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4月 13 2026 肝硬変患者の肝性脳症リスク、フレイル評価で予測可能か
肝硬変では、肝臓の機能低下に伴い意識障害や認知機能低下を来す「肝性脳症」が生じ、患者の生活の質や予後に大きく影響することが知られている。今回、肝硬変患者を対象とした研究で、簡便なフレイル評価指標であるClinical Frailty Scale(CFS)が、不顕性および顕性肝性脳症の発症リスクの層別化に有用である可能性が示された。研究は、岐阜大学医学部附属病院消化器内科の宇野女慎二氏、三輪貴生氏らによるもので、詳細は2月26日付で「JGH Open」に掲載された。
不顕性肝性脳症(CHE)は肝硬変患者の約40%に認められ、転倒や事故、死亡リスクの増加などと関連することが知られている。CHEが顕性肝性脳症(OHE)へ進行すると、入院の増加や社会生活への影響など患者や家族に与える負担は大きい。しかしCHEの診断には神経心理検査が必要で、時間や専門人材を要するため臨床現場での実施には限界がある。近年、肝硬変患者ではフレイルが入院や死亡など不良転帰と関連することが報告されている。そこで本研究では、CFSによるフレイル評価が、CHEおよびOHE発症リスクの層別化に有用かを検討した。
【肝硬変の治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします本研究は、岐阜大学医学部附属病院に入院した肝硬変患者を対象とした後ろ向き観察研究である。OHEの既往がない18~79歳の患者のうち、2004年3月~2023年12月にCHEの評価を受けた症例を解析対象とした。フレイルはCFSを用いて評価し、CFS5以上をフレイルと定義した。CHEは神経心理学的検査により診断し、OHEはWest Haven基準に基づく臨床評価で判定した。CHEとの関連因子はロジスティック回帰分析で検討した。さらに、死亡を競合リスクとして考慮したFine–Gray競合リスク回帰モデルを用いてOHE発症との関連を解析した。
解析対象は262例で、年齢中央値は65歳(四分位範囲55~74歳)、女性は154例(58.8%)だった。フレイルは25例(9.5%)、CHEは82例(31.3%)に認められた。CHEの有病率は、フレイルあり群でフレイルなし群より有意に高かった(84.0% vs 25.7%、P<0.001)。
追跡期間中央値2.8年の間に、40例(15.3%)がOHEを発症し、20例(7.6%)が死亡した。コホート全体でのOHE累積発症率は1年7%、3年13%、5年20%だった。OHEの発症率はフレイルあり群で高く、1年、3年、5年時点の累積発症率はそれぞれ25%、33%、36%で、フレイルなし群(5%、11%、18%)より有意に高かった(P=0.009)。
年齢や肝機能指標などを調整した多変量解析では、CFSがCHEの存在(オッズ比2.13、95%信頼区間1.41~3.37、P<0.001)およびOHE発症(サブディストリビューションハザード比1.38、95%信頼区間1.02~1.87、P=0.037)の独立した関連因子であることが示された。
本研究の結果から、肝硬変患者ではフレイルを有する場合、CHEの有病率とOHEの発症率が高く、CFSがそれらの独立した関連因子であることが示された。筆者らは、「フレイル評価は肝硬変患者における肝性脳症リスクの層別化に有用である可能性があり、臨床現場でのフレイル評価の重要性を示唆する」と述べている。
なお、本研究の限界として、単施設の後ろ向き研究である点や、対象患者の病因分布が一般集団と異なる可能性がある点が挙げられ、結果の一般化には注意が必要である。
軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。
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3月 23 2026 MASLD患者の心血管疾患入院、糖尿病合併で院内死亡リスク約2倍
代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者が心血管疾患(CVD)で入院した場合、糖尿病併存例では院内死亡や合併症のリスクが有意に高いことが、日本の大規模レジストリ研究で明らかになった。研究は、宮崎大学医学部内科学講座循環器・腎臓内科学分野の小牧聡一氏、松浦祐之介氏らによるもので、2月15日付の「Diabetic Medicine」に掲載された。
