• 高齢女性の4人に3人が加齢による視機能低下「アイフレイル」

     高齢女性の4人に3人は「アイフレイル」であり、その該当者は「基本チェックリスト」のスコアが高く、要介護ハイリスク状態であることを示す研究結果が報告された。国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科の糸数昌史氏、視機能療法学科の新井田孝裕氏、医学部老年病学の浦野友彦氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に10月11日掲載された。

     アイフレイルは、日本眼科啓発会議により「加齢に伴って眼が衰えてきた上に、さまざまな外的ストレスが加わることによって目の機能が低下した状態、また、そのリスクが高い状態」と定義されており、簡単な10項目の質問によるスクリーニングツールも既に開発されている。ただし、アイフレイルの有病率やスクリーニングツールの妥当性はまだ十分検討されていない。糸数氏らは、介護予防のために実施されている「フレイル健診」受診者を対象とする調査によって、それらの点を検討した。

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     2021年6月~2022年1月の栃木県大田原市が主催するフレイル健診を受診した地域在住高齢者のうち、研究協力の呼びかけに応じた225人が研究に参加。そのうち、解析に必要なデータを得られなかった人を除外した192人の女性を解析対象とした。また男性は解析に十分な参加者数に達しなかったため、女性のみで検討した。

     アイフレイルのスクリーニングツールの10項目(目が疲れやすくなった、夕方になると見えにくくなることがある、信号や道路標識を見落としたことがある、など)のうち2問項目以上に「はい」と答えた場合をアイフレイルと判定すると、74.5%とほぼ4人に3人が該当した。アイフレイルでない群と比較すると、年齢やBMI、骨格筋指数(SMI)、ふくらはぎ周囲長、握力には有意差がなかったが、歩行速度はアイフレイル群の方が有意に遅かった(1.30±0.22対1.20±0.34m/秒、P=0.02)。

     次に、二項ロジスティック回帰分析により、アイフレイルと関連のある因子を検討した結果、フレイル健診での「基本チェックリスト」のスコアと有意な正の相関が認められた(β=0.326、P=0.000)。一般に基本チェックリストのスコアが高いことは、要介護リスクの高さを表すとされていることから、明らかになった結果はアイフレイルが要介護のリスク因子である可能性を示すものと考えられる。なお、既報文献で示されている定義に基づき判定した、身体的フレイル、社会的フレイル、および過去の転倒経験などは、アイフレイルの有無との有意な関連が見られなかった。

     続いて、基本チェックリストに含まれている7種類の具体的なリスクとアイフレイルとの関連を検討。すると、閉じこもり(β=0.891、P=0.021)、認知機能(β=0.716、P=0.035)、うつ気分(β=0.599、P=0.009)という3種類のリスクの高さとアイフレイルとの有意な関連が認められた。

     このほか、アイフレイルのスクリーニングツールの回答の分析からは、視力低下、コントラスト感度低下(明暗のはっきりしないものや輪郭のぼんやりしたものが見えにくい状態)、視野障害が、アイフレイルを有することに強く影響を及ぼしていることが分かった。

     著者らはこれらの結果を基に、「地域在住高齢者のアイフレイルの有病率は74.5%であり、社会的引きこもり、認知機能低下、抑うつとの関連が認められた」と総括している。その一方で、フレイル健診に自主的に参加した女性のみを対象としていること、視機能に関する眼科学的な検査を行っておらず、疾患の影響なども検討されていないことなどを研究の限界点として挙げ、アイフレイルの背景因子および、身体的・社会的・精神的フレイルとの関連について、さらなる研究の必要性があるとしている。

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    HealthDay News 2023年2月6日
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  • 降圧薬の中止でフレイル改善?

     フレイル外来に通院中の患者に対する降圧薬の処方中止が、身体機能にプラスの影響をもたらす可能性を示唆するデータが報告された。国立長寿医療研究センター薬剤部の長谷川章氏らの研究によるもので、詳細は「The Journal of International Medical Research」に10月31日掲載された。

     フレイルは、身体的・精神的なストレスに対する耐性が低下した状態のこと。高齢者の要介護リスクの高い状態として位置付けられているが、早期介入によって非フレイルの状態に戻ることも可能。その介入方法としては、筋力トレーニングやタンパク質を中心とした十分な栄養摂取などが挙げられる。

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     一方、高齢者に対する多剤併用(ポリファーマシー)とフレイルとの関連が近年注目されており、降圧薬を処方されているフレイルの高齢者は死亡リスクが高いとする報告も見られる。しかし、降圧薬の処方中止がフレイルの改善につながるのか否かはよく分かっていない。長谷川氏らは、このトピックに関するパイロット研究を行った。

     解析対象は、2016年3月~2019年7月に同センターのフレイル外来を受診した患者498人のうち、初診時に降圧薬が処方されていない患者、追跡期間が1年未満の患者、および解析に必要なデータの欠落者を除外した78人〔年齢中央値77.0歳(四分位範囲72.3~82.0)、女性69%〕。このうち1年間の追跡中に降圧薬処方が中止されていた患者が19人含まれていた。

