• 肥満の有病率が高い都道府県は透析導入率が高い

     都道府県ごとの肥満の有病率が、透析導入率と有意な関連のあることが報告された。また女性に関しては、タンパク尿の有病率とも有意な関連があるという。新潟大学大学院医歯学総合研究科臓器連関学寄附講座の若杉三奈子氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical and Experimental Nephrology」に10月8日掲載された。

     肥満は慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全(ESKD)の重要なリスク因子の一つであり、また日本人は欧米人に比べて腎機能が低く、ESKDの罹患率が高いことが知られている。一方、日本国内の肥満の有病率には地域差があり、それがESKD罹患率の差となり透析導入率の差として現れている可能性が考えられる。ただし、これまでそのような視点での研究は行われていない。若杉氏らはこの点について、日本透析医学会のレジストリ、特定健診データ・医療費請求データなどを利用して検討した。なお、透析導入率には性差が存在するため、解析は性別に行った。

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     解析の基礎データとなる2016~2017年の透析導入率は、男性1,000人年当たり0.42、女性0.18だった。また特定健診の対象である40~74歳での肥満(BMI25以上)の有病率は、男性33.7%、女性19.7%、タンパク尿(1+以上)の有病率は同順に5.0%、2.6%だった。

     各都道府県の人口構成の違いを調整した標準化透析導入比は、男性は0.72~1.24の範囲、女性は0.69~1.41の範囲に分布していて、全体的に男性の方が高いものの、男性と女性で強い相関があった(r=0.83)。同様に、肥満の有病率(r=0.87)や、タンパク尿の有病率(r=0.88)、および一般住民の標準化死亡比(r=0.74)も、男性と女性で強く相関していた(全てP<0.001)。

     次に、研究の主題である、各都道府県の肥満の有病率と標準化透析導入比との関連を見ると、男性では中程度の相関が認められ(r=0.46、P<0.001)、タンパク尿の有病率とも弱い有意な相関が確認された(r=0.30、P=0.04)。また、肥満の有病率(r=0.35、P=0.02)やタンパク尿の有病率(r=0.33、P=0.02)は、一般住民の標準化死亡比とも弱い有意な相関があった。

     女性については、各都道府県の肥満の有病率と標準化透析導入比との間に弱い相関があり(r=0.37、P=0.01)、タンパク尿の有病率とは中程度の相関が認められた(r=0.41、P=0.004)、また、肥満の有病率は標準化死亡比とも弱い有意な相関があった(r=0.33、P=0.03)。ただし男性と異なり、タンパク尿の有病率と一般住民の標準化死亡比との関連は非有意だった(r=0.005、P=0.97)。

     肥満の有病率とタンパク尿の有病率、および各都道府県の医師数に占める腎臓病専門医の割合を説明変数とする回帰分析の結果、男性では肥満の有病率のみが標準化透析導入比と有意な関連が認められ(β=0.42、P=0.004)、タンパク尿は有意な関連がなかった。一方、女性では肥満の有病率(β=0.39、P=0.004)とともに、タンパク尿の有病率(β=0.41、P=0.003)も標準化透析導入比と有意な関連が認められた。

     パス解析からも、男性の標準化透析導入比に有意に関連するのは肥満有病率のみであり(β=0.43、P<0.001)、女性では肥満有病率(β=0.40、P<0.001)とタンパク尿の有病率(β=0.33、P=0.01)が、それぞれ独立して標準化透析導入比に関連していることが示された。

     以上を基に著者らは、肥満の有病率が高い都道府県は標準化透析導入比が高いという有意な関連が明らかになった。これは、一般住民および医療専門職者に向けた、普通体重を維持することが腎臓を守るために重要であるという明確なメッセージとなり得る」と結論付けている。

    肥満症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2022年11月14日
    Copyright c 2022 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
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  • 小児期の継続的な受動喫煙は男児の肥満リスク