MASLDは、従来の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に代わる新たな疾患概念として提唱されており、世界で最も頻度の高い慢性肝疾患の一つとされる。CVDとの関連が強いことから心血管リスク評価の重要性が指摘されているが、診断基準を構成する各代謝因子が予後に及ぼす影響については、十分に明らかになっていなかった。糖尿病はMASLDにおける肝関連合併症との関連が知られる一方、CVDで入院したMASLD患者の院内転帰に及ぼす影響については不明な点が多かった。そこで研究グループは、日本全国の心血管入院データを用いて、MASLD患者における糖尿病と院内転帰(死亡・合併症)との関連を検討した。
【治験について相談したい方へ】
治験情報の探し方から参加検討まで、専門スタッフが一緒にサポートします本研究は、2012年4月から2023年3月までの全国規模の日本循環器疾患レジストリ(Japanese Registry of All Cardiac and Vascular Diseases–Diagnosis Procedure Combination:JROAD-DPC)のデータを用いた後ろ向き横断研究である。解析対象は、CVDで入院したMASLD患者10,614人。MASLDは、肝脂肪化に加え、少なくとも1つの心代謝リスク因子(高血圧、脂質異常症、糖尿病、関連薬剤の使用、またはBMI 23 kg/m²以上〔アジア人のBMI基準〕)を有する場合と定義した。主要評価項目は院内死亡、副次評価項目は主要な心血管系および非心血管系の院内合併症発生とした。統計解析では、糖尿病の有無による患者背景および転帰を比較したうえで、院内死亡との関連を検討するため多変量ロジスティック回帰解析を実施した。
対象患者の年齢中央値は66歳で、66.9%が男性だった。MASLD患者10,614人のうち、4,550人(42.9%)が糖尿病を合併していた。糖尿病非合併患者と比較して、糖尿病合併患者では虚血性心疾患(35.5% vs. 30.8%)、急性冠症候群(18.8% vs. 16.9%)、心不全(27.3% vs. 25.4%)の割合がいずれも有意に高かった(いずれもP<0.05)。
院内死亡率(5.6% vs. 3.3%、P<0.001)および全合併症発生率(23.6% vs. 19.7%、P<0.001)も糖尿病合併群で有意に高く、合併症発生率の差は主として心血管系イベント(16.8% vs. 10.5%、P<0.001)の増加によるものと考えられた。さらに心血管系イベントの内訳では、糖尿病合併例で入院後の心不全や急性冠症候群の発症が多く、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、体外式膜型人工肺(ECMO)、人工呼吸管理などの高度治療を要する割合も高かった。
多変量ロジスティック回帰解析の結果、糖尿病は院内死亡の独立した予測因子であることが確認された(オッズ比 1.99、95%信頼区間 1.60~2.47、P<0.001)。さらに、敗血症、大出血、がんも院内死亡の独立した規定因子であった。一方、脂質異常症や虚血性心疾患は死亡リスク低下と関連し、抗血小板薬、スタチン、ACE阻害薬/ARBの使用も死亡率低下と関連していた。
著者らは、CVDで入院したMASLD患者において、糖尿病合併が院内死亡率および合併症発生率の上昇と関連していたと結論づけた。そのうえで、「MASLDの心代謝リスク因子が予後に及ぼす影響を一律に捉えるのではなく、特に糖尿病の有無といった代謝表現型に基づいて層別化して評価することが、より精度の高いリスク評価や個別化医療の推進につながる可能性がある」としている。
なお、本研究の限界として、診断が病名コードに基づくため誤分類の可能性がある点、検査値や治療詳細が含まれていない点、残余交絡の可能性や因果関係を示せない点、非MASLD対照群がない点が挙げられている
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12月 11 2025 男性患者のED・LUTSに潜む肝線維化、FIB-4 indexによる包括的アセスメントの重要性
