• 自治体の介護予防事業とフレイルの関係――100人に1回の介入がリスク1割減に相当

    介護予防事業の実施回数が多い自治体に住む高齢者は、要介護予備群のフレイルになるリスクが低いことが明らかになった。東京大学大学院医学系研究科客員研究員の佐藤豪竜氏らの研究によるもので、詳細は「Social Science & Medicine」11月30日オンライン版に掲載された。

     この研究の対象は、日本老年学的評価研究(JAGES)に2010~11、2013、2016の各年に参加した人のうち、要介護認定を受けていない65歳以上の人。述べ81の市町村に住む37万5,400人(平均年齢74.1歳)について、各自治体の介護予防事業と、当該地域住民のフレイル該当者率との関連を検討した。フレイルの判定には、厚生労働省が作成した、外出頻度やBMIなどに関する25項目の質問からなる「基本チェックリスト」を用い、8点以上をフレイル、4点以上をプレフレイル(フレイル予備群)とした。

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     フレイルの該当者率は2010~11年25.1%、2013年16.1%、2016年9.9%で、プレフレイルは同順に59.9%、47.3%、38.5%であり、いずれも減少傾向が認められた。これは日本人高齢者の身体的・精神的健康が年々向上している影響が一部あると考えられる。なお、フレイルおよびプレフレイル該当者率は自治体間で開きがあり、2016年において前者は7.1~14.3%、後者は29.0~44.9%の範囲にあった。

     自治体による介護予防事業は、講演会や相談会の開催を主体とする「介護予防普及啓発事業」(教育イベント介入)と、住民参加型の“通いの場”やボランティア活動への参加を主体とする「地域介護予防支援事業」(社会活動介入)に大別される。今回の調査の結果、教育イベント介入は高齢者100人当たり調査年により2.09~3.63回/年、社会活動介入は1.74~3.49回/年実施されていた。また、高齢者100人当たり年40回以上実施している自治体がある一方で、全く行っていない自治体も存在した。

     フレイルの発症に影響を与える可能性がある性別、年齢、教育年数、所得、婚姻の有無、就労状況などで調整の上、予防事業との関連を解析すると、社会活動介入を多く実施している自治体ほどフレイル該当者率が低いことが明らかになった。具体的には、社会活動介入を高齢者100人当たり1回実施するごとに、フレイル該当者率が11%有意に減少することがわかった(オッズ比0.89、95%信用区間0.81~0.99)。市民がこうした活動に参加する機会が少ない地域ほど、介入効果が高いことも示された。

     一方、教育イベント介入には明確な効果が見られなかった(高齢者100人当たり1回の実施によるオッズ比0.92、95%信用区間0.78~1.08)。また、プレフレイルに対しては、社会活動、教育イベントのいずれの介入も効果が明らかでなかった。

     研究グループは、本研究を「自治体が地域の全高齢者を対象にポピュレーションアプローチとして行う介護予防事業とフレイルの関係を、世界で初めて検証したもの」と位置付けている。これまでの介護予防事業は運動や筋力トレーニング、栄養指導など、ハイリスクな対象への個別介入に主眼が置かれてきたが、国内でフレイル状態の高齢者は500万人以上とも推計され、ハイリスクアプローチのみでは実効性に限界がある。本研究でポピュレーションアプローチとフレイル該当者率の低下に相関関係が認められたことから、佐藤氏らは「今後は因果関係の証明など、さらなる研究成果を期待したい」と述べている。

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    HealthDay News 2019年12月23日
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  • 心理的フレイルの頻度は3.5%で要介護のリスク因子

    国内の地域在住高齢者における心理的フレイルの頻度は3.5%であり、身体的フレイル以上に要介護状態になるリスクが高いことがわかった。国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センターの島田裕之氏らの研究によるもので、「Journal of Clinical Medicine」に9月27日オンライン掲載された。

     フレイルは、加齢に伴いストレス耐性が低下した状態をさし、身体的フレイルと心理的フレイルに大別される。身体的フレイルは要介護状態の予備群であるとするエビデンスが豊富だが、心理的フレイルの予後についてはこれまで詳しくわかっていなかった。島田氏らは、国立長寿医療研究センターの大規模コホート研究(NCGG-SGS)の登録者を対象として、心理的フレイルの影響を検討した。