     降圧薬が中止された患者と継続された患者のベースラインデータを比較すると、年齢、性別(女性の割合)、血圧、処方されていた降圧薬の種類や数、併存疾患、アルブミンレベル、ビタミンDレベル、ビタミンD製剤の処方率などは有意差がなかった。評価した指標の中で唯一、骨格筋指数(SMI)のみ有意差があり、中止群の方が高かった(7.2±1.7対6.2±1.0、P<0.01)。

     降圧薬中止の影響は、SMI、要介護リスク把握のための「基本チェックリスト(KCL)」や「簡易身体機能評価指標(SPPB)」で評価した。このほかに、既報研究を基に「転倒リスクスコア」を算出した。これらのうち、KCLと転倒リスクスコアは点数が高いほど高リスクと判定され、SMIとSPPBは点数が高いほど良好と判定される。

     1年間の追跡でSMIは両群ともに有意な変化が見られなかったが、KCLの総合スコアは中止群(中央値8点から6点、P<0.05)と継続群(同7点から5点、P<0.01)の双方で有意に低下(改善)していた。さらに、KCLの体力に関するサブスコアは、中止群のみで改善が認められた(3点から2点、P<0.05)。継続群の体力に関するサブスコアは3点で不変だった(P=0.20)。

     SPPBの合計スコアは、中止群のみ有意な上昇(改善)が認められ(8.9から10.4点、P<0.05)、継続群は有意な変化がなかった(9.9から10.2点、P=0.20)。一方、転倒リスクスコアに関しては、継続群で有意に低下(改善)し(10.2から9.3点、P<0.05)、中止群では有意な変化がなかった(9.8から8.7点、P=0.27)。

     著者らは本研究の限界点として、サンプルサイズが十分ではないことや、どのような理由で降圧薬中止が判断されたかを検討できていないことなどを挙げている。その上で、「フレイルリスクのある患者への降圧薬の処方中止が、身体機能に対してはプラスに働く可能性があるのではないか」と結論をまとめている。

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    HealthDay News 2023年1月30日
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  • 除脂肪量でサルコペニアの低筋肉量をスクリーニング

     比較的簡便な体組成の評価方法である、生体インピーダンス(BIA)法で測定した除脂肪量指数〔FFMI(除脂肪量(kg)を身長(m)の二乗で除した値)〕が、サルコペニアの低筋肉量スクリーニングに利用できる可能性を示唆するデータが報告された。早稲田大学スポーツ科学研究センター招聘研究員・明治安田厚生事業団体力医学研究所の川上諒子氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Medical Directors Association」に9月27日掲載された。

     サルコペニアは筋肉量や筋力が低下した状態のことで、要介護などのリスクが上昇するため、早期介入による是正が重要。サルコペニア診断の低筋肉量判定には、二重X線エネルギー吸収測定(DXA)法または生体インピーダンス法による四肢筋肉量(ASM)の測定が必要とされる。このうち特に前者のDXA法は、測定機器が大型で可動性が乏しく健診会場などへ移動が困難なことや、コストや被曝の懸念があることが、現場での利用のハードルとなっている。後者のBIA法は機器に可動性があり、比較的低コストで被曝の懸念もないものの、ASMの測定が可能な機器はあまり普及していない。その一方で、除脂肪量指数(FFMI)であれば家庭用に普及している体組成計でも評価可能である。

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     これまで、FFMIが四肢筋量指数〔ASMI(四肢筋量(kg)を身長(m)の二乗で除した値)〕と相関するとの報告がある。ただし、FFMIでサルコペニアの低筋肉量スクリーニングが可能か否かという視点での研究は、まだ行われていない。川上氏らの研究は、このような背景の下で実施された。

     この研究には、早稲田大学の卒業生の健康状態を長期間観察している「WASEDA’S Health Study」のデータが用いられた。2015年3月~2020年2月に、BIA法とDXA法の両方で体組成が評価されていた、40~87歳の日本人成人1,313人が解析対象で、平均年齢は55±10歳、男性66.4%、BMI23.0±3.1、握力33.4±8.1kg、ふくらはぎ周囲長36.5±2.9cm。体組成の測定は、12時間以上の絶食後の午前中に実施した。

     アジアサルコペニアワーキンググループのサルコペニア診断基準に基づく低筋肉量該当者の割合は、BIA法で5.2%、DXA法で9.9%だった。BIA法によるFFMIとBIA法によるASMI(r=0.96)、およびBIA法によるFFMIとDXA法によるASMI(r=0.95)は、ともに強固な相関が見られた。より詳細に、年齢(60歳未満/以上)、肥満の有無(DXA法による体脂肪率が男性は25%以上、女性は30%以上を肥満と定義)でサブグループ化した解析の結果も、FFMIとASMIの相関係数(r)は0.93~0.95の範囲であり、いずれのサブグループでも強固な相関が認められた。