     小児期に継続的に受動喫煙にさらされることが、男児の肥満のリスクを高めることを示唆するデータが報告された。ただし、保護者が禁煙するなどにより状況が改善すると、肥満リスクは低下する可能性があるという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「Pediatric Research」に8月13日掲載された。

     世界的に小児肥満が増加しており、2016年の有病率は18%と報告されている。小児肥満は成人後の肥満につながることが多く、代謝性疾患や心血管疾患と、それらによる死亡を増加させることから、子どものうちに肥満を解消することが重要。

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     一方、受動喫煙が小児肥満のリスク因子の一つである可能性が指摘されており、受動喫煙は保護者への介入で修正可能であることから、小児肥満対策の一手として期待される。ただし、受動喫煙が改善された場合に子どもの肥満リスクが低下するか否かは、これまで明らかにされていない。藤原氏らは、東京都足立区で行われた「子どもの健康・生活実態調査(A-CHILD Study)」のデータを用いた縦断的解析によって、この点を検討した。

     A-CHILD Studyは、足立区内の全ての公立小学校69校で実施され、2018年に小学4年生、2020年に小学6年生の児童とその保護者を対象とするアンケート調査が行われた。本研究では、その両年の調査に回答し、かつ6年生の時点の学校健診における身長・体重からBMIのデータのある3,605人の児童を解析対象とした。なお、体重については、BMIのWHO基準におけるZスコアが1未満を低体重または普通体重群、Zスコア1~2未満を過体重群、同2以上を肥満群と定義した。

     解析対象児童の74.1%は、4年生時、6年生時ともに受動喫煙にさらされていなかった。一方、15.2%は両方の時点で受動喫煙にさらされていた。5.8%は途中で受動喫煙が終了し、残りの4.8%は反対に途中で受動喫煙が始まっていた。継続的に受動喫煙にさらされていた子どもの家庭は世帯収入が低く、母親が若年で教育歴が短い傾向があった。

     6年生時のBMIに影響を及ぼす可能性のある因子(4年生時のBMI Zスコア、性別、世帯収入、運動の頻度、テレビの視聴、携帯電話の使用、加糖飲料の摂取頻度、母親の年齢・教育歴、肥満の家族歴)を調整後、順序ロジスティック回帰分析により、受動喫煙の状況と肥満発症との関連を検討。その結果、継続的に受動喫煙にさらされていた群は、受動喫煙歴のない群に比較し、6年生時により高いBMIカテゴリーに該当する割合が有意に高かった〔オッズ比(OR)1.51(95%信頼区間1.16~1.96)〕。

     追跡期間の途中で受動喫煙が終了した群はOR1.11(同0.75~1.66)、受動喫煙が始まった群はOR0.90(0.57~1.45)であり、どちらも肥満の発症と有意な関連がなかった。

     次に、性別で層別化して解析すると、男児では全数解析と同様に、継続的に受動喫煙にさらされていた群でのみ、肥満の発症が有意に多いという関連が見られた〔OR1.74(1.25~2.44)〕。それに対して女児の肥満の発症は、受動喫煙歴のない群と他の全ての群で有意差がなかった。

     以上の結果から著者らは、「受動喫煙は、男児の肥満のリスク因子の一つであると考えられる。ただし、受動喫煙の状況が改善されると肥満リスクは低下するようであり、小児肥満の防止に役立つのではないか」と結論付けている。また、新型コロナ感染症パンデミックで保護者の在宅勤務や外出頻度の減少により、受動喫煙の機会が増えている可能性があることから、「この関連のより詳細な研究と、保護者の禁煙がより一層重要になっている」とも述べている。なお、受動喫煙による肥満リスクへの影響が性別で異なる理由に関しては、既報文献を基に、脂肪燃焼に関係しているβ-3アドレナリン受容体のTrp64Argバリアントの肥満への影響に性差が存在する可能性などを挙げている。

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2022年10月17日
    Copyright c 2022 HealthDay. All rights reserved. Photo Credit: Adobe Stock
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
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