-
10月 05 2026 手術支援ロボットHugoTM RAS Systemによる大腸がん手術118例の周術期・短期成績
近年、さまざまなメーカーから手術支援ロボットが登場し、外科手術への導入が進んでいる。今回、HugoTM RAS System(Hugo)を用いた大腸がん手術118例の周術期・短期成績を検討した単施設後ろ向き研究の結果が報告された。術中合併症や開腹手術への移行は認められず、良好な短期成績が示されたという。報告は、京都大学医学部附属病院消化管外科の山本健人氏、板谷喜朗氏らによるもので、詳細は8月21日付で「Surgery Today」に掲載された。
Hugoは、米メドトロニック社が開発した手術支援ロボットで、複数のアームを独立して配置できるモジュール型の構造を特徴とする。日本では2023年に消化管外科手術への適応拡大が承認され、保険診療で使用されている。大腸がん手術へのHugoの導入については、これまでにも実施可能性を示す症例報告や症例集積が報告されているが、症例数は少なく、臨床成績に関するエビデンスは限られていた。そこで著者らは、Hugoを用いた大腸がん手術の周術期・短期成績を評価し、実臨床における安全性と実施可能性を検討した。
【大腸がんの治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします京都大学医学部附属病院で2024年4月~2026年4月にHugoを用いたロボット支援手術を受けた大腸がん患者を対象に、単施設の後ろ向きコホート研究を実施した。臨床病理学的特徴、手術関連因子、術後短期成績を、結腸がんと直腸がんに分けて評価した。手術は、日本内視鏡外科学会の認定を受け、da Vinci Surgical System(DVSS)によるロボット支援手術を40例以上経験した術者が執刀するか、その直接監督下で実施した。
解析対象は118例で、内訳は結腸がん57例、直腸がん61例だった。結腸がんでは、手術時間の中央値は281分、ドッキング時間は11分、コンソール時間は192分で、出血量の中央値は0 mLだった。他臓器の合併切除などの拡大手術は9例で実施された。Clavien-Dindo分類Grade IIの術後合併症は3例、Grade IIIは2例に認められ、術後在院日数の中央値は11日だった。
直腸がんでは、手術時間の中央値は328分、ドッキング時間は8分、コンソール時間は221分で、出血量の中央値は0 mLだった。側方リンパ節郭清や他臓器合併切除など、標準的な全直腸間膜切除術(TME)を超える「beyond-TME」の手術は13例で実施された。環周切除断端(CRM)陽性例および切除断端陽性例は認められなかった。Grade IIの術後合併症は6例、Grade IIIは1例に認められた。術後在院日数の中央値は14日だった。
結腸がん、直腸がんのいずれにおいても、術中合併症は認められず、腹腔鏡手術や開腹手術への移行もなかった。
著者らは、Hugoによる大腸がん手術は実施可能で、安全性も良好だったと結論付けている。また、本研究はこれまで報告されたHugoによる大腸がん手術の単施設症例集積として最大規模であり、Hugoの大腸がん手術への適用可能性を支持する臨床的エビデンスを提供するとしている。
一方、本研究は単施設・単群の観察研究で、腹腔鏡手術やDVSSとの直接比較は行っていない。また、ロボット支援手術の経験が異なる術者が含まれ、学習曲線の初期にあたる症例も含まれていた。著者らは、今後は症例数のさらなる蓄積や多施設研究を行い、Hugoによる手術の長期的な腫瘍学的成績を検討する必要があるとしている。
治験に関する詳しい解説はこちら
治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。
-
6月 01 2026 国産手術ロボットhinotoriによる大腸がん手術、94例の初期成績を報告
ロボット支援手術の普及が進む中、日本初の国産手術支援ロボット「hinotori」の大腸外科領域における臨床データが報告された。今回、京都大学医学部附属病院でhinotoriによるロボット支援大腸手術を受けた大腸がん患者94例を解析した結果、開腹移行例やClavien-Dindo分類Grade III以上の重篤な術後合併症は認められなかった。著者らは、hinotoriを用いた大腸がん手術は安全かつ実施可能であることが示されたとしている。報告は京都大学医学部附属病院消化管外科の山本健人氏、板谷喜朗氏らによるもので、4月25日付の「Journal of the Anus, Rectum and Colon」に掲載された。
ロボット支援手術は近年、世界的に普及が進んでおり、大腸外科領域でも腹腔鏡手術と比べて良好な短期・長期成績を示す報告が蓄積されている。日本でもロボット支援直腸がん手術が2018年、結腸がん手術が2022年にそれぞれ保険収載されたが、これまでのエビデンスの多くは「da Vinci Surgical System(DVSS)」によるものだった。hinotori Surgical System(hinotori)は、川崎重工業とシスメックスの合弁会社メディカロイドが開発した日本初の国産手術支援ロボットで、名称は手塚治虫氏の『火の鳥』に由来する。同システムは2020年に泌尿器科領域で臨床導入され、その後は消化器外科や婦人科領域にも導入が広がっている。こうした背景から著者らは、hinotoriを用いたロボット支援大腸手術の臨床成績を検証した。