     次に、DXA法によるASMIで定義された低筋肉量該当者を、BIA法によるFFMIでどのくらいスクリーニングできるかをROC解析で検討。その結果、ROC曲線下面積(AUC)は、男性で0.95(95%信頼区間0.93~0.97)、女性では0.91(同0.87~0.94)と高い値を示した。低筋肉量該当者スクリーニングのためのFFMIの最適なカットオフ値は、男性17.5kg/m2(感度89%、特異度88%)、女性14.6kg/m2(感度80%、特異度86%)と計算された。

     以上より著者らは、「FFMIは年齢や肥満の有無にかかわりなく、BIA法やDXA法で測定されたASMIと強い正の相関を示した。FFMIを、サルコペニアの低筋肉量スクリーニングの代替マーカーとして利用できるのではないか。その際のFFMIのカットオフ値は男性18kg/m2未満、女性15kg/m2未満と推定される」と結論付けている。なお、本研究の限界点としては、対象者が単一大学の卒業生であり一般住民から無作為に抽出されたサンプルではないこと、使用したBIA測定器が1タイプのみであって他の機種では結果が異なる可能性のあることなどを挙げている。

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    治験・臨床試験についての詳しい説明

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    HealthDay News 2022年11月21日
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  • 介護保険による住宅改修の実情――視覚・認知機能障害へのサポートが不足

     介護保険の住宅改修費給付制度の利用状況を調査した結果が報告された。医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構の土屋瑠見子氏らの研究によるもの。認知機能障害や視覚障害による要支援者は、他の理由による要支援者よりも、住宅改修を行う割合が有意に低いことなどが明らかになった。詳細は、「BMC Geriatrics」に5月20日掲載された。

     何らかの機能障害がある場合、その障害のタイプや程度に応じて住宅改修を行うことにより、転倒などによる受傷リスクが低下し生活の質(QOL)が維持され、死亡リスクが低下することが報告されている。介護保険制度でも、要支援・要介護認定を受けた場合には、住宅改修コストの1~3割、最大20万円まで助成され、手すりの設置、段差解消、便器の取替えなどが可能だ。土屋氏らは、この制度の利用状況と、障害のタイプ、性別、世帯収入などとの関連を詳細に検討した。

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     解析には、首都圏にある人口約49万人の都市の2010~2017年度の介護保険関連データを用い、要支援認定を受けた人の住宅改修状況を調べた。前記期間に要支援認定を受けた1万1,229人から、転居者や解析に必要なデータの欠落者などを除外した1万372人を解析対象とした。なお、この都市の高齢化率は27.4%で、調査実施時点の全国平均(28.1%)とほぼ一致している。

     解析対象者のうち、要支援認定の翌年までに住宅改修の助成を申請したのは15.6%であり、認定から申請までの期間は平均4.0±2.7カ月、最頻値は2カ月(改修した人の26.8%)だった。6.2%の人は改修を2回行っていた。助成額は大半が17万5,000~18万7,500円(自治体支払い分)の範囲だった。

     要支援1と2を比較すると後者、性別では女性の方が住宅改修の実施割合が高く、生活保護受給者は改修実施割合が低かった。機能障害のタイプ別に見ると、下肢障害やバランス障害による要支援者は改修実施割合が高く、認知機能障害や視覚障害による要支援者は実施割合が低かった。多変量ロジスティック回帰分析により、住宅改修実施割合に有意な関連の認められた因子は以下の通り。

     まず、調整オッズ比(aOR)が有意に高い因子として、女性〔男性に対してaOR1.182(95%信頼区間1.026~1.361)〕、下肢障害〔aOR1.290(同1.148~1.449)〕、バランス障害〔何らかのサポートにより立位保持可能でaOR1.724(1.429~2.080)、立位保持不能でaOR2.176(1.608~2.945)〕などが抽出された。

     反対に、調整オッズ比の有意に低い因子は、認知機能障害〔認知症高齢者の日常生活自立度のランクIでaOR0.774(0.690~0.868)、IIa以上でaOR0.553(0.434~0.704)〕、視覚障害〔aOR0.861(0.741~0.999)〕、生活保護受給〔aOR0.147(0.092~0.235)〕で認められた。なお、聴覚障害や上肢障害では、有意なオッズ比の上昇や低下は見られなかった。

     このほか、住宅改修コストについても、視覚障害による改修では中央値12万5,304円に対して、視覚障害以外による改修では13万8,047円で前者の方が有意に低いことなどが分かった(P=0.018)。

     これらの結果をもとに論文では、「認知機能や視機能に障害のある高齢者の住宅改修実施割合が相対的に低いことが明らかになった」と結論付けられている。著者によると、例えば温度の上限設定が可能な給湯システムへの改修によって認知機能障害のある要支援者の熱傷を防いだり、屋内の危険な箇所の素材変更や照明の設置により視覚障害者の受傷を防ぐことが可能という。ただし、これらの改修コストは、現時点では給付対象にならないことから、論文では「政策立案者は、給付制度の改善を検討する必要があるのではないか」とも述べられている。