男性のEDや下部尿路症状(LUTS)は、前立腺やホルモンの問題として扱われることが多い。しかし、新たな研究で、肝臓の状態もこれらの症状に関係している可能性が示された。男性更年期障害(LOH)のある男性2,369人を対象に、肝線維化指標(FIB-4 index)を用いた解析を行ったところ、FIB-4 indexの上昇とEDおよびLUTSの悪化が有意に関連することが明らかになった。研究は順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科の上阪裕香氏、辻󠄀村晃氏らによるもので、詳細は10月31日付で「Investigative and Clinical Urology」に掲載された。
中高年男性におけるLOHや性機能障害は、代謝異常や動脈硬化と関連することが報告されている。一方、近年の食生活の乱れや飲酒により、男性の肝機能障害が増加しており、早期発見の重要性が高まっている。肝線維化を評価する非侵襲的指標としてFIB-4 indexが注目され、性機能やLUTSとの関連も示唆されているものの、大規模集団を対象とした包括的解析は限られている。こうした背景を踏まえ、本研究ではFIB-4 indexと性機能、LUTS、LOH指標との関係を明らかにするため、診療データを後ろ向きに解析した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。本研究では、2016年5月〜2024年3月に順天堂大学医学部附属浦安病院および関連クリニックを受診したLOH症状のある男性2,369名を後ろ向きに解析した。LUTS、性機能、LOHの評価には、国際前立腺症状スコア(IPSS)と生活の質指数、勃起機能問診票(SHIM)および勃起の硬度スケール(EHS)、男性更年期障害質問票(AMS)をそれぞれ用いた。内分泌・代謝指標としてDHEA-S、IGF-1、総テストステロン、コルチゾール、HbA1c、中性脂肪を測定し、FIB-4 index は五分位に層別化した。まずFIB-4 indexと各臨床指標との関連をトレンド解析で検討し、続いてFIB-4 indexと有意に関連した内分泌・代謝因子を調整因子として、症状スコアとの関連を多変量解析で評価した。有意であった症状スコアについては、その重症度とFIB-4 indexとの関係も追加で検討した。
患者の平均年齢は50.6歳であった。解析の結果、FIB-4 indexの五分位が上昇するにつれて、年齢や肝酵素値は高くなり、血小板数は低下する傾向が認められた(傾向検定、いずれもP<0.001)。症状スコアについても、FIB-4 indexの上昇に伴い、IPSSおよびAMSは上昇し、SHIMおよびEHSは低下することが示された(同 P<0.001)。
内分泌因子では、DHEA-SおよびIGF-1はFIB-4 indexの上昇に伴い低下し、コルチゾールは上昇した(同P<0.001)。興味深いことに、FIB-4 indexとテストステロン値との間には有意な関連は認められなかった(同P=0.091)。同様に、代謝指標では、FIB-4 indexの上昇に伴いHbA1cは増加した(同P<0.001)が、中性脂肪との関連は見られなかった(同P=0.181)。
さらに、症状スコアをDHEA-S、IGF-1、コルチゾール、HbA1cで補正した多変量回帰解析を実施した。その結果、FIB-4 Indexが上昇するにつれてSHIMスコアは低下し(同P<0.001)、重度のEDの場合(SHIMスコアが低い)ではFIB-4 indexも高値を示した(同P<0.001)。同様に、FIB-4 indexが上昇するほどIPSSは増加し(同P<0.001)、LUTSが重い場合(IPSSが高い)ではFIB-4 indexも高値であった(同P<0.001)。
著者らは、「本研究では、大規模コホートでEDやLUTSがFIB-4 Indexで評価される肝線維化と密接に関連することを示した。この結果は、症状を呈する男性の評価において潜在的肝線維化も考慮した多職種的アプローチの重要性を示唆している。今後は、縦断的なホルモン測定や画像・組織評価を組み込んだ前向き研究が求められる」と述べている。
なお、本研究の限界として、後ろ向き研究であるため生活習慣や併存疾患の影響を十分に評価できなかったこと、また前立腺容積や尿流測定などの客観的泌尿器評価や、ホルモンの縦断的測定も行われなかったことを挙げている。
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10月 27 2025 肝疾患患者の「フレイル」、独立した予後因子としての意義
