• 男性、ピロリ菌感染などの胆石リスク因子が明らかに――静岡県内60万人超の縦断的解析

     日本人を対象とする大規模な縦断的研究から、胆石のリスク因子が報告された。ピロリ菌感染などの従来あまり知られていなかった因子が、胆石発症に関連していることや、女性よりも男性の方がハイリスクであることなどが明らかになったという。静岡社会健康医学大学院大学の東園和哉氏、中谷英仁氏、藤本修平氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に12月30日掲載された。

     胆のうや胆管にできる結石「胆石」は、詳しい検査をすると成人の10人に1人に見つかるとされるほど多いもので、大半は無症状。ただし、膵炎や胆道閉塞、胆のうがんのリスクと関連していることが知られており、また感染を引き起こして強い痛みや発熱が生じ緊急手術が必要になったり、時に命にかかわることもある。よって、仮に修正可能な胆石のリスク因子があるのなら、それらに対して予防的に介入することのメリットは少なくない。しかしこれまでのところ、胆石のリスク因子に関する日本人での大規模研究は実施されておらず詳細は不明であり、胆石予防のための積極的介入を行うという公衆衛生対策もなされていない。この状況を背景として東園氏らは、静岡県の国民健康保険および後期高齢者医療制度のデータを用いた後方視的縦断研究を実施し、日本人の胆石発症リスク因子を探索した。

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     解析対象は、2012年4月~2020年9月に特定健診または後期高齢者健診を受けた人から、ベースライン時に胆石の既往のあった人と追跡期間が1年に満たなかった人を除外した61万1,930人。中央値5.68年(最長7.5年)の追跡で、2万3,843人(3.9%)が胆石を新規発症していた。

     多変量回帰分析の結果、男性〔ハザード比(HR)1.09(95%信頼区間1.06~1.12)〕や、高齢であること〔40歳未満を基準とするハザード比が50代1.94、60代2.54、70代3.34、80代3.97〕は、胆石発症に関連のあることが明らかになった。検査値関連では、BMI〔1kg/m2ごとにHR1.04(同1.04~1.05)〕、HbA1c〔1%ごとにHR1.03(1.01~1.04)〕、GGT〔100U/LごとにHR1.15(1.13~1.16)〕の高さが、胆石リスクの上昇と関連していた。また既往症としては、高血圧、糖尿病、腎臓病、肝疾患、ピロリ菌感染、慢性肺疾患、脳血管疾患、心不全、がん、認知症、リウマチ性疾患が、胆石の発症に関連していた。

     反対に、習慣的な運動は、胆石リスクの低下と関連していた〔週に1時間以上のウォーキングでHR0.91(0.89~0.94)〕。また、LDL-C〔10mg/dLごとにHR0.98(0.98~0.99)〕や収縮期血圧〔10mmHgごとにHR0.98(0.97~0.99)〕が高いことも、胆石リスクの低下と関連していたが、これは著者によると、脂質低下薬や降圧薬による治療を受けている人の存在が結果に影響を及ぼしている可能性があるという。

     以上の結果のうち、著者らは既報研究には見られない新たな知見をいくつかピックアップし、考察を加えている。

     まず、従来は男性より女性の方が胆石リスクは高いとされており、その理由として女性ホルモンが胆石の形成を促すように働くためといった解釈がされていた。今回の研究で男性の方がハイリスクという結果が示されたことを説明可能な一つの理由として、「近年、男性の肥満化傾向が続いているために胆石リスクが上昇してきているのではないか」と記されている。このほか、ピロリ菌感染や腎臓病、慢性肺疾患、がん、リウマチ性疾患と胆石との関連も、大規模な縦断的解析の結果として示したのは、本研究が初めてのことだという。

     論文の結論は、「胆石の発症リスクを抑制するための対策に、これらの研究結果を活用できるのではないか」とまとめられている。

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    HealthDay News 2023年3月13日
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