     なお、生活保護受給者の住宅改修割合が低い理由としては、「その88.1%が賃貸住宅に居住しているため、必要があっても改修できないケースがあると考えられる」との考察を加えている。

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    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

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    HealthDay News 2022年6月27日
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  • 体重が実際より重いと思っている人は筋量で評価したサルコペニアに該当する可能性が高い――大阪府摂津市での研究

    サルコペニアとは筋量や筋力が低下し、疾患や要介護のリスクが高い状態である。自分の体重が実測値よりも重いと思っている人はサルコペニアの診断基準の1つである低筋量に該当する可能性が高いことを示す研究結果が報告された。医薬基盤・健康・栄養研究所 身体活動研究部の中潟崇氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Physiological Anthropology」に5月5日掲載された。

    体重の自己認識の誤り(実際より軽い、または重いとの誤解)が、さまざまな疾患のリスクと関連していることが報告されている。ただし、自己認識の誤りと筋量との関連はまだ報告がないため、中潟氏らは大阪府摂津市の地域住民を対象とした、大阪府との共同事業「大阪府健康格差の解決プログラム促進事業」で得られた研究データを解析し、この点を検討した。

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    研究参加者は、40~91歳の成人525人(年齢の中央値72歳、83%が女性、平均BMIは22.5)であり、同市の広報誌などを通じて募集された。指標として、「サルコペニア」の診断基準の1つである「腕と脚の筋量を身長の2乗で除した骨格筋指数(SMI)」を用いた。アジア人のサルコペニアの診断でのSMIの基準値は、男性7.0未満、女性5.7未満(生体電気インピーダンス法による)で、本研究の参加者の該当者割合は9.3%だった。

    研究参加者に、まず自分の体重を0.1kg単位で申告してもらい、その後に体重を測定。自己申告の体重から実測値を減算して誤差を割り出し、その誤差の幅を実測値に対する比率として評価した。例えば、自己申告が65.0kgで実際の体重が66.0kgの場合、〔-1.0÷66.0×100=-0.51〕で、誤差は-0.51%。

    参加者全体の誤差は、中央値0.9%(四分位範囲-0.3~2.0)だった。体重の過小評価から過大評価の幅で男女ごとに3群に分類すると、過小評価群は中央値-0.8%(過小評価)、中央群は同0.9%(過大評価)、過大評価群は2.4%(過大評価)だった。平均BMIは同順に、23.5、22.3、21.6で、自分の体重を過大評価している群は、実際のBMIが低い傾向だった。

    SMIがサルコペニア基準値未満の割合は、全体では前述のように9.3%であり、これを3群別に見ると、過小評価群から順に、4.6%、6.8%、16.6%となった。つまり、自分の体重が実際よりも重いと思っている人ほど、低筋量に該当する割合が高かった。

    次に、年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、自己申告に基づく体力・健康度・社会経済的状況の影響を調整し、中央群を基準として、SMIがサルコペニア基準値未満に該当するオッズ比を計算。結果、過大評価群はオッズ比2.37(95%信頼区間1.03~5.44)とオッズ比が統計的に有意に高かった。過小評価群はオッズ比0.97(同0.34~2.86)で、中央群と有意差は見られなかった。

    以上より、自分の体重が実際よりも重いと思っている40歳以上の日本人は、サルコペニアの診断基準の1つである低筋量に該当するオッズ比が2.37倍高いことが明らかになった。著者らは、「われわれの研究結果は、人々が自分自身の体重を正しく認識することへの働きかけが、公衆衛生上の重要な戦略である可能性を示唆している」と結論付けている。

    なお、体重の過大評価が低筋量に該当する可能性が高いことの理由として、著者らは「横断研究のためこれらの因果関係は不明であるが、体重を過大申告する人はBMIが低い傾向にあり、このことはエネルギー摂取量がエネルギー必要量を下回っている可能性があること、また、体重測定をあまり行わない人ほど誤差が大きくなることなどの影響があるのではないかと考察している。

    医薬基盤・健康・栄養研究所は、医薬基盤研究所(大阪府茨木市)と国立健康・栄養研究所(東京都新宿区)が平成27年に統合されて国立研究開発法人としてスタートを切り、今年度中に著者らの所属する国立健康・栄養研究所が現在の東京から本研究が行われた大阪府摂津市に移転予定。中潟氏らは健康な日本人を対象とした腸内細菌叢に関する研究も展開しており、「移転後の北大阪健康医療都市(健都)からも、日本人の健康寿命延伸に資するエビデンスを発信していきたい」と述べている。

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    治験・臨床試験についての詳しい説明

    参考情報:リンク先大阪府/働く世代からのフレイル予防動画国立健康・栄養研究所/腸内細菌叢データベース
    HealthDay News 2022年6月13日
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  • 緑茶がフレイルを抑制する?――亀岡スタディ