慢性肝疾患(CLD)は、肝炎ウイルス感染や脂肪肝、アルコール性肝障害などが原因で肝機能が徐々に低下する疾患で、進行すると肝硬変や肝不全に至るリスクがある。今回、こうした患者におけるフレイルの臨床的意義を検討した日本の多機関共同後ろ向き観察研究で、フレイルが独立した予後不良因子であることが示された。研究は、岐阜大学医学部附属病院消化器内科の宇野女慎二氏、三輪貴生氏らによるもので、詳細は9月20日付けで「Hepatology Reseach」に掲載された。
CLDは進行すると予後不良となることが多く、非代償性肝硬変患者では5年生存率が約45%と報告されている。このため、将来的な疾患進行や合併症のリスクを減らすには、高リスク患者の早期特定が重要である。一方、最近の研究では、フレイルもCLD患者の予後に影響する独立因子であることが示されており、肝機能だけでなく身体全体の脆弱性を考慮した評価の重要性が指摘されている。Clinical Frailty Scale(CFS)は2005年に開発され、米国肝臓学会もCLD患者のフレイル同定に推奨する評価ツールであるが、これまで日本人CLD患者においてCFSを用いた評価は行われておらず、その臨床的意義は明らかでなかった。こうした背景から、著者らはCFSを用いて日本人CLD患者のフレイルの有病率、臨床的特徴、ならびに予後への影響を明らかにすることを目的とした。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。本研究では、2004年3月~2023年12月の間に岐阜大学医学部附属病院、中濃厚生病院、名古屋セントラル病院に入院した成人CLD患者とした。CFSスコアは、入院当日の情報に基づき、併存疾患、日常生活動作、転倒リスクに関する質問票を後ろ向きに評価し、スコアが5以上(CFS 5~9)の場合をフレイルと定義した。本研究の主要評価項目は全死亡とした。群間比較には、カテゴリ変数に対してはカイ二乗検定、連続変数に対してはマン・ホイットニーU検定を用いた。生存曲線はカプラン–マイヤー法で推定し、群間差はログランク検定で比較した。フレイルが死亡に与える予後影響はCox比例ハザードモデルで評価し、結果はハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)で示した。フレイルと関連する因子は多変量ロジスティック回帰モデルで解析した。
最終的に、本研究には715人のCLD患者(中央値年齢67歳、男性49.5%)が含まれた。最も多かった病因はウイルス性(38.7%)であり、続いてアルコール性(22.2%)、代謝機能障害関連(9.5%)であった。Child–Pugh分類およびModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアの中央値はそれぞれ7と9であり、CFSスコアの中央値は3であった。これらの患者のうち、フレイルは137人(19.2%)に認められた。フレイル患者のCFSスコア中央値は6であり、年齢が高く、BMIが低く、肝予備能も低い傾向にあった。
中央値2.9年の追跡期間中に221人(28.0%)が肝不全などで死亡した。フレイル患者は、非フレイル患者に比べて有意に生存期間が短かった(中央値生存期間:2.4年 vs. 10.6年、P<0.001)。多変量Cox比例ハザード解析の結果、フレイルはCLD患者における独立した予後不良因子であることが示された(HR:1.75、95%CI:1.25~2.45、P=0.001)。
また、フレイルの決定因子に関して、多変量ロジスティック回帰解析をおこなったところ、高齢、肝性脳症、低アルブミン血症、血小板減少、国際標準比(INR)の延長がフレイルと関連していることが示された。さらにフレイルの有病率はChild–Pugh分類の悪化とともに有意に増加し、Child–Pugh A群では4%、B群では22%、C群では55%の患者にフレイルが認められた。
著者らは、「本研究から、CLD患者ではフレイルが高頻度に認められ、独立した予後不良因子としての役割を持つことが示された。予後への影響を考慮すると、CLD患者ではフレイルを日常的に評価し、転帰改善を目的とした介入を検討することが望ましい」と述べている。
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