• 睡眠呼吸障害が血糖変動に及ぼす影響は? 糖尿病と心不全の有無で検討、札幌医大

    睡眠呼吸障害が重症化するほど血糖変動は増大するが、糖尿病や心不全の患者ではこうした関連性は減弱する可能性があると、札幌医科大学循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座の中田圭氏らが「PLOS ONE」2017年12月19日オンライン版に発表した。

    この研究では、持続的気道陽圧法(CPAP)は睡眠呼吸障害の治療として有効だが、CPAP療法による血糖変動幅の改善効果は糖尿病や心不全により減弱することも分かった。

    糖尿病や心不全の患者では睡眠呼吸障害の合併が高い頻度でみられ、こうした症例では心血管転帰が不良となることが知られている。
    また、血糖変動幅の増大は、平均血糖値とは独立して心血管イベントのリスク因子となるが、睡眠呼吸障害が血糖変動に及ぼす影響は明らかにされていない。
    中田氏らは今回、糖尿病と心不全を単独または併存した患者を対象に、睡眠呼吸障害と血糖変動との関係を調べる前向き研究を行った。

    対象は、2013年7月~2016年10月に同大学病院に糖尿病および/または心不全の検査や治療目的で入院し、連続グルコース・モニタリング(CGM)と睡眠ポリグラフ検査を行った患者203人。

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    平均年齢は67.5±14.1歳、男性65.0%であった。対象患者を糖尿病の有無で2群に分けてCGMデータから求めた血糖変動係数(平均血糖変動幅;MAGE)と睡眠1時間当たりの無呼吸や低呼吸の回数を表す無呼吸低呼吸指数(AHI)との関係を調べた。

    その結果、HbA1c値およびMAGEはいずれも非糖尿病患者群(103人)と比べて糖尿病患者群(100人)で有意に高かった(平均HbA1c値:8.0±2.0対5.7±0.4%、MAGE中央値:95.5mg/dL対63.5mg/dL)。

    一方で、糖尿病の有無でAHIには差はみられなかった(29.0±22.7対29.3±21.5)。また、非糖尿病患者群ではAHIはlogMAGEと正の相関を示したが、糖尿病患者群ではこうした関連はみられなかった。
    多変量回帰分析の結果、非糖尿病患者群ではAHIはlogMAGEの独立した変数であることが分かった。

    睡眠呼吸障害と血糖変動の関係に対する心不全の影響を調べるため、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)100pg/mLをカットオフ値として対象患者を糖尿病+BNP高値または低値、非糖尿病+BNP高値または低値の4群に分けて解析したところ、非糖尿病患者において、BNP低値群ではAHIはlogMAGEと強い相関性を示したが、BNP高値群ではこうした相関性は認められなかった。

    さらに、非糖尿病患者群ではCPAP療法後にMAGEが低下したが、糖尿病患者ではCPAP療法後のMAGEの値に変化はみられなかった。

    これらの結果から、中田氏らは「睡眠呼吸障害は血糖変動幅を増大させるが、糖尿病や心不全があるとこうした影響は減弱する可能性がある」と結論づけている。

    また、睡眠呼吸障害と血糖変動との関係が糖尿病患者などで減弱する理由については、「糖尿病患者では血糖コントロールが不良であることやインスリンなどの糖尿病治療薬の使用による影響力が、睡眠呼吸障害の血糖変動への影響を上回るためではないか」と考察している。

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    HealthDay News 2018年1月9日
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  • 腹部肥満で拡張不全型心不全患者の死亡リスク上昇 国立国際医療研究センター

    左室駆出率が保たれた心不全(拡張不全型心不全、HFpEF)患者は、腹部肥満を併存すると死亡リスクが高まる可能性があることが、国立国際医療研究センター(東京都)糖尿病内分泌代謝科の辻本哲郎氏らの検討で分かった。

    詳細は「Journal of the American College of Cardiology」12月号に掲載された。

    HFpEF患者はしばしば高血圧、糖尿病、心房細動を併存することが知られているが、腹部肥満による生命予後への影響を調べた研究はほとんどない。
    辻本氏らは今回、HFpEF患者を対象に、腹部肥満と死亡との関連を調べる研究を行った。

