脂質低下療法後の受診頻度、心血管イベントや死亡と有意に関連せず

 脂質異常症の治療では、薬物療法と定期的な受診が行われる。では、受診頻度が高いほど、心血管イベントや死亡のリスクは低くなるのだろうか。今回、日本の国保データベースを用いた研究で、脂質低下療法を開始した患者では、月1回程度の受診と2~3カ月に1回程度の受診で、心血管イベントや死亡のリスクに統計学的に有意な差は認められなかった。研究は、藤枝市立総合病院・藤枝市家庭医療センターの松永拓氏、名古屋医療センター臨床研究センターの中谷英仁氏、静岡社会健康医学大学院大学の菅原照氏らによるもので、詳細は8月2日付の「Journal of Health, Population and Nutrition」に掲載された。

 脂質異常症は心血管疾患や脳血管疾患の主要なリスク因子であり、生活習慣の改善や薬物療法による管理が重要となる。定期的な受診は服薬状況の確認や治療調整に役立つ一方、受診間隔が心血管イベントや死亡のリスクに及ぼす影響は明らかでない。日本では1人当たりの年間受診回数が経済協力開発機構(OECD)加盟国の中央値を上回っており、脂質異常症では月1回程度の受診が多い。2022年にはリフィル処方制度も導入されたが、受診間隔の延長が治療効果に及ぼす影響には不明な点が残る。そこで本研究では、脂質低下療法開始後の受診頻度と長期的な心血管・脳血管イベント、死亡との関連を検討した。

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 研究グループは、静岡県市町国保データベースを用いて、2012年4月1日~2021年9月30日に脂質低下療法を開始した40歳以上の患者を対象に、後ろ向きコホート研究を実施した。治療開始前1年間の評価があり、開始前6カ月以内に健診を受けた患者を対象とし、心イベント・脳血管イベントの既往、がん、維持透析、インスリン自己注射を行っている患者は除外した。治療開始後2年間の受診回数により、22回以上の高頻度受診群(月1回程度に相当)と8~12回の低頻度受診群(2~3カ月に1回程度に相当)に分類。6カ月ごとの区間で2回未満の受診となった患者も除外した。傾向スコアマッチング(1:3)を行い、治療開始後2年以内にイベントが発生した患者を除外した上で、低頻度群1,435人、高頻度群4,412人を解析した。平均5.3年間追跡し、心イベント、脳血管イベント、死亡の発生を比較した。

 平均5.3年間の追跡期間中、心イベント、脳血管イベント、死亡を合わせた複合アウトカムの発生率は、低頻度受診群、高頻度受診群ともに5.6%で、両群間に有意差は認められなかった(ハザード比〔HR〕1.08、95%信頼区間〔CI〕0.84~1.38、P=0.571)。さらに、治療開始後1年以内に健診で測定されたLDL-C(悪玉コレステロール)は、低頻度受診群113.64 mg/dL、高頻度受診群114.39 mg/dLで、両群間に有意差はなかった(P=0.478)。

 個別のアウトカムでは、心イベントの発生率は低頻度受診群3.8%、高頻度受診群3.6%(HR 1.13、95%CI 0.83~1.54)、脳血管イベントはそれぞれ1.3%、1.2%(HR 1.13、95%CI 0.67~1.90)、死亡は1.7%、1.9%(HR 0.94、95%CI 0.60~1.48)で、いずれも有意差は認められなかった。

 著者らは、病状が安定している一部の患者では、受診間隔を2~3カ月に延ばすことが合理的な選択肢になり得るかもしれない。受診間隔の延長は、リフィル処方制度の利用や医療資源の効率化につながる可能性がある。ただし、心血管リスクが高い患者や治療強化が必要な患者では、延長の可否を個別に判断する必要があると指摘している。

 一方、本研究の限界として、服薬状況や受診頻度に影響する未測定の要因を把握できず、因果関係を検証できないことなどを挙げている。また、心血管イベントや脳血管イベントの既往がある患者には結果を一般化できないとしている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2026年9月28日
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