスに対する対処行動の中で、肯定的解釈(ストレスを前向きに解釈しようとする姿勢)や、支援希求(親しい人に相談し励ましてもらう)は女性の方が強く、積極的問題解決(問題を解決しようとする姿勢)は男性の方が強かった。腎機能(eGFR)は男性76.3±14.0mL/分/1.73m2、女性80.0±14.9mL/分/1.73m2だった。

     重回帰分析にて腎機能に影響を及ぼし得る因子(年齢、飲酒・喫煙、身体活動、睡眠時間、摂取エネルギー量、BMI、地域、対処行動の各項目)を調整後、男性では自覚ストレスが強いほど腎機能が低いという有意な負の関連が認められた(β=-0.27、傾向性P=0.017)。この関連は、高血圧・糖尿病・脂質異常症の既往を追加して調整すると弱まる傾向が見られた(β=-0.23、傾向性P=0.042)。女性ではストレスと腎機能との間に有意な関連は認められなかった。

     男性の腎機能低下が自覚ストレスの強さと有意な関連があるという結果について、著者らは、ストレスの負荷が視床下部-下垂体-副腎系あるいは交感神経活性を亢進させ、血圧や血糖の上昇などを介して、腎機能に影響を及ぼす可能性があると考察している。また、女性では有意な関連が見られなかった点については、女性では男性に比べて、ストレスが視床下部-下垂体-副腎系あるいは交感神経活性へ及ぼす影響が抑制されることが、既報研究から示唆されているという。

     次に、ストレス対処行動と腎機能との関連については、前記の重回帰分析の結果、男性では積極的問題解決の姿勢が強いほど腎機能が低く(β=-0.45)、女性では肯定的解釈の姿勢が強いほど腎機能が低いという(β=-0.43)、いずれも有意な負の関連が認められた(傾向性P値はいずれも<0.001)。

     この点について著者らは、「どちらの対処行動もストレスに対する前向きな姿勢であるにもかかわらず、腎機能低下との有意な関連が認められたことは予想外の結果だ」と述べた上で、「そのメカニズムは基本的に不明」としている。ただし、本研究では、男性の積極的問題解決志向は握力と正相関するという結果が得られた。握力の強さはテストステロンレベルと相関するとの報告があり、テストステロン高値が男性の腎機能低下に関連している可能性があるという。

     また、肯定的解釈の姿勢の強さは、インターロイキン-2(IL-2)レベルの低さと関連するという報告があり、IL-2低値が免疫能への影響を介して女性の腎機能低下に関係している可能性が考えられるとしている。ただし、「いずれも仮説のレベルに過ぎず、今後の追試やメカニズム解明のための研究が必要とされる」とまとめられている。

    糖尿病性腎症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。

    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2022年3月28日
    Copyright c 2022 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • タンパク質摂取量と腎機能低下に関連なし――日本人高齢者での縦断研究

     日本人高齢者では、タンパク質の摂取量と腎機能(eGFR)の低下速度との間に有意な関連はないとする研究結果が発表された。さらに、慢性腎臓病(CKD)の高齢者では、タンパク質摂取量が多いことが腎保護的に働く可能性もあるという。大阪大学大学院医学系研究科総合ヘルスプロモーション科学講座/森ノ宮医療大学の関口敏彰氏らの研究によるもので、「Geriatrics & Gerontology International」に2月10日、論文が掲載された。

     タンパク質の過剰摂取は腎臓に負担をかけるため、CKD患者にはタンパク質摂取量を控える指導が長く行われてきた。しかし近年、高齢者人口の増大とともに筋肉量が低下した高齢患者が増加し、そのような場合には筋肉量の維持のためにタンパク質をしっかり摂取することが重要であると認識されるようになっている。ただし、それにより腎機能低下が加速されるという懸念は払拭されておらず、高齢者のタンパク質摂取量を巡る議論が続いている。

    慢性腎臓病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     このような背景を基に関口氏らは、東京都と兵庫県の地域住民対象に行われている高齢者長期縦断研究(SONIC研究)のデータを用いて、タンパク質摂取量と腎機能変化との関連を縦断的に検討した。SONIC研究は2010~2013年に参加登録が行われ、69~71歳1,000人、79~81歳973人、89~91歳272人、計2,245人が登録されている。本研究ではそのうち、登録時にCKDステージ5以上(eGFR15mL/分/1.73m2未満)、透析治療中、解析に必要なデータの欠落者などを除外し、1,160人を解析対象とした。

     研究参加時に行った食事調査からタンパク質摂取量を割り出し、全体を四分位で群分けすると、第1四分位群のタンパク質摂取量は1.01±0.16g/kg/日、第2四分位群は1.32±0.07g/kg/日、第3四分位群は1.59±0.08g/kg/日、第4四分位群は2.07±0.30g/kg/日だった(P<0.01)。eGFRは平均69.15±14.4mL/分/1.73m2であり、群間に有意差はなかった。

     平均2.53年の追跡期間中のeGFRの変化は-1.89±2.98mL/分/1.73m2であり、有意な群間差はなかった。その一方で、体重はタンパク質摂取量の少ない群の方が大きく低下しており、有意差が認められた(P<0.04)。より具体的に、フレイル(要介護予備群)の診断基準に含まれている「1年当たり4.5kg以上の体重減少」の該当者の割合を比較すると、第1四分位群は47.6%と半数近くに及び、第2四分位群も42.9%を占めるのに対して、第3および第4四分位群は4.8%に過ぎなかった(P<0.01)。

     次に、腎機能低下に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、収縮期血圧、HbA1c、non-HDL-C、尿酸、高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・心不全の既往、腎機能を評価した季節)を調整後、ベースラインの腎機能で層別化して解析を行った。

     その結果、ベースラインで腎機能が保たれていた群(eGFR60mL/分/1.73m2以上)では、タンパク質摂取量と腎機能変化量との間に有意な関連が認められなかった。一方、ベースラインで腎機能が低下していた群(eGFR60mL/分/1.73m2未満)では、タンパク質摂取量と腎機能変化量に正の相関が認められ(β=0.98、P=0.02)、タンパク質を多く取ることによる腎保護作用が示唆された。続いて、タンパク質を植物性と動物性に分けて検討すると、動物性タンパク質の摂取量に関しては、上記の総タンパク質摂取量の解析結果と同様の結果が得られた。

     以上の検討に基づき著者らは、「地域在住高齢者のタンパク質摂取量はeGFRの低下とは関連がなく、さらにCKDステージ3~4の場合には、総タンパク質および動物性タンパク質の摂取量が多いことが、eGFRを維持するように働く可能性がある。CKD患者を含む日本人高齢者には、タンパク質摂取制限をすべきではないと考えられる」と結論付けている。

     なお、高齢CKD患者ではタンパク質摂取量が多い方が腎機能の維持に有利であることの機序としては、「加齢に伴い増加するフレイルやサルコペニアでは、貧血を含む種々の因子が相互に影響を及ぼし、腎機能をはじめとするさまざまな身体機能が低下する。高タンパク食は、そのような病態の悪循環を抑制するのではないか」との考察を加えている。

    糖尿病性腎症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。

    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2022年3月22日
    Copyright c 2022 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。