    研究では、HFpEF患者に対するアルドステロン拮抗薬の有効性を検討した国際多施設共同のランダム化比較試験、TOPCAT(Treatment of Preserved Cardiac Function Heart Failure with an Aldosterone Antagonist)試験に参加した3,445人の患者のうち、この研究の基準を満たした3,310人が対象となった。
    対象患者は腹部肥満のある群(2,413人)と腹部肥満のない群(897人)に分けられ、死亡リスクについて比較検討された。

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    平均3.4年間の追跡期間中に500人の死亡が確認された。
    解析の結果、1,000人年当たりの死亡率は、腹部肥満のある群で46.1、腹部肥満のない群で40.7であった。
    多変量解析の結果、腹部肥満のない群と比べて、腹部肥満のある群で全死亡リスクは有意に高かった(調整後ハザード比1.52、95%信頼区間1.16~1.99、P=0.002)。

    また、腹部肥満のない群と比べて、腹部肥満のある群では心血管死や非心血管死のリスクもそれぞれ有意に高いことが認められた(それぞれの調整後ハザード比1.50、1.08~2.08、P=0.01および1.58、1.00~2.51、P=0.04)。

    以上の結果を踏まえて、辻本氏らは「腹部肥満を伴うHFpEF患者は、腹部肥満のない患者と比べ死亡リスクが高い可能性がある。
    HFpEF患者の生命予後を改善するには内臓脂肪に注目した体重管理が重要かもしれない」と結論づけている。

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    HealthDay News 2017年12月4日
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  • ヒト受精卵の遺伝子変異の修復に成功

    ヒトの受精卵から、心疾患の原因となる遺伝子変異を除去する実験が成功したことが報告された。米オレゴン健康科学大学(OHSU)のPaula Amato氏らによる研究で、遺伝性の肥大型心筋症を持つ男性の精子と健康な女性の卵子から作製した受精卵に対し、遺伝子編集技術を用いて遺伝子変異の除去を試みたところ、72%の確率で正常な遺伝子に修復できたという。この報告は「Nature」8月2日オンライン版に掲載された。

     遺伝性の肥大型心筋症は500人に1人にみられ、心不全や心臓突然死のリスクが高く、若いアスリートの突然死の原因としても知られる。この疾患はMYBPC3という原因遺伝子の正常なコピーと変異したコピーを1つずつ受け継ぐことで発症し、患者の子どもは50%の確率でその遺伝子変異を受け継ぐことになる。今回の結果は、遺伝形式が同じ他の疾患(嚢胞性線維症やBRCA遺伝子変異によるがん症候群など)にも応用できる可能性があるという。

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     今回の研究では、特定の遺伝子配列を標的として切り取る技術を用いて、ヒト受精卵の中でMYPBC3遺伝子の変異したコピーを「破壊」した。その結果、受精卵の中でDNA修復プロセスが活性化し、遺伝子の正常なコピーを鋳型に用いて破壊されたコピーを修復することが分かった。これにより受精卵は2つの正常なコピーを持つ胚になった。この胚を女性の子宮内に移植すれば肥大型心筋症のリスクのない子どもが生まれ、さらにその子孫でもリスクは生じないと考えられるという。

     なお、修復された胚では全ての細胞が2つの正常なコピーを持つことが確認された。また、標的とするMYPBC3変異遺伝子以外の遺伝子を意図せずに変化させてしまう「オフターゲット効果」は確認されなかった。

     遺伝子の破壊には、CRISPR-Cas9と呼ばれる技術が用いられた。この手法では、遺伝子技術を用いて変異した遺伝子の中のDNA配列に狙いを定め、Cas9という酵素を分子でできたハサミのように用いて標的の配列を切り取る。今回の治療法を検証するために、肥大型心筋症の男性の精子と12人の健康な若年女性の卵子を用いて受精卵が作製された。