     緑茶の摂取頻度が高い人はフレイルリスクが低いという関連を示す報告が「Nutrients」に11月19日掲載された。京都府亀岡市で行われている「亀岡スタディ」のデータを、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の南里妃名子氏らが解析したもの。

     フレイルとは、さまざまなストレスへの耐性が低下した「要介護予備群」の状態のこと。意図しない体重減少などが生じ、死亡リスクの上昇とも関連することが報告されている。これまでの研究で、抗酸化作用を持つ栄養素を含む食品の摂取量が多いほどフレイルリスクが低いことが示唆されている。緑茶にはカテキンなどの抗酸化作用物質が豊富に含まれており、フレイルリスクを抑制する可能性があるが、そのエビデンスは明らかではなかった。

    フレイルに関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
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     南里氏らが解析に用いた亀岡スタディは、介護予防の推進と検証を目的に、同市に居住する65歳以上の高齢者を対象として2011年にスタートした前向きコホート研究である。要支援・介護認定を受けている人やフレイル評価が欠落していた人を除外し、5,668人(男性48.8%)の登録時データを横断的に解析した。なお、フレイルは、厚生労働省の基本チェックリストで25点中7点以上の場合と定義。また、緑茶の摂取頻度は、アンケートの回答を基に、「ほとんど飲まない」、「1日1杯未満」、「1日1~2杯」、「1日3杯以上」に分類した。

     まず、緑茶の摂取頻度と関連のある因子を検討すると、性別を問わず、緑茶摂取頻度が高い群は、より高齢で、エネルギー摂取量が多く、果物や野菜の摂取頻度も高く、現喫煙者は少なく、またコーヒーの摂取頻度が高い傾向が見られた。ただしBMIと飲酒習慣との関連は見られなかった。

     フレイルの有病率は男性29.3%、女性30.6%だった。フレイルリスクに影響を与え得る因子(年齢、BMI、摂取エネルギー量、喫煙・飲酒習慣、コーヒー摂取量など)を調整後、男女ともに緑茶摂取頻度が高いほどフレイル有病率が有意に低くなる傾向がみられた(傾向性P値が男性は0.02、女性は<0.01)。また、男性では「ほとんど飲まない」を基準としたとき、1日3杯以上飲む群でオッズ比(OR)の有意な低下が認められた〔OR0.71(95%信頼区間0.54~0.94)〕。さらに女性では、全ての群でオッズ比が有意に低かった。

     これらの関連について、年齢(75歳未満/以上)で層別化して解析すると、男性では有意な交互作用が観察され、75歳以上でのみ関連が見られた(交互作用P=0.01)。一方、女性では年齢と緑茶摂取との間に有意な交互作用は認められず、年齢に関係なく緑茶摂取頻度とフレイルとの間に有意な負の関連が認められた(交互作用P=0.15)。

     次に、基本チェックリストの下位尺度と緑茶摂取頻度との関連を検討すると、男性では、認知機能や口腔機能との負の関連が認められた(いずれも傾向性P=0.02)。女性では、認知機能や口腔機能だけでなく、手段的日常生活動作(IADL)も緑茶摂取頻度と負の関連が認められ(いずれも傾向性P<0.01)、さらに運動機能との有意な負の関連も認められた(傾向性P=0.01)。

     これらの結果から著者らは、「緑茶の摂取頻度が高いほど、フレイル有病率が低くなる傾向があることが確認された」と結論付け、「縦断研究による因果関係の確認が求められる」と述べている。なお、全体的に男性よりも女性において、低い緑茶摂取頻度でもフレイル有病率が低下する傾向が認められたことに関して、「女性は閉経後、女性ホルモンの分泌低下とともに全身の慢性炎症傾向が強まり、体タンパクの異化が亢進することが報告されている。そのため、緑茶に多く含まれる栄養素の抗酸化作用がもつ生物学的利用能がより効率的に働くことで、フレイル発症に対して効果をもたらすのではないか」との考察を加えている。

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    HealthDay News 2022年1月17日
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  • 閉経年齢や妊娠回数がADL制限と有意に関連――JPHC研究

     女性の閉経年齢や妊娠回数などと日常生活動作(ADL)制限との関連を調査した研究結果が報告された。閉経の時期が標準的な50~54歳の人に比べて、早い場合も遅い場合も、その後にADLが低下していることが多いと分かった。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に9月5日掲載された。

     ADL(Activities of Daily Living)とは、日常生活を送るために最低限必要な動作のことで、ADLに制限がある状態は要介護につながりやすく、死亡リスクも上昇することが報告されている。これまでの研究から、閉経などによって女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が低下すると、骨粗鬆症が起きやすくなり、さらには身体機能の低下にもつながることが示唆されている。ただしADLとの関連は十分に調査されていなかった。