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     愛知県大府市の65歳以上の住民から5,104人を募集し、脳卒中や認知症、うつ病などの既往がある人を除外して、平均49.2±9.4カ月追跡した。データの欠落があった人を除いて最終的に4,126人(平均年齢71.7±5.3歳、男性49.2%)を解析対象とした。歩行速度や握力・身体活動の低下、体重減少、疲労感によって身体的フレイルを判定すると、全体の6.9%が該当した。また、抑うつを評価する質問票によるテストの結果、全体の20.3%に気分の落ち込みが見られた。

     身体的フレイルに該当し、かつ気分の落ち込みが認められた人を心理的フレイルと定義すると、3.5%が該当した。これを性別に見ると、身体的フレイルは男性より女性で多いのに対し(P<0.05)、気分の落ち込みや心理的フレイルについては性差がなかった。また年齢層別に見ると、身体的フレイル、気分の落ち込み、心理的フレイルのいずれも、加齢とともに頻度が増えることがわかった。

     追跡期間中に全体の385人(9.3%)が要介護認定を受けていた。年齢や性別、喫煙習慣、独居、転倒歴、糖尿病、高血圧など、要介護のリスク因子で調整した後、フレイルでなく気分の落ち込みもない人を基準として、要介護認定を受けるリスクを比較すると、気分の落ち込みを伴わない身体的フレイルはハザード比1.69(P=0.006)、フレイルでなく気分の落ち込みのある人は1.05(P=0.734)、心理的フレイルでは2.24(P<0.001)となった。これにより、身体的フレイルと心理的フレイルはともに要介護の有意なリスク因子であることが示された。一方、気分の落ち込みだけの場合は要介護の有意なリスクでなかった。

     このほか、対象者に生活習慣や社会・生産活動への参加状況をアンケートで調査し、心理的フレイルとの関連を検討した結果、カルチャーレッスンを受講していないこと、野外作業やガーデニングをしていないことが、心理的フレイルのリスクと有意に関連することがわかった。この検討は断面調査であるため因果関係の証明にはならないが、心理的フレイルの予防法を検討する際に有用な情報となり得る。

     以上一連の結果から島田氏らは、「心理的フレイルは要介護状態の発生と関連する。従って、高齢者の障害を予防するための施策推進に際して、心理的フレイルを医学的な指標として使用可能であることが実証された」とまとめている。

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    HealthDay News 2019年10月21日
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  • 身体的フレイルの簡易チェックシート、Yes/Noで答えるだけ

    身体的フレイルを短時間で評価でき、妥当性が確保されたチェックシートが開発された。要介護状態への進行防止のため介入が必要とされる対象者を効率的に抽出できる。九州大学キャンパスライフ・健康支援センターの熊谷秋三氏らが開発したもので、詳細は「Journal of the American Medical Directors Association」オンライン版に9月12日掲載された。

     身体的フレイルは、加齢に伴いストレス耐性が低下した状態で、要介護の予備群であることが実証されており*、早期発見と早期介入の必要性が高まっている。 フレイルに該当する高齢者は少なくないが、現状において統一された診断基準がなく、いくつかのテストを課す診断方法が提案されている。しかし、いずれもテスト項目の中に、握力・歩行速度の測定といった調査・判定に時間を要するものが含まれている。よって、健診など短時間で多数に実施する必要がある場合への適用にハードルがある。
     *J. Nutr. Health Aging,2019(doi.org/10.1007/s12603-019-1242-6)

     熊谷氏らは、福岡県糸島市と共同でフレイルに関する疫学調査(糸島フレイル研究)を継続中で、そのデータを利用し今回のチェックシートを開発した。日本人の前期高齢者向けに作られており、5項目、6つの質問に「はい」「いいえ」で答えるだけで身体的フレイルを判定可能だ。