     米国心臓協会(AHA)スポークスパーソンである米ケンタッキー大学のDonna Arnett氏は「CRISPR-Cas9はこれまで、遺伝子変異が及ぼす影響を解明するための実験用ツールとして用いられてきた」と説明し、「この研究は類を見ないものだが、将来的に単一遺伝子疾患の治癒につながる可能性のある有望な結果が得られた」とコメントしている。

     Amato氏は「受精卵の遺伝子を修復する今回の方法は安全と考えられる。これにより次世代に遺伝性疾患が伝播することを防げる可能性がある」と話しており、この処置を着床前遺伝子診断と併用すれば、遺伝的に健康な胚を作製することで体外受精(IVF)の効率と成功率を向上できる可能性があると述べている。

     本研究の上席著者であるOHSU胚細胞・遺伝子療法センターのShoukhrat Mitalipov氏は、「今後の研究ではまず安全性の確認と効率の向上に注力し、その後ヒトでの試験へと進み、修復した胚を用いた妊娠の成立を目指したい」と話す。米国では生殖細胞の遺伝子組換えに関連する臨床試験は認められておらず、公的な助成も得られないが、「こうした治療が法的に認められている国で試験が実施される可能性はある」と同氏は述べている。

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    治験・臨床試験についての詳しい説明

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    HealthDay News 2017年8月2日
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  • 心不全患者の心臓突然死が20年間で半減

    この20年間で、心不全患者が突然の心停止で死亡する確率はほぼ半減しているという研究報告が、「New England Journal of Medicine」7月6日号に掲載された。研究を実施した英グラスゴー大学心臓病学教授のJohn McMurray氏は、「優れた治療薬を効果的に組み合わせて使用することで、心不全患者の寿命は延長した。現代の薬物療法や医療機器は極めて効果が高いため、心筋の機能不全が大幅に、あるいは完全に回復する患者も珍しくない」と話している。

     同氏らによると、低リスクの心不全患者の多くは薬物療法で十分な効果を得られるため、植込み型除細動器(ICD)を使用しなくても生命の危険はない可能性があるという。「ICDは高額で、植込みによる合併症のリスクもある。ICDで命をとりとめる人がいるのは確かだが、大多数の場合、植込み後のICDは一度も使用されない。ICDの使用基準について明確な結論は出ておらず、今回の知見も含めてもっと議論すべきだ」と、同氏は付け加えている。

     心不全は心臓の働きが低下して身体に十分な血液を送り出せなくなる病態で、特に心室が十分に収縮できなくなる(駆出率が低下する)心不全では、多くの患者が心臓突然死を防ぐためにICDを植込んでいる。

     しかし今回の研究では、1995~2014年に実施された12件の臨床試験に登録された4万人強の心不全患者のデータを分析した結果、この期間に登場した新たな治療薬により、ICDを植込んでいない心不全患者の突然死の発生率は44%減少したことが明らかになった。ランダム化から90日以内の突然死の累積発生率は、今回対象とした臨床試験のうち最も古い試験では2.4%であったのに対し、最新の試験では1.0%にとどまった。また、診断から3カ月以内の心不全患者における突然死の発生率は、診断からより長期間が経過した患者を上回るわけではないことも示された。

     現行のガイドラインでは、ICDの使用を決定する前に3カ月間の薬物療法を行う必要があるとしているが、今回の知見から、より長期間にわたって様子を見ても安全であることが示唆された。「薬物療法中に駆出率が十分に改善し、ICDが必要でなくなる可能性もあるため、植込みを急ぐべきでない」とMcMurray氏は指摘している。

     一方、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のGregg Fonarow氏は、「ガイドラインで推奨される薬剤を全て使用しても、突然死のリスクは残る。患者の多くはICDが不要だという見解には納得できない」と話す。「JACC: Heart Failure」編集長のChris O’Connor氏は、「臨床試験の被験者は一般の患者よりも厳格に経過を観察されているため、実際の患者にはこれほどの突然死の低減は認められないだろう」と指摘し、薬物療法のみで治療できる患者の特徴を明らかにするためには、さらに研究を重ねる必要があると述べている。

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    HealthDay News 2017年7月6日
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