【大腸がんの治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします著者らは、2023年8月~2025年11月に京都大学医学部附属病院でhinotoriを用いたロボット支援大腸手術を受けた連続症例を対象に、単施設後ろ向き観察研究を実施した。術者はいずれも、日本内視鏡外科学会技術認定医で、既存のロボット支援手術システム(DVSS)による大腸手術を40例超経験していた。解析は、患者背景、手術関連因子、短期成績について、結腸がん群と直腸がん群に分けて実施した。
解析対象は94例で、このうち結腸がんが53例、直腸がんが41例だった。結腸がん群の手術時間中央値は255分だった。術後合併症はClavien-Dindo分類Grade IIのイレウスを1例(1.9%)に認めたが、絶食で改善し、Grade III以上の重篤な合併症は認められなかった。
一方、直腸がん群の手術時間中央値は327分だった。41例のうち、側方リンパ節郭清や他臓器合併切除、再発病変切除を伴う高難度手術(beyond-TME)を7例に実施した。術後合併症はGrade IIの排尿障害を1例(2.4%)に認め、経口抗菌薬で改善したが、Grade III以上の重篤な合併症は認められなかった。
いずれの群でも開腹移行例や術後30日以内の再手術例はなく、術後在院日数中央値は結腸がん群で10日、直腸がん群で12日だった。
著者らは、大腸外科領域におけるロボット支援手術の有効性は既に示されている一方、hinotoriに関する臨床データは限られていると指摘した。その上で、本研究では開腹移行例やGrade III以上の重篤な合併症を認めず、既報と概ね同等の短期成績が得られたとして、hinotoriを用いた大腸手術の安全性と実施可能性が示されたと考察した。一方、手術時間は既報よりやや長かったが、高難度症例を含んでいたことや、hinotoriを初めて使用する術者が多かったことが影響した可能性があるとしている。
また、現在はDVSSが手術支援ロボット市場で大きなシェアを占めているものの、hinotoriのような新規プラットフォームの登場は健全な競争につながるとの見方を示した。
治験に関する詳しい解説はこちら
治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。
-
6月 30 2025 腹腔鏡下手術vs.ロボット支援下手術、直腸がんの術後転帰に差
直腸がんの手術では、狭い骨盤内での作業が必要となる。そのため、多関節アームやモーションスケーリング機能を備えたロボット支援下手術(RALS)を採用するメリットは大きい。今回、直腸がんにおけるRALSは、従来の腹腔鏡下手術(CLS)と比較して術後転帰が改善されるとする研究結果が報告された。出血量、術後C反応性蛋白(CRP)値、入院期間の点でCLSよりも有意な転帰の改善を示したという。研究は神戸大学大学院医学研究科外科学講座食道胃腸外科学分野の安藤正恭氏、松田武氏らによるもので、詳細は「Langenbeck’s archives of surgery」に5月21日掲載された。
直腸がんに対する低侵襲手術としてはCLSが導入されてきたが、骨盤の狭い患者や肥満の患者に対しては、直腸間膜の全切除や適切な環状切除マージンの確保が難しいケースがある。この課題を解決するためにRALSが確立された。しかし、過去に行われたCLSとRALSの比較を目的とした複数のランダム化比較試験では、短期的な転帰について一貫した結果が得られていない。そのため、RALSの安全性と実行可能性には、なお議論の余地があることが示唆されている。このような背景を踏まえ、著者らは直腸がんに対するRALSの安全性と実行可能性をCLSと比較するため、過去にCLSまたはRALSを受けた患者を対象に後ろ向き研究を実施した。
直腸がんに関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。本研究には、2009年1月から2023年12月の間に神戸大学医学部附属病院にて、前方切除術またはハルトマン手術を受けた直腸がん患者702名が含まれた。組み入れ基準は、腺癌、扁平上皮癌、神経内分泌腫瘍などの原発性直腸がん患者で、CLSまたはRALSを受けた患者とした。2群間の患者および腫瘍特性の差によるバイアスを最小限にするため、傾向スコアマッチング(PSM)を実施した。カテゴリ変数の比較にはカイ二乗検定またはFisherの正確確率検定を、ノンパラメトリック連続変数の比較にはMann-Whitney検定を用いた。疾患特異的生存率(CSS)、無再発生存率(RFS)、局所再発の累積発生率(LRR)はKaplan-Meier法で推定し、群間比較にはlog-rank検定が用いられた。
本研究では、リンパ節郭清、多発がん、データ欠損などの理由で症例を除外した結果、CLS群は313名、RALS群は75名が解析対象となった。PSM後、最終的にCLS群とRALS群でそれぞれ140名と70名がマッチングされた。両群間の患者および腫瘍特性は均衡しており、受けた手術の割合(前方切除またはハルトマン手術)も同程度であった。CLS群と比較すると、RALS群では手術時間の中央値が延長されたものの、出血量の中央値は有意に少なかった(P<0.001)。