     チェック項目は以下の通り。なお、各項目の頭文字を並べると「Frail(フレイル)」となる。
     Fatigue(疲労感):気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか/何をするのも骨折りだと感じましたか…1.はい・0.いいえ(どちらか1つにあてはまる場合も「はい」に〇)
     Resistance(筋力):階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか…0.はい・1.いいえ
     Aerobic(有酸素能力):1kmぐらいの距離を続けて歩くことができますか…0.はい・1.いいえ
     Inactivity(活動量低下):1日のうち、座っている又は横になっている時間は、起きている時間の80%以上ですか…1.はい・0.いいえ
     Loss of weight(体重減少):6カ月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか…1.はい・0.いいえ

     このチェックシートの妥当性を、糸島フレイル研究の登録者である65~75歳の高齢者858人を対象に、既存の診断方法(Fried Frailty Phenotype)と比較し確認したところ、ROC解析で良好な値を示した。またスクリーニングにおいては、合計スコアを3点に設定する場合が、日本人の地域在住高齢者におけるカットオフ値となることが実証された。

     フレイルに対しては、2024年度までに全ての市町村でチェック・予防事業が開始されることが決まっている。そのため、より実効性の高いスクリーニング法として、今回開発されたチェックシートのような簡便で妥当性のある手法への期待が高まっている。

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    HealthDay News 2019年10月7日
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  • 家族などによる介護の負担、終末期には倍増

    米国でも家族を中心とした「無償の介護者」が高齢者介護を担うことは珍しくないが、特に死期が近づくと、介護者への負担が倍増することが米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のKatherine Ornstein氏らによる研究で分かった。高齢者約2,400人とその介護者のデータを分析した結果、終末期に介護者が介護に費やした週当たりの時間は、終末期以外での介護時間と比べて約2倍に上ることが明らかになったという。。

     米国介護連盟および全米退職者協会(AARP)が実施した2015年の調査によると、過去12カ月以内に50歳以上の高齢者に対して無償の介護を提供した米国民は3400万人を超え、その多くは女性だった。一方、終末期の介護に家族などの無償の介護者がどの程度関わっているのかについては、これまで定量化されたことがなかった。

     そこでOrnstein氏らは今回、65歳以上の高齢者およびその介護者に対して実施された調査データを用い、終末期にある高齢者と終末期ではない高齢者との間で、ケアを担う介護者の数や、介護に費やされている時間などを比較した。「終末期」は調査から12カ月以内に高齢者が死亡した場合と定義した。

     その結果、終末期の高齢者を介護する介護者数は平均2.5人で、週当たりの介護時間は61.3時間だった。これに対し、終末期ではない高齢者では週当たりの介護時間は35.5時間だった。

     また、「介護で身体的な困難がある」と回答した介護者の割合は、終末期を迎えた高齢者の介護者では35%を占めていたが、終末期以外の高齢者の介護者では21%にとどまっていた。「自分のための時間がない」と回答した介護者の割合も、前者では51%に上っていたが、後者では21%だった。

     なお、介護者の約9割が報酬のない無償の介護者だったが、介護者が配偶者である場合、ほぼ3分の2は他の家族や友人などによる支援を受けずに介護を担っていたことも分かった。

     患者の権利や終末期の問題などの擁護活動を行っている団体であるCompassion & Choices代表のBarbara Coombs Lee氏は、今回の調査対象となった介護者が、必ずしも介護をしている高齢者が終末期にあることを認識していなかった可能性があることを指摘。死期が近いことを認識していないと、無益かつ大きな苦痛を伴う治療を選択することにつながりやすく、それによって介護者の負担が増大してしまう場合があると説明している。

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     一方、今回の研究を実施したOrnstein氏は「終末期の介護では家族の負担が重くなるということを、より多くの人に知ってもらいたい」と話す。また同氏は、緩和ケアサービスへのアクセスの拡充についても検討する必要性を強調。「それによって家族に対する支援サービスの提供も促されるのではないか」としている。

     Lee氏もまた、ホスピスや緩和ケアにアクセスしやすい環境を整備すべきとの意見に同意し、これらの利用を阻む障壁となっている最大の要因は情報不足であることを指摘。「医師が積極的に共有しようとしない情報を知り、率直な対話をすることが、緩和ケアの普及につながるのではないか」との見方を示している。この研究は「Health Affairs」7月号に掲載された。

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    HealthDay News 2017年8月22日
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