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     今回発表された研究の対象は、1990年と1993年に、岩手県二戸、長野県佐久、茨城県水戸、東京都葛飾区、大阪府吹田、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古など11の保健所管内に居住していた40~69歳の女性のうち、調査開始時と10年後(2000~2004年)のアンケートに回答した3万9,248人。2回のアンケート結果に基づいて、女性関連要因(初潮年齢、月経周期、月経規則性、妊娠・出産経験と回数、初回妊娠・出産年齢、授乳経験、閉経の有無と閉経年齢、女性ホルモン剤服用の有無)とADL制限との関連を解析した。

     ADLについては、アンケートの回答内容から、「屋内での生活はおおむね自分でできるが、介助なしには外出しない」に該当する、またはそれより低いレベルに該当する場合は「ADL制限あり」と判定し、それら以外を「ADL制限なし」と判定した。その結果、ADL制限ありの該当者は592人(平均年齢68.3±7.6歳)、ADL制限なしの該当者は3万8,656人(61.1±7.7歳)だった。

     ADLに影響を及ぼし得る因子(年齢、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、地域、がん・循環器疾患・脳血管疾患の既往、閉経年齢、調査開始時点での月経周期規則性)を統計学的に調整後、閉経年齢が標準的な50~54歳だった群に比較し、40~44歳と早く閉経していた群は、ADL制限ありに該当するオッズ比(OR)が1.44(95%信頼区間1.09~1.90)だった。一方で、55~60歳と遅くに閉経していた群もOR1.55(同1.09~2.18)であって、閉経が早くても遅くてもADL制限に該当する確率が有意に高いことが分かった。閉経年齢が45~49歳の群は50~54歳の群と有意差がなかった。

     妊娠回数に関しては、回数が多いほどADL制限に該当する確率が低い傾向が見られた(傾向性P=0.052)。妊娠回数0回に対して、2回および3回ではOR0.51と、リスクがほぼ半分であり、4回ではOR0.63だった(いずれもP<0.05)。妊娠回数1回ではOR0.71で、妊娠回数0回の群と有意差がなかった。

     その他の女性関連要因はADL制限との関連が見られなかった。

     これらの結果について研究グループでは、「閉経年齢が早い人と遅い人の双方で、ADL制限のリスクが高いという結果が得られた。早期閉経は心疾患などのリスクが高まること、および、閉経年齢が早くエストロゲンに曝される期間が短いと身体機能低下のリスクが高いことが、ADL制限につながった可能性が考えられる」と述べている。また閉経年齢が遅いことによるADL制限リスクの上昇については、「閉経後のエストロゲンレベルが高い方がフレイル(加齢などに伴い心身が弱くなる状態)のリスクが高いという報告がある。しかし、今回の調査では把握されていない、ADL制限につながるほかの要因が存在する可能性もある」として、今後のさらなる研究の必要性を指摘している。

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    更年期のセルフチェック。高齢女性の更年期の時期にすべての人がなるわけではありませんが「更年期障害」を及ぼすときもあります。どういったことが該当し、どういったことに気を付けてチェック項目をご紹介しています。

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    HealthDay News 2021年11月8日
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  • サルコペニア予防に筋トレ+必須アミノ酸+茶カテキンを

     高齢者のサルコペニアの予防に筋力トレーニングが推奨されているが、必須アミノ酸と茶カテキンの摂取を追加すると、より大きなメリットを得られる可能性を示唆するデータが報告された。骨格筋量の増大に加えてバランス力も向上できる可能性が示唆されたという。徳島大学先端酵素学研究所の森博康氏らの研究によるもので、詳細は「Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition」6月号に掲載された。

     加齢や疾患などで筋肉量減少や筋力低下が生じる「サルコペニア」は、要介護状態につながりやすく、効果的な予防・改善策の模索が続けられている。これまでのところ、筋力トレーニングに一定の効果があることが示されているが、栄養介入の有効性を示すエビデンスは十分でない。

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     こうした中、体内で作ることができないために食事からの摂取が欠かせない必須アミノ酸、特に筋タンパク質の合成を促すロイシンの重要性を示す報告が増えている。また、緑茶の渋みの成分である茶カテキンは、ミトコンドリアの機能を高めて加齢による筋委縮を抑制することが動物実験で示されている。ただし、ヒトを対象とした研究は少なく、これらの摂取によって高齢者のサルコペニアを予防し得るかは明らかでない。森氏らは一般高齢者を対象とする研究により、筋力トレーニングに加えて必須アミノ酸や茶カテキンを摂取した場合の有効性を検討した。

     研究の対象は、兵庫県在住の高齢者から募集された、サルコペニアや糖尿病、慢性腎臓病でない84人。無作為に以下の3群に分け、非盲検下で24週間介入し、筋肉量や筋力、バランス力、生活の質(QOL)などの変化を検討した。

     筋力トレーニング群(Ex群)は、1回1時間の筋力トレーニング指導を週に2回実施した。他の2群にもこの筋力トレーニングを指導した上で、必須アミノ酸群(Ex+AA群)はロイシンが高配合された必須アミノ酸試験食を、トレーニング終了後30分以内に摂取してもらった。さらに残りの1群(Ex+AA+TC群)には、高濃度茶カテキン試験食も同時に摂取してもらった。