術後の短期転帰の解析において、RALS群のCRP値の中央値はCLS群と比較して、術後1日目(4.00 vs. 5.24mg/dL、P<0.001)および術後3日目(5.49 vs. 7.08mg/dL、P=0.006)で有意に低下していた。術後入院期間の中央値は、RALS群で12.5日、CLS群で15.0日であり、RALS群では有意に短縮されていた(P=0.006)。また、グレード1以上の合併症(Clavien-Dindo分類)の発生頻度は両群間で有意な差は認められなかった。
中期転帰の解析において、CSS、RFS、LRRのいずれのKaplan-Meier曲線でも、統計的に有意な群間差は認められなかった。
本研究について著者らは、「RALS群の手術時間の延長は、初期導入の学習期間が含まれていた点を考慮する必要があるが、CLS群と比較して手術時の出血量と術後のCRP値の減少、術後入院期間の短縮というベネフィットが認められた。また、中期的な腫瘍学的転帰もCLS群と同様に良好であった。今後は、大規模かつ長期にわたる研究が必要だが、今回の知見は、直腸がんに対するRALSの実行可能性と安全性を支持するものと考える」と述べている。
治験に関する詳しい解説はこちら
治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。
-
4月 21 2025 若年層の大腸がん、その臨床的特徴が調査で明らかに
大腸がんは日本人で最も患者数が多いがんであり、一般的に50歳代から年齢が上がるにつれて罹患率も上昇することが知られている。一方で、若年層における大腸がんに関する報告は少ない。しかし、今回50歳未満の大腸がんに関する臨床病理学的所見を調査した研究結果が報告された。大腸がんの好発部位や、スクリーニングの有用性が明らかになったという。研究は札幌医科大学医学部腫瘍内科学講座/斗南病院消化器内科の岡川泰氏らによるもので、詳細は「BMC Gastroenterology」に3月11日掲載された。
近年、高所得国を中心として50歳未満で発症する若年発症型大腸がんが増加している。さらに、若年発症型大腸がんは進行期で診断されることが多く、世界的に重要な懸念事項であるが、日本から若年発症型大腸がんについて報告された研究はわずかであり、その臨床病理学的特徴は不明のままである。このような背景から、研究グループは、若年発症型大腸がんの臨床病理学的所見を調査するために単施設の後ろ向き研究を実施した。
大腸がんに関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。研究には、2015年1月~2021年12月までに北海道札幌市の斗南病院で大腸がんと診断された1,207人の患者が含まれた。この中から、家族性大腸腺腫、炎症性腸疾患、大腸がんの既往のある患者などを除外した、初発の大腸がん患者731人を最終的な解析対象とした。連続変数、カテゴリ変数の比較には、ピアソンのカイ二乗検定とMann-Whitney U検定が適宜適用された。
731人のうち46人(6.3%)が50歳未満(若年発症群)で診断され、685人(93.7%)が50歳以上(高齢発症群)で診断された。若年発症群と高齢発症群の年齢の中央値は、それぞれ45歳と72歳だった。性差、肥満率は両群に差はなかったが、高血圧、脂質異常症、糖尿病、大腸がん以外の悪性腫瘍の既往は高齢発症群で有意に高かった(P<0.01)。診断機会に関しては、大腸がんスクリーニングのための免疫便潜血検査(FIT)により、若年発症群の41.3%で大腸がんが検出され、高齢発症群(26.7%)よりも有意に高かった(P=0.032)。
大腸がんの発生部位別にみると、左側大腸がんの割合は両群に差はなかったが、若年発症群の直腸がんの割合は高齢発症群より有意に高かった(45.7% vs 26.4%、P<0.01)。
診断時の臨床病期(ステージ)に関しては、両群に差はなく、若年発症群と高齢発症群でそれぞれ45.7%と55.2%が非進行期で診断された。さらに両群ともに、非進行期で診断された大腸がん患者は、診断機会としてFITで陽性となる割合が高かった。進行期の患者では自覚症状などをきっかけとして診断される可能性が高かった。
研究結果について著者らは、「本研究では日本人の若年発症型大腸がんは直腸に発生する傾向があり、高齢発症型大腸がん患者と比較してFIT陽性がきっかけで診断されることが多いことが明らかになった。自覚症状などで診断につながる場合はすでに進行期であることが多いため、FITスクリーニングについて啓発し、大腸がんの早期発見に努めることが重要なのではないか」と述べている。
本研究の限界点について、単施設の後ろ向き研究であること、カルテに基づいているため患者背景が十分に解析されていないこと、追跡期間の中央値が43.6ヵ月と短かったことを挙げている。
治験に関する詳しい解説はこちら
治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。