     ベースラインにおいて3群間で、年齢、男女比、BMI、ふくらはぎ周囲長、栄養状態(MNA-SFスコア)、1日の歩数に有意差はなかった。また、介入期間中は、筋肉量や筋力に影響を及ぼし得るタンパク質の摂取量が、全群とも1.2g/kg/日以上となるように管理栄養士による食事管理が行われた。ベースライン時および介入終了時の食事調査の結果、摂取エネルギー量およびタンパク質摂取量に、有意な群間差は認められなかった。

     24週間の介入によって、ベースライン時から以下の有意な変化が認められた。

     まず、筋力トレーニングのみを行ったEx群では、握力(P=0.007)、膝伸展力(P=0.017)、歩行速度(P=0.012)、および身体的QOL(P=0.016)が有意に向上していた。

     必須アミノ酸摂取を追加したEx+AA群ではEx群と同様、握力(P=0.019)、膝伸展力(P=0.020)、歩行速度(P=0.002)、身体的QOL(P=0.041)が有意に向上し、さらに四肢の筋肉量を表す筋骨格指数(SMI)も有意に向上していた(P=0.014)。

     茶カテキン摂取も追加したEx+AA+TC群では、Ex+AA群と同様、握力(P=0.038)、膝伸展力(P=0.013)、歩行速度(P=0.008)、身体的QOL(P=0.020)、SMI(P=0.004)が有意に向上し、さらにバランス力を表す片足立ち持続時間も有意に伸びていた(P=0.045)。しかし、介入後のSMI、握力、膝伸展力、歩行速度、バランス力、身体的QOLの変化率をEx群、Ex+AA群、Ex+AA+TC群で比較検討したが、3群間で有意な差を認めなかった。

     精神的QOLについては3群とも有意な変化が見られなかった。

     著者らは、「健常な高齢者を対象に筋力トレーニング後の必須アミノ酸や茶カテキン摂取による、サルコペニア予防における上乗せ効果を検証した。特に、茶カテキン摂取は、バランス力の向上に寄与できる可能性が示唆された。一方、筋力トレーニングのみではSMIの有意な上昇は見られなかった」と結論付けている。なお、国内で市販されている緑茶飲料の茶カテキン含有量は、1杯(120mL)当たり約80mgとのことだ。本研究で使用された高濃度茶カテキン試験食には、市販の緑茶飲料の6~7倍の茶カテキンが含有されている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    HealthDay News 2021年8月23日
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  • 趣味やスポーツ・就労で介護コストが13~25%減少

     高齢者が趣味やスポーツを行ったり仕事を継続した場合、介護コストを大きく削減できる可能性を示す研究結果が報告された。日本福祉大学社会福祉学部の斉藤雅茂氏らが行った、国内12市町村の高齢者を6年間前向きに追跡したコホート研究の結果であり、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に5月19日、論文が掲載された。

     この研究の対象は、2010年8月~2011年12月に日本老年学的評価研究(JAGES)の調査に協力した65歳以上の高齢者のうち、要介護認定を受けていない5万1,302人。この人たちを2010年8月から2016年11月まで約6年間追跡。転居により追跡不能となった人などを除外して、4万6,616人を解析の対象とした。このうち4,350人(11.8%)が追跡期間中に死亡し、7,348人(15.8%)が新たに介護保険の利用を開始していた。

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     介護保険の利用点数から介護コストを算出し、研究参加時に行った質問紙による調査に基づいて、社会活動(趣味、スポーツ、ボランティア)への参加や就労の有無別に、その後の介護コストを比較検討した。その結果、以下に示すように、社会活動に参加したり就労を続けていた人では介護コストが少ないことが明らかになった。

     まず、趣味に関する活動に全く参加していない人(全体の54.1%)では6年間で13.9%が死亡し、23.6%が要介護状態になり、1人当たり平均42.8万円の介護コストが発生していた。それに対して趣味活動に年数回参加している人(8.7%)の介護コストは21.4万円、1カ月1~2回の人(13.6%)は20.7万円、週1回の人(11.5%)は22.5万円、週2回以上参加している人(11.8%)は18.6万円だった。

     同様に、スポーツ活動に全く参加していない人(72.8%)は39.2万円であるのに対して、年に数回参加している人(4.1%)は17.2万円、1カ月1~2回の人(4.5%)は18.6万円、週1回の人(7.1%)は15.9万円、週2回以上参加している人(11.6%)は15.5万円だった。また、就労していない人(同76.1%)が37.9万円であるのに対して、就労している人は14.8万円だった。

     なお、ボランティア活動に関しても、参加していない人より参加している人の介護コストの方が低かった。ただし、ボランティア参加が高頻度の場合にコスト縮小幅が減少するという点で、他の社会活動への参加とは異なる傾向が見られた。

     次に、要介護リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、婚姻状況、独居か否か、併存疾患・障害、教育歴、収入、主観的健康感、物忘れの自覚、居住地域など)を調整した上で、同様の検討を行った。その結果、やはり研究参加時に社会活動に参加していた人や就労していた人の方が、有意に介護コストが低いことが確認された。全ての人が社会活動に参加したり就労を続けたと仮定して、6年間の介護コストを試算したところ、介護コストは趣味に関する活動で19.9%、スポーツ参加で25.3%、就労継続で13.4%抑制されると考えられた。

     著者らは本研究を、高齢者の社会活動参加や就労継続が公的な介護費の抑制に寄与することを示した初の研究と位置付けている。研究の限界点として、社会活動の内容の詳細が把握できていないこと、寿命の延伸に伴い生涯の総介護コストは増大する可能性を否定できないことなどを挙げた上で、「高齢者の社会活動と就労を促進することが、将来の介護コストの削減に役立つ可能性がある」と結論付けている。なお、ボランティア活動への参加頻度が高い場合に介護コスト抑制幅が減少することの理由として、「あまりに頻繁なボランティア活動は“無償の強制労働”という側面が生じてしまうのではないか」と考察を述べている。

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    HealthDay News 2021年7月12日
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  • フレイルと交通格差の関係が明らかに――東京都健康長寿医療センター

     国内の都市、郊外、農村に住む高齢者の移動手段を比較した研究結果が発表された。フレイルに該当する場合、どの地域に住んでいるかにかかわらず、移動手段が限定的になる傾向が見られたが、郊外や農村の居住者は都市部の居住者に比べて、他者が運転する車に同乗する人の割合が高いなどの相違が認められた。移動の機会や手段が限られることで、身体的フレイルに加え社会的フレイルが助長されることも懸念される。

     フレイルとは、加齢による心身機能の低下などにより身体的・心理的ストレスに対する耐性が脆弱化した状態で、要介護予備群に相当する。適度な運動を継続し、社会との接点を保つことが予防対策として重要とされ、それには高齢者が気軽に外出できる環境の整備が必要とされる。交通インフラは地域によって異なり、都市に比べて郊外や農村は高齢者の移動手段が限られている。しかし、その違いがフレイル該当者の移動にどの程度影響を及ぼすかについては、これまで十分明らかにされていなかった。

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     東京都健康長寿医療センター研究所の阿部巧氏らは、国内3地域で実施された高齢住民を対象とした調査の結果を比較し、この点に関する詳細な検討を行った。その結果が「International Journal of Environmental Research and Public Health」に9月1日、掲載された。

     解析には、東京都大田区(人口密度1万1,814人)を都市、埼玉県鳩山町(同541人)を郊外、群馬県草津町(同132人)を農村とし、それぞれの地域に居住する65歳以上で要介護認定を受けていない5,032人、2,853人、1,219人から得た調査結果を利用した。フレイルの判定は、東京都健康長寿医療センターが開発した「介護予防チェックリスト」に基づき、15点満点中4点以上をフレイルと定義した。移動手段は、歩行、自転車、自動車の運転、他者が運転する車への同乗、公共交通機関について、それぞれ週に1回以上利用するかどうかを評価した。

     対象者9,104人の平均年齢は73.5±5.7歳、女性が51.1%、独居者が15.2%で、1,714人(18.8%)がフレイルに該当した。年齢、性別、独居か否か、脳卒中または骨・関節疾患の既往で調整後、フレイルに該当するか否かで移動手段を比較すると、都市、郊外、農村のいずれにおいてもフレイル該当者は非該当者に比べて、車への同乗を除き全ての移動手段の利用が有意に少なかった。

     他者が運転する車の利用は、都市ではフレイル該当者と非該当者で有意差がなかったが〔非該当者に対するオッズ比(OR)1.08(95%信頼区間0.87~1.33)〕、郊外ではOR1.73(同1.32~2.25)、農村ではOR1.61(同1.10~2.35)と、フレイル該当者は有意に利用することが多いという、居住地域による相違が認められた。

     次に、フレイルの有無による交通手段の利用状況により生じる交互作用を、都市での差を基準として比較した結果から、自身で車を運転する割合の差が、農村では有意に大きいことが分かった。その一方、公共交通機関の利用に関するフレイルの有無による差は、都市に比較し農村では有意に小さいことが分かった。ただし後者の公共交通機関の利用割合は、農村においてはフレイルの有無にかかわらず20%未満と少なく、都市(フレイル該当者58.7%、非該当者74.9%)より大幅に低かった。なお、歩行や自転車については、有意な交互作用は見られなかった。

     これらの結果を著者らは、「フレイル該当者は非該当者に比べて移動の選択肢が限られており、その不利益は特に郊外や農村でより顕著であることが明らかになった」とまとめている。また、「フレイルに該当する高齢者のニーズを満たすための適切な移動手段を確保することが重要であり、都市と郊外・農村の交通格差を埋めるために、例えばライドシェアなどの代替手段を積極的に導入する必要がある」と結んでいる。

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    HealthDay News 2020年10